会社員が起業で成功する秘訣は「桃太郎のおばあさん」にあった! 新井一が語るチャンスの掴み方
キャンセル料はあとからではなく先に決まる
――新井さん、個人のお客様の仕事を受け始めた人から「直前にキャンセルされたら料金は請求できますか?」という相談がありました。半日空けて待っていたのに流れると、かなりつらいですよね。
新井:つらいですよ。ほかの依頼を断って空けた時間ですから、気持ちとしては「払ってほしい」と思って当然です。ただし、請求できるかどうかは感情では決まりません。事前に何を合意していたか、どこまで作業していたか、実際にどんな損害が出たかで変わります。キャンセル料は、取りやめの連絡が来てから決めるものではなく、依頼を受ける前に置いておくものなのです。
――何も決めていなかった場合は、もう請求できないのでしょうか?
新井:自動的に無料になるわけではありません。材料を買っていた、移動していた、作業の一部が終わっていたなら、説明できる範囲はあります。ただ、金額の根拠をあとから示すのはとても大変です。「相場ではこれくらいです」だけでは弱い。だから今回の一件を責め続けるより、次の受注メールを変えたほうが早いですね。
個人のお客様と会社の依頼では土台が違う
――相手が個人のお客様か、会社からの依頼かでも変わりますか?
新井:変わります。事業目的ではない個人のお客様が相手なら、消費者契約法第9条のように、平均的な損害を超える部分が問題になる考え方があります。高いキャンセル料を一方的に書けば通る、という話ではありません。
――会社や団体から業務委託で受ける場合はどうでしょう?
新井:会社相手なら、仕事内容、報酬額、支払期日、中途でやめる場合の扱いを先に確認します。条件によっては2024年11月1日に施行されたフリーランス法も関係します。法律名を覚えるより大事なのは、口約束だけで始めないことです。メールや申込フォームに、相手があとから読み返せる形で残してください。
最初に決めるのは料金より変更できる期限
――では、実際には何を書いておけばいいですか? いきなりキャンセル料の話をすると、角が立ちそうです。
新井:だから最初は金額より期限です。「前々日までのご連絡なら日程変更は無料です」と一行入れる。これなら相手も受け取りやすいですよね。自分の準備がいつ始まるかを考えて、その手前を無料変更の期限にします。
――期限を過ぎたら、必ず料金を取るべきですか?
新井:仕事の種類によります。材料費や交通費が出る仕事なら、実費はいただく。訪問枠を長く押さえる仕事なら、当日取りやめ時の扱いを決めておく。大切なのは、相手を罰することではなく、自分の時間を守ることです。決めておけば、お客様も早めに連絡しようとしてくれます。
前払いは失礼ではなく判断しやすくする工夫
――前払いをお願いすると、嫌がられないか心配する人も多そうです。
新井:その不安もよく分かります。でも、金額と時期がはっきりしているほうが、お客様は判断しやすいですよ。宿の予約や習い事の月謝も、先に払う形は普通にあります。ただ、初回から全額前払いだと重く感じる人もいます。材料費だけ先にいただく、前日までに振込をお願いする、当日払いでも前日に確認メールを入れる。段階はいくつもあります。
――起業準備中の会社員なら、そこまで整えるのは早い気もします。
新井:むしろ会社員のまま小さく受けている時期ほど必要です。土日の半日が消えると、本業にも疲れが残りますから。起業準備は勢いだけでなく、続けられる形を作る期間です。受ける前の一行は、そのための小さな仕組みですね。
次の返信に添える一行を用意しておく
――すでに直前キャンセルを経験した人は、まず何から直せばいいでしょう?
新井:次の返信文を作ってください。「ご依頼ありがとうございます。前々日までのご連絡でしたら無料で日程変更できます。前日以降の取りやめは、準備済みの実費をご負担いただく場合があります」。このくらいで十分です。もっと厳密にするなら、業種に合わせて専門家に見てもらえばいい。
――いま起きたキャンセルについては、どう向き合えばいいですか?
新井:事実を整理して、相手に伝えるなら淡々と伝えることです。ただ、合意が薄いまま強く請求して関係を壊すより、次に同じことが起きない設計へ切り替えたほうが得るものは大きいですよ。起業は、こういう小さな痛みを仕組みに変えた人から強くなります。
――料金を取るかどうかだけでなく、仕事の受け方そのものを決める話なのですね。ありがとうございました。
新井:はい。次の一件からで大丈夫です。受ける返信に一行足すだけで、自分の時間の扱い方はかなり変わりますよ。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
→ 新井一のセミナー日程一覧


