起業アイデアはあるがお金がない、技術がないケースの解決方法
海外では成功し一般的になっているけれど、日本にはまだないというビジネスもあります。起業を目指す人の中には、海外の成功事例を自分のビジネスに取り入れたい、応用したいと考えている人も多いのではないでしょうか。
海外のアイデアをもとに起業して成功した事例にはどのようケースがあるのか、また、どのようにアイデアを調べれば起業に結び付けやすいのかについて解説します。
海外でのアイデアをもとにした起業
海外ではやっているものが、後から日本に入ってくることは珍しくありません。海外でヒットしたものであれば日本でもヒットする可能性がありますし、海外の事例を参考にするなら、自分で1から新しいアイデアを考える必要はないので簡単といえば簡単です。また、海外の流行を知ることで、日本での今後の流れも予想できます。
アメリカのベンチャーキャピタリストによって作られた、ユニコーン企業という言葉があります。ユニコーン企業とは、未上場かつ10億ドル以上の価値を持つスタートアップ企業で、多くの投資家から注目されています。新しいサービスの多くがユニコーン企業から生み出されていることを考えると、ユニコーン企業の動向は常に注意を払う必要があります。
さて、このユニコーン企業は世界にどれだけあるかを調べると、なんと半数はアメリカの企業。残りの4分の1が中国で、イギリス、インド、ドイツと続きます。日本のユニコーン企業は残念ながら非常に少数です。日本は世界でトレンドになっているサービスが遅れて入ってくることが多々あります。その点からも、アメリカや中国のユニコーン企業のサービスは押さえておきたいものです。
海外のサービスには、ビジネスのヒントになりそうなアイデアがたくさんあります。実際、海外の事例を日本で取り入れて成功した例は少なくありません。成功するかわからないアイデアをゼロから生み出すよりも、すでに、ある地域で成功した事例を応用するほうが簡単ですし、成功する確率が上がります。
また、海外のアイデアを日本で取り入れて起業する場合、すでに海外でビジネスモデルとして成立しています。ですから、資金調達や創業メンバーを探す際も、「海外で、同じようなモデルで事業をしている企業ではこれくらいの収益を出せています」と具体的な説明ができます。
それ以外にも、海外の成功事例を目指して事業を進めていけばいいので、迷いにくいのもメリットです。参考にできるお手本があるのとないのとでは、困難の度合いが格段に違うのです。
ただし、海外の事例を参考にして起業すれば必ず成功できるかというと、必ずしもそうではありません。海外で成功したアイデアが日本では受け入れられない場合もあるからです。
海外で成功したビジネスが日本では成功しない場合
日本人の多くは神社やお寺にお参りするなど、宗教に対して寛容であると言われており、シャイで用心深く、欧米人ほど社交的ではないとも言われています。また、アメリカほど、多くの人種が暮らす国でもありません。
そうすると、アメリカでは受け入れられた宗教や人種、外見でマッチングするサービスは日本には向かないということになります。初対面の人がたくさん集まって何かをしたり、見知らぬ2人が気軽に会ったりするサービスも受け入れられにくいでしょう。
マッチングアプリサービスを例に出すと、海外では大ヒットしているマッチングサービス「match.com(マッチ・ドットコム)」(人種や宗教で相手をソートできる)や「Tinder(ティンダー)」(位置情報を使い近い距離にいる人を表示するため、お互いが気に入ればすぐにデートできる)は、日本ではあまり浸透していません。
逆に、じっくり相手を探して交流してから会えるイメージの「Pears(ペア―ズ)」、結婚を前提に真剣に相手を探せるイメージの「Omiai(おみあい)」が人気です。
また、日本はいたるところにコンビニエンスストアがあり、欲しいものは近所ですぐに買えます。宅配業者のネットワークも充実しており、ほぼ翌日には指定した時間に頼んだものを届けてくれるので、コンビニにはないものでも、ネット通販で買えばすぐに手元に届きます。
「欲しいものは近所ですぐ買える。外出しなくても指定した日時に自宅に届けてもらえる」という日本の特徴は、海外にはないものです。
最近ではAmazonや楽天などのECモールだけでなく、スーパーマーケットも独自の宅配サービスを展開しています。さらに、日本にはそば屋やすし屋の出前といった「電話1本で自宅まで、店と同じ料金で配達してもらえるサービス」が昔からありました。
そういった社会的な背景を考えると、海外では人気の買い物代行は、日本では受け入れてもらいにくい(必要とされない)ことが想像できます。
海外の事例をそのまま日本に取り入れるのではなく、それが日本の風土や国民性に合っているのか、日本人が求めているサービスなのかをじっくり考えなければ、せっかく起業してもあっというまに立ち行かなくなる恐れがあります。
海外のビジネスモデルを国内で展開した事例
実際に、海外のビジネスモデルを日本国内で展開して成功した事例にはどのようなものがあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
◆セブンイレブン
海外で成功したビジネス事例を日本で取り入れた例の代表格は、なんと言ってもセブンイレブンでしょう。
