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新井一(あらいはじめ) / 起業コンサルタント

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コラム

起業アイデアはあるがお金がない、技術がないケースの解決方法

2021年4月7日 公開 / 2021年11月20日更新

テーマ:起業

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 働き方改革副業 おすすめキャリアコンサルティング

起業アイデアはあるがお金がなかったり、技術や知識がなかったり、といった理由で起業をあきらめてはいませんか?起業に際して、大きな不安として挙げられるのは、「お金」「リスク」「知識や技術」の3つと考えられます。お金については、公的融資制度やクラウドファンディングの活用によって、起業に必要な資金を準備することができます。起業にあたって浮上する各問題の解決方法について解説します。



起業にあたっての問題


はじめに日本政策金融公庫総合研究所のデータを見てみましょう(「起業と起業意識に関する調査」2019年)。

起業に関心はあるものの、まだ起業していない人にその理由を尋ねたところ、最も多かった答えは「自己資金が不足している」で全体の50.8%、次に多いのが「失敗したときのリスクが大きい」で、こちらは全体の41.1%となっています。

また、知識や技術面の不足をあげる人も多く、「財務・税務・法務など事業の運営に関する知識・ノウハウが不足している」22.5%。「仕入・流通・宣伝など商品等の供給に関する知識・ノウハウが不足している」18.2%。「製品・商品・サービスに関する知識や技術が不足している」17.6%となっています。

つまり、起業に際しての大きな問題は「お金」「リスク」「知識や技術」の3つということです。この問題への解決方法をあらかじめ示すと次のようになります。

・その起業アイデアが今の自分に実現可能なのかどうかを知る
・実現不可能なら可能なものに変える
・小さなビジネスを成功させて、資金、知識経験、人(ネットワーク)をレベルアップさせる

これらをふまえながら、まず、「お金」について考えていきましょう。

お金の問題1「今の自分に実現可能なのかどうかを知る」


前述の「起業と起業意識に関する調査」では、約5割の人が、起業をためらう要因に自己資金の不足をあげています。

では、いくら不足しているのでしょう。100万円なのでしょうか。あるいは200万円。それとも1000万円、2000万円という金額なのでしょうか。

調査結果からこのあたりは見えてきませんが、例えば「なんとなく300万円はかかりそう。でも300万円を出す余裕はない」ということで「自己資金が不足している」という回答になっているケースも少なくないかもしれません。

これから始めようとするビジネスに、どのくらいのお金が必要になるか、思いつく限りの費用を洗い出してみましょう。

例えば衣料品の仕入れ販売を始めたいという場合、その仕入れ代金がかかりますし、広告宣伝のための費用も発生します。あるいは自分のアパレルブランドを立ち上げたいというのであれば、仕入れ代金ではなく商品の製造原価が発生します。

一度にすべての費用項目を上げる必要はありません。思いつくたびに追加していき、まず自分が始めたいビジネスにかかる費用を予算化してみましょう。そして、そのうえで「今の自分に実現可能なのかどうか」を明確にしていきましょう。

お金の問題2「実現不可能なら可能なものに変える」


では、衣料品の仕入れ販売を考えたとして「それには店舗が必要だし、内装もそれなりにしなければならない。その他、いろいろ合わせると3000万円は必要。資金不足で今の自分には実現不可能」となった場合、どうすればいいでしょう。

そこで考えたいのが「実現不可能なら可能なものに変える」ということです。

この例でいえば、実店舗ではなくネットショップであれば、費用の大半を占めると考えられる店舗賃料、敷金・礼金、内装費などは必要ありません。費用を洗い出すことで、不可能を可能にすることもできます。

ビジネスモデルには、衣料品の仕入れ販売や商品の製造販売のように物品(モノ)が中心になるプロダクト系のほか、コンサルタントや情報提供などのノウハウ系、家の掃除、通訳、料理といったスキル・サービス系、また、コミュニティーや出会いの場を提供するスペース・チャンス系があります。

