「狭い都心マンション」 と 「広い郊外マンション」 どっちが得?
15年前に郊外に3500万円で購入した一戸建は、今、いくらで売れるのか?
先日、数年前に配偶者がお亡くなりになり現在独り暮らしをしている64歳の一戸建所有のお客様から相談を受けました。
最近、足を骨折され、階段の上り下りが出来なくなったことから、ふと、『もし、今回のケガが治っても、年をとって将来、足が不自由になったとしたら...』と不安になりましたとのことで、まだ元気な今のうちに売却して、管理が楽でもう少し買物・通院などの生活が便利なエリアのバリアフリーマンションに買い換えたいという相談を受けました。一戸建は年をとると掃除や庭の手入れが大変で、メンテナンス費用も結構かかるし、すっかり冷え性になった自分には冬が寒いから、暖かいマンションに引っ越したいと言います。
その方は地元の不動産会社に自宅がいくらで売れるのかを査定してもらったところ、査定価格が想像以上に低くて愕然とされたとのことで、本当にそんなものなのかを知りたいとのことでした。
その方の所有している物件は、埼玉県のある駅から徒歩24分(バス便)の場所で、今から15年前に建物約100㎡の新築一戸建(土地約30坪)を3,500万円で購入し、未だローンが15年残っているとのことでした。
購入時は頭金200万円と諸費用分240万円の合わせて440万円を自己資金でまかない、残りの3,300万円は住宅ローンを利用、月々の返済は121,975円とのことでした。
ところが、現在、売却想定額を査定してみますと、売れる金額は1,600万円くらいでした。
住宅ローンの残債はまだ1,886万円あり売却価格をオーバーしています。
また、貸す場合はいくらで貸せるのか?を査定してみたところ、理論上は10万円くらいなのですが、周辺の比較物件(事例)が極めて少なく(と言うよりほぼ無い状況ですので)正確には算出しづらいため、複数の地元不動産業者にヒアリングしてみましたところ、査定物件は駅から遠く、スーパーなどがどんどん撤退しているので、買物が不便で、そもそも現在は借り手がつくかどうかはわからないといった状況でした。あえて賃料を想定するのであれば90,000円くらいではないでしょうか?とのことでした。
毎月出ていく住宅ローンの支払いが月121,975円なのに、入ってくる家賃が90,000円では完全に赤字です。
その他にも固定資産税等の支払いもありますし、貸し出すとするとクロスを取り替えたり不具合を直したりハウスクリーニングをしなければいけませんので費用がかかります。これでは買い換えることも貸すこともできず、住み続けるしかないと落ち込み、『階段が上がれなくなったらどうしよう、もし15年前に戻れるのであれば戻りたい、そして購入なんか絶対せずに賃貸にすればよかった』と言います。
では、15年前、都心に3500万円で購入したマンションの資産価値は今どうなのか?
一方で、数日も経たないうちに、15年前に山手線のある駅から徒歩3分の所に、東南向きではあるのですがバルコニーの前に建物が建っているために陽当たりがあまり良くない60㎡・3階部分住戸のマンションを3,500万円で購入した方からもやはり『子どもが増えて大きくなり手狭になったので、売却したい』という相談を受けました。
その方は、手取り3,300万円は欲しいので、売却にかかる手数料などの費用は乗せて売って下さいとの依頼でした。調査・査定をしてみたところ、どうやらご希望の金額で売れそうでしたので、指し値が入ることを想定して、3,600万円で販売をスタートしました。
少し陽当たりが悪かったので販売当初は少し時間がかかるかもしれないと思っていたのですが、スタートしてみたら1ヶ月も経たないうちに買手が決まり、100万円値引きの3,500万円でまとまりました。
その買主に、「どうしてこのマンションにされたのですか?」と尋ねてみたところ、そのお客様は『山手線で徒歩5分以内、60平米以上、築20年以内で価格4,000万円未満という条件でインターネット検索してみたところ、このマンションとあと2、3件しかありませんでした。あとのマンションはエリアが希望エリアではなかったため、実質、自分達の希望エリアではこのマンションしかありませんでした。私たちは子どもがいなく二人とも昼間は仕事でいませんので陽当たりはあまり気にしません。』とのことでした。
結果的に、その売主様は、売却費用を差し引いても、手取り3,380万円と希望より80万円も多く手にすることができ、お喜びでした。買主様は100万円引いてもらい、その費用でリフォームができると、これまたお喜びでした。
どうして、同じ時期に、同じ3,500万円の「家」を購入した二組の家族であるのに、こうも差が出てしまったのでしょう?