アメリカのテキサス州にある小さな町の氷小売店がセブンイレブンの原型です。その氷小売店は、まだ電気冷蔵庫が珍しいものだった1927年に、生活必需品だった冷蔵庫用の氷がいつでも買えるよう毎日16時間営業していて、町の人々からとても喜ばれていました。
そのうち、利用者から「氷だけじゃなく食品やミルクもあると便利だ」という声が届き、取り扱う品物を増やします。そして1946年に、朝7時から夜11時まで営業するチェーン店「7-ELEVEN」に店名を変更しました。
1973年に、鈴木敏文さん(セブンイレブン会長)は、当時流行していたショッピングセンターではなく、地域と共存できる小型店舗でビジネスをすることを目標として、アメリカのセブンイレブンと提携。アメリカのセブンイレブンが持つコンビニ運営のノウハウを参考にして日本でセブンイレブンを設立しました。アメリカで成功した例を日本に持ち込んでうまくいった有名な事例です。
◆ロコンド
靴は履いてみないとサイズ感や歩きやすさがわからないため、実店舗で試してから買うという人が多いでしょう。
ロコンドは靴と服の通販サービスで、サイズ交換および返品が無料でできるというサービスを掲げています。ロコンドはアメリカの靴の通販会社ザッポスを参考にしており、ロコンドの「送料と返品が無料」「何回でも返品できる」というのは、まさにザッポスのサービスそのものです。それだけでなく、24時間対応している、頼んだ次の日に配送されるなど、それまでの靴通販の常識を変えるサービスを提供しています。
田中裕輔さん(ロコンド代表取締役)はロコンドの代表取締役に就任する前、UCバークレー(カリフォルニア大学バークレー校)に留学していました。その当時、ザッポスのCEO、トニー・シェイの話を聞いて感銘を受けます。
「送料も返品も無料なら、気軽に家でお試しができる。さらに、ネット通販なら欲しい色やサイズがないという制限もない」という点に、靴こそ通販が向いているのでは、と思い立ち、ザッポスのビジネスモデルを日本でやってみようと考えたのです。
田中さんが代表に就任する前のロコンドも日本で靴の通販をしていましたが、経営元はドイツの投資会社でした。しかし赤字が続くため、ドイツの投資会社が撤退しようとしていた時に、田中さんが代表に就任。
ザッポスのアイデアを元に、さまざまな方法で会社を立て直していきます。ロコンドは靴をメインに扱う会社ですが、他社に負けないようにと、ロコンドが持っている販売システムや物流をサービスとして提供するという取り組みも行っています。
◆mixi(ミクシィ)
2000年代初頭、日本で「mixi」が爆発的にヒットしました。日本におけるソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の先駆けともいえるmixiは、サービス開始からわずか2年半で500万人を超える会員を獲得し、上場します。
当時、何か新しいビジネスを始めたいと考えてアイデアを出し合っている中で、バタラ・ケスマさん(旧名。現在は衛藤バタラさん。元ミクシィ取締役兼最高技術責任者)が、海外で流行しているSNSを日本でもやってみようと提案。アメリカのSNSを実際に使ってみた笠原健治さん(ミクシィ会長)は、「インターネットの中で人とつながることが面白い、どうしてもこれをやりたい」とメンバーを説得します。
しかし、インターネットを活用した新しいサービスをやりたいとは思っていても、SNSには否定的な人が多く、説明してもイメージしてもらいにくかったと、後に笠原さんは語っています。
mixiはアメリカで人気があったFriendsterをはじめとしたサービスをベンチマーク(指標・基準)にしながら、他社のサービスにはない「コミュニケーションが取れる機能」や「情報交換できる機能」として、日記やコミュニティー、足あと機能を実装。「より使いやすく楽しいサービス」の大枠を作ります。さらに招待制にすることで、新規ユーザーも寂しい思いをせずに輪の中に入れるという仕組みを敷き大ヒット。一大ブームを巻き起こしました。
大手企業の例を中心に紹介しましたが、コロナ禍となった現在では、外出せず自宅で受けられるサービスに需要が高まっています。実店舗や巨大なオフィスが不要なオンラインビジネスなら、個人が自宅で比較的簡単に起業できますし、需要があることは多くの人が感じているでしょう。
海外でもオンラインサービスの需要が高まっており、オンライン結婚式やオンライン研修、オンライン手続きなどが一般的になりつつあります。例えば海外ではWedfulyというオンライン結婚式サービスがあり、日本でもいくつかの企業がオンライン結婚式のサービスを提供し始めています。
実際に、ウエディング事業を主力とする冒険社プラコレが20~30代の女性に向けて行った調査では、13%が「オンライン結婚式はアリ」、1%が「オンライン結婚式に参加したことがある」と答えています。
まだまだ受け入れる土壌が整っているとは言いがたいけれど、冠婚葬祭でも人が集まりにくい現在の状況では、その方法を選ばざるを得ない場面もあるはずです。社会情勢やシステムの変化を考慮しながら海外で起業して成功した事例を探すと、新たな発見やひらめきがあるかもしれません。また、海外ではオンラインになっているけれど、日本ではまだオンライン化されていないもののまだまだありそうです。
海外ビジネスアイデアの探し方