ここでありがちなのが「起業=事務所(オフィス)」という発想です。会社勤務の経験が長い人ほどこの発想が多いようですが、「起業」とイコールで結ばれるのは「ビジネス」であって、「事務所(オフィス)」ではありません。ビジネスは自宅でも始めることができます。

お金の問題3「公的な融資制度」


別の角度から「お金」の問題を見てみましょう。

はじめにご紹介した日本政策金融公庫は「国民生活事業」として、起業・創業を支援するための融資を行っています。こうした公的な融資制度を利用するのも、起業に際しての資金調達の一つの方法です。

例えば、日本政策金融公庫には「新創業融資制度」があります。新たに事業を始める人、初めて間もない人を対象にした制度で、要件を満たせば無担保・無保証で利用できます。融資の最高額は3000万円(うち運転資金1500万円)です。

ただ、創業に必要な資金のうち10分の1は自己資金で賄う必要があります。例えば、1000万円の融資を受ける場合、自己資金100万円が必要ということです。

また、「女性、若者/シニア起業家支援資金」という制度もあります。これまで、創業融資の申請は35歳~54歳の男性が多く、女性や若者、シニア層が少ないということから設けられた制度です。

そのため、この制度の対象となるのは「①女性(年齢制限なし)」「②35歳未満の若者」「③55歳以上のシニア」となっています。融資限度額は7200万円まで(うち運転資金4800万円)となっています。

こうした起業支援制度は各自治体にもあります。自分の起業アイデアに合ったものであれば検討してみるのもよいでしょう。

ただ、公的な融資には綿密な事業計画が求められますし、融資されたお金は返さなければなりません。金利が低いとはいえ、利息もかかります。

お金の問題4「クラウドファンディング」

資金作りの方法としては、クラウドファンディングもあります。英語のCrowd(群衆)とFunding(資金調達)をあわせた造語です。

自分の起業アイデア、そのアイデアの実現に必要なお金(目標金額)をクラウドファンディングサイトに提示し、不特定多数の人から資金を集めるという仕組みです。すでに市場規模は2000億円を超え、今後もますます一般化すると予測されています。

ただ、各クラウドファンディングサイトで多くの起業アイデアが「成約=目標金額達成」となっていますが、起業アイデアを提示すれば資金が集まるものではありません。

その起業アイデアに特徴があり、しかも魅力的であること、サイトにおけるアピール方法も十分に考えられた案件が成約となっています。


知識や技術がない場合はのやりながら補う


起業

次に「知識や技術」の不足について見てみましょう。

具体的には「財務・税務・法務」「仕入・流通・宣伝」「製品・商品・サービス」に関する知識や技術の不足です。

これらは本やセミナー、あるいはネットからでも一般的なレベルであれば、ある程度は学ぶことができます。機会を作って勉強しておく必要はあるでしょう。

しかし、ビジネスにおける上記3つの分野に関する知識や技術は、実際にやってみないと本当のところはわかりません。起業前にこうした面をカバーしてくれる人的ネットワークを作る、あるいは起業後、税理士などをはじめ専門家に依頼するという方法も考えられます。

しかし、そうした人が持つノウハウがいかにビジネスに必要かということも、実際にやってみて、より明確になるものなのです。

例えば、商品の仕入れ販売を始めたとします。小売業のビジネスの教科書には必ず「在庫管理」という言葉が出てきます。
商品を大量に仕入れても売れなければ在庫を抱えることになり、その反面、売れる時に在庫がなければビジネスチャンスを逃してしまう、というようなことが含まれます。そこで重要になるのが「売れ行きを予測しつつ在庫数コントロールする」ということです。

このロジックは、小売業の経験がなくとも本を読むだけで理解できるでしょう。しかし、実際にやれるかとなると、そうたやすくはありません。

「売れ行きを予測しつつ在庫数コントロールする」ための知識や技術は、ビジネスをやりながら習得するほかないとも言えるのです。これは他のビジネスモデルについても同様です。

