スマホだけの起業準備を卒業するパソコンとWi-Fiの整え方
退職後でも教育訓練給付金は候補に残る
――新井さん、教育訓練給付金は在職中だけの制度だと思っている人が多いようです。退職してから起業準備に入った場合でも使えるのでしょうか?
新井:条件を満たせば、退職後でも使える可能性はあります。大きな目安は、離職日の翌日から1年以内に対象講座の受講を始めることです。ここを誤解して「もう会社を辞めたから無理」と思い込むのはもったいないですね。ただし、誰でも自動的にもらえる制度ではありません。雇用保険の加入期間、受給歴、講座が対象かどうか、手続きの期限をハローワークで確認してから動くのが先です。
――「離職後1年以内」というのは、申請の期限ではなく受講開始の目安なのですね。
新井:そうです。ここを混同しやすい。離職日の翌日から1年以内に受講開始できるか、対象講座なのか、受講前に確認が必要な手続きがあるか。この順番で見ます。妊娠、出産、育児、病気などで受講が難しい場合は期間延長の制度もありますが、「起業準備で忙しかった」は原則として理由になりません。だから、退職してから慌てるより、辞める前後で制度だけは先に調べておくほうがいいですよ。
3種類の給付率を数字だけで選ばない
――教育訓練給付金には種類があると聞きます。起業準備では、どこを見ればよいのでしょう?
新井:一般教育訓練、特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の3種類があります。一般は受講費用の20%、特定一般は基本40%で条件を満たすと最大50%まで上がる場合があります、専門実践は基本が50%で、条件を満たすと70%や80%まで上がる場合があります。数字だけ見ると専門実践に目が行きますよね。でも、給付率が高い講座が、あなたの起業に一番近い講座とは限りません。
――戻る金額が大きいほど得、とは限らないのですね。
新井:そう。資格取得や就職要件、賃金上昇などが絡むものもありますから、「起業したから追加給付が自動的につく」と考えるのは危ないです。大事なのは、学んだあとに自分の商品づくりや受注にどうつながるか。経理、Web、介護、語学、ITなど、対象講座の中に自分の準備と相性のよいものがあるかを見ます。制度のために講座を選ぶのではなく、起業準備に必要な学びが制度対象なら使う。この順番ですね。
退職金で講座を積む前に対象講座を確認する
――退職金や貯金があると、「今のうちに勉強しておこう」と講座を増やしたくなる人もいそうです。
新井:ありますね。ここが落とし穴です。退職直後は時間も少しできるので、「まず学ぼう」となりやすい。でも、給付対象外の民間セミナーをいくつも受けてから、あとで対象講座を知る人もいます。もちろん民間講座が悪いわけではありません。ただ、先に制度を調べていれば、同じ学習費でも戻せたかもしれない。これはかなり大きいですよ。
――講座選びの前に確認するだけで、選択肢が変わるわけですね。
新井:はい。たとえば経理の基礎を身につけたいなら、対象講座の有無を先に探す。受給資格があるかをハローワークで確認する。そのうえで、必要なら1本だけ申し込む。起業準備では、学習費を無限に増やすより、学んだことを小さく試す時間を残すほうが大切です。退職金を講座代で削りすぎると、肝心の商品づくりや検証の余力がなくなります。
勉強だけで終わる起業準備にしない
――給付制度を使えたとしても、勉強で止まってしまうのは避けたいですね。
新井:まさにそこです。僕は「勉強は大事、でも勉強だけでは売上にならない」とよく言います。講座を受ける目的は、資格欄を増やすことではなく、お客さんに役立つ形へ変えることです。講座を申し込む前に、「この学びを使って誰のどんな困りごとを解決するのか」を1行で書いてみてください。それが書けないなら、もう少し先に市場確認をしたほうがいいかもしれません。
――市場確認というのは、いきなり営業することですか?
新井:いきなり売り込む必要はありません。過去の仕事で助けられる相手を整理する、公開情報だけで業界の困りごとを調べる、知人に困っていることを聞く。こういう小さな確認からで十分です。講座を受けながらでもできますよ。学びを受注活動と切り離さず、「学ぶ」「試す」「反応を見る」をセットにする。ここが、給付金を起業準備に活かせる人と、ただの勉強で終わる人の違いです。
確認先を間違えず、申込前に動く
――最後に、これから退職後の起業準備で教育訓練給付金を使いたい人へ、最初の手順を教えてください。
新井:まず、受けたい講座が対象かを調べる。次に、自分の雇用保険の加入期間や過去の受給歴で対象になりそうかを確認する。そして、申込前にハローワークへ聞く。この順番です。会社の担当者や講座の営業担当だけで判断しないこと。特定一般や専門実践では、受講前の確認が必要なものもありますから、先に申し込んでしまうと手続きが間に合わないことがあります。
――制度を使うかどうか以前に、確認の順番が大事なのですね。
新井:そうです。退職後の1年は、ぼんやりするとすぐ過ぎます。でも、制度を先に押さえておけば、その1年は「勉強だけで終わる期間」ではなく、自分の商品を作って試す期間に変えられます。教育訓練給付金は魔法の資金ではありません。ただ、起業準備の学びを現実的に支える道具にはなります。使えるものは使いながら、最後はお客さんに届く形へ動かしていきましょう。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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