海外のアイデアを元に起業をしたくても、そのアイデアをどうやって探せばいいのかわからない人も多いでしょう。起業に役立つ海外のアイデアが探せるウェブメディアやメルマガをご紹介します。
◆日本のサイト
<TechCrunch Japan>
TechCrunch(テッククランチ)はシリコンバレーでスタートしたメディアで、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しい商品の紹介、ニュースを紹介しています。カバーしている地域は、アメリカ、ヨーロッパ、アジアのテクノロジー業界です。
日本では2006年より翻訳版がスタート。現在では、日本編集部が作成した国内スタートアップのオリジナル記事も配信されています。
https://jp.techcrunch.com/
<Techable>
Techable(テッカブル)は国内外のスタートアップやネットベンチャーの新サービスを中心に紹介するニュースサイトです。パソコンやガジェット系など、若い世代の男性が興味を持ちそうなIT系の記事が中心に掲載されています。
https://techable.jp/
<THE BRIDGE>
起業家と投資家をつなぐというコンセプトのメディア・THE BRIDGE(ザブリッジ)では、スタートアップやテクノロジー関連のニュースを発信しています。地域で見ると中国・東南アジアの記事が多く、インタビュー記事が豊富で読み応えがあります。
https://thebridge.jp/
<SUNRYSE.MAG>
SUNRYSE.MAG(サンライズマグ)は、海外のスタートアップ事例と最新トレンド情報を有し、インサイト(消費者の購買意欲のポイントなど)をコラム形式で配信するメディアです。
日本語の情報が少ない海外の事例の中でも、技術やビジネスモデルに強みのあるスタートアップをコラム形式で厳選して紹介しています。
また、SUNRYSEというデータベースも運営しており、こちらでは毎月200社以上を紹介しています。世界各地のスタートアップコミュニティーと連携し、各地のトレンドをいち早くキャッチしている点にも注目です。
https://www.sunryse.co/mag
◆海外のサイト
こちらは英語のサイトとなります。
<Product Hunt>
新規サービスや新商品が毎日紹介されています。投票とコメント機能があるので、人々がどのようなサービスや情報に興味を示しているのかがひと目で確認できます。英語がわからなくても見やすいのがポイントです。
https://www.producthunt.com/
<Beta List>
インターネット関連のサービスや商品を紹介するメディアで、Product Huntと同じようにユーザーの反応を見ることができます。「REGIONS」からアフリカ、アジアなどの地域別、さらに国別の情報をセレクトすることも可能です。
https://betalist.com/
◆メルマガ
<Launch Ticker>
投資家のジェイソン・カラカニスが運営するニュースメルマガが「Launch Ticker」です。配信は1日2回。編集部がまとめたアメリカのスタートアップ記事が届き、1通に10~15の記事が紹介されています。
1つのトピックスを短文で紹介しているので、さらっと読めるのがポイント。このメルマガを読めば、スタートアップのヘッドラインはだいたい抑えられると言われている、おすすめのメルマガです。
https://www.launchticker.com/
<FORTUNE Term Sheet>
経済メディア「FORTUNE」による、スタートアップに特化したメルマガがFORTUNE Term Sheetです。
Launch Tickerが短文で簡単にニュースをまとめているのに対し、こちらは詳細なレポート形式でニュースが紹介されています。
https://fortune.com/tag/term-sheet/
まとめ
海外で成功したアイデア・事例をもとに起業すれば、アイデアを一から考える必要がありません。さらに、成功したビジネスモデルがあるので、資金調達や人材確保の際に説明しやすく、理解してもらいやすいというメリットがあります。
また、明確なお手本があるため、あらゆるタイミングで「あの企業はどうしていただろうか」と参考にすることができ、間違った選択をするリスクを最小限に抑えることも可能です。
ただし、海外で成功した事例なら必ず日本でも成功するかというと、必ずしもそうではないことを忘れてはいけません。日本では必要とされないサービスやすでに行き届いているサービスは意味がありません。また、日本の風土や日本人の国民性に合わなければ残念な結果になる場合もあります。
失敗しないためにも、そのサービスが日本で受け入れられるのか、日本人も必要としているのかをよく考え、冷静に判断する必要があります。
また、海外の事例をもとに起業したい場合、二番煎じにならないよう、素早く情報を入手してスタートさせることも大切です。そのためには海外のトレンドやスタートアップ事例をこまめにチェックし、広くアンテナを張る必要があります。
まずは、海外のスタートアップのニュースを毎日読むことを習慣づけてはいかがでしょうか。
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