ビジネスに必要な知識や技術は、ビジネスを通して身につけるのが一番確実であり、理解も深いのです。


小さなビジネスを成功させていく


起業

起業にあたっての「資金」や「知識・技術」について見てきましたが、大切なことは自分にとって実現可能なサイズでビジネスを始めるということです。そして、小さなビジネスを成功させていき、その過程で資金、知識経験、人(ネットワーク)をレベルアップさせていきましょう。

ちなみに日本政策金融公庫総合研究所の「2020年度新規開業実態調査」を見ると、全体的な傾向として開業費用は少額化の傾向にあり、開業費用「500万円未満」の割合が全体の43.7%を占め、開業費用の平均値は1055万円となっています。

また、資金の調達先は「金融機関等からの借入」が平均825万円(平均調達額に占める割合は69.1%)、「自己資金」は平均266万円(同22.2%)となっています。

なお、このデータは、日本政策金融公庫が「2019年4月から同年9月にかけて融資した企業のうち、融資時点で開業後1年以内の企業(不動産賃貸業を除く)」を対象にしたものであり、経営形態は個人企業61.6%、法人企業38.4%(開業時)です。


失敗したときのリスクが大きい


起業

ところで、起業の阻害要因には「自己資金」「知識や技術」のほかに「失敗したときのリスクが大きい」がありました。この「リスク」について考えてみましょう。

中小企業白書によれば、個人事業主の廃業率は1年で37.7%、3年で62.4%、10年後は88.4%となっています。つまり、起業しても10年後に生き残るのは1割程度、約9割の人が廃業に追い込まれるということです。

この数字を見ると確かに「失敗したときのリスク」を考えざるを得ません。

しかし、この「失敗したときのリスク」は、これまでお話ししてきた「その起業アイデアが今の自分に実現可能なのかどうかを知る」「実現不可能なら可能なものに変える」、そして「小さなビジネスを成功させて、資金、知識経験、人(ネットワーク)をレベルアップさせる」この3つによって大幅に低減することができます。

例えばお金の問題をとっても、金融機関からお金を借りて起業するより、自分が出せる範囲のお金で起業するほうが失敗したときのリスクは小さくなります。そして、その範囲でコツコツとビジネスを続けることで、ビジネスに必要な「知識や技術」を身につけていくことができます。

また、ビジネス上の経験を積むことは信用力につながりますから、人的ネットワークのレベルアップにもよい影響を与えます。

現在、会社に勤めながら副業として起業する人が多くなっています。会社勤めをしながら起業し、与えられた仕事ではなく自分の裁量で行うビジネスの経験を積み、その上で独立するという方法は起業にあたって賢明な方法といえるでしょう。自己資金も会社勤めをしながら増やしていくこともできます。


起業家マインドとは


起業

最後に、起業には起業家マインドが必要です。起業家マインドの定義の根底にあるのは「リスクを取る」ということです。起業家にとってリスクは低減させるものであり、回避するものであり、あるいは移転させるものです。

「失敗したときのリスクが大きい」ということで起業をためらう人の多くは、リスクゼロの起業を考えているのかもしれません。しかし、ビジネスはそれほど甘くはありません。あらゆるビジネスは、リスクを取って始まるのです。

日本語には「腹をくくる」という言葉があります。起業は腹をくくらなければできません。しかし、「腹をくくる」と「無謀」は違います。起業に際して「腹をくくる」とは、アイデアを練り、計画し、準備し、始めるということです。起業家マインドはリスクを取ることで育まれます。


まとめ


起業

起業アイデアはあるけれどもそれを実現するお金がない、知識や技術がないという問題に対する考え方、そして解決方法をお伝えしてきました。

これは起業を志す人の誰もがぶつかる問題です。まず、自身の起業アイデアが今の自分に実現可能なのかどうかを知ることから始めましょう。そして、もし不可能であると判断したのであれば、実現可能なものに変えましょう。

その上で小さなビジネスを成功させ、経験を積むことで資金、知識経験、人(ネットワーク)をレベルアップさせていくことが大切です。

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