【都心からも最寄駅からも遠いけれど、土地・建物それぞれ100㎡の広さを持つ「郊外の庭付一戸建」】、
そして、【60㎡しかありませんが山手線の駅から徒歩3分と利便性抜群の「都心のマンション」】。
「一戸建」と「マンション」では、特性が違う。
例えば、郊外などの3,500万円の新築一戸建では、建物の部分と不動産会社の利益分をあわせて1,500~2,000万円くらいかかっていることが多く、土地の部分は概ね1,500~2,000万円くらいと思われます。
木造建物は20年で評価がゼロになってしまうことが多いことから、築20年で土地だけの価格になってしまう場合があります。
購入当時には営業していた商業施設や医療施設が閉店・撤退したり、少子化で学校が統合等で移転したり、自分の物件より駅の近くに他の新しい競合物件が低い価格で売りに出たりすると、土地であっても当然に流通価格は落ちます。
少子高齢化に伴い都心にどんどん人が流出しているところにきて、駅から徒歩24分では、もっと駅から近くて安い物件と競合して負けるのは当然ですので、気の毒ですが価格は今後ますます落ちる可能性があります。その事実をおさえた上で対策を練る必要があります。
ちなみに戸建の建物の価格は都心でも郊外でもほぼ同じですので、都心の6,000万円くらいの新築一戸建ての場合は、建物部分と不動産会社利益分の1,500~2,000万円を引いてもまだ4,000万円~4,500万円くらい残っていることから、この場合は、20年以上経過しても土地部分の4,000万円~4,500万円の資産価値は概ね維持されると思われますし、建物が築20年を超えていても、銀行の評価とは別に、建物の部分が乗っているとしても、十分に買い手が付くケースがあります。
また、立地が山手線内側であるとか、駅徒歩5分以内であるとか、誰もが知る人気アドレスであるとか、有名人気小学校の学区内で近いとか、有名公園に隣接していて借景が楽しめるなどのプレミアムがある場合、その希少性により価格は上がる可能性もあります。
新築戸建は一般的にマンションに比べ価格が下落するスピードが早いと言われますが、都心部など立地によっては資産価値が保たれやすい場合があります。
一方、マンションは、個別性が強く建築信頼性にバラツキがある一戸建てに比べ、画一的な間取りであることが多く、概ね建築的にも安心できることから当たり外れが少ないので売買がしやすく、価格が安定していることが特徴です。
「最初の物件選び」がその後の人生を決める。
二人目の方のマンション購入のケースの場合、購入前の段階から今後少子高齢化が進んだり仮に不況が来たとしても、「山手線の内側」×「駅徒歩3分」×「60㎡」で「購入価格3,500万円」なら、そう簡単に価格が落ちないだろうという方針のもとに購入していることから、15年が経った今でも見事に、買った価格で売却することに成功しました。
家の購入で、最も重要なことは、住宅ローンの選び方以前に、どんな物件を買うか、すなわち「物件の選定」なのです。
そう、実は、「家」は購入する段階(どこにどんな家をいくらで買うかなど、選ぶ段階)で、ある程度、資産価値が保てる家かそうでないかが決まってしまうことが多いのです。
例えば、購入時に少しだけ高い【4,000万円だけど、その分、誰もが[いい場所のいい家]と思えて、15年後の売却時に4,100万円で売れる】Aという家と、
購入時にリーズナブルな【3,500万円だけど、特に[いい家]と言うわけでもなく15年後の売却時に1,600万円になってしまう】Bという家が存在するとします。
借入額4,000万円と3,500万円の住宅ローンの差は固定金利で月々16,564円、優遇後変動金利では月々13,596円ですが、
このAという家を選ぶか、Bという家を選ぶかで、後の人生が大きく変わってしまいます。
10年、20年経っても価格が落ちない家を選ぶためにはただ怖がって価格が「安い物件」を買おうとするのではなく、将来をきちんと考えて少しだけ背伸びをしたとしても価格が落ちにくいであろう「良い物件」を購入しようという視点をもつことがとても大切なのです。
後藤 一仁
■「資産価値が落ちない、安全な家(戸建・マンション)を買うために、必読の1冊!
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