山手線 「最も標高の高い駅、低い駅」
未曾有の大災害をもたらした東日本大震災から一年。
この地震で、首都圏でも埋立地において、液状化など多くの被害が生じたことは周知の通りです。
ところで、購入した土地が地震による液状化の被害を受けたので、調べてみると、購入した土地の場所は、江戸時代には海で、明治時代になって埋め立てられた土地であるということを知り、土地を購入した時の不動産仲介会社に対して、過去の地歴に対する調査及び告知責任を追及するという主張をされる方が稀にですがいらっしゃいます。
一般的に、埋立地は地震による液状化現象が発生しやすい土地と考えられていますので、宅地建物取引業者は、土地の売買の仲介にあたって取引対象土地の地歴を調査して、売買契約の前に説明する「重要事項説明」のなかできちんと説明することが望ましいといえます。
しかし、宅建業法35条1項では、宅建業者が売買契約前に行う「重要事項説明」で説明しなくてはいけない事項を列挙していますが、宅地の地歴については規定していません。
宅建業者は、当該地域において、地震等が発生した場合の液状化の危険性が特に指摘されている場合は別として、土地の地歴について説明する義務があるとまではいえないものと考えられています。
(狭い地に人口が増え続けた江戸・東京の町の発展と埋め立ては切っても切れない関係にあるといっていいほどです。埋め立ての歴史は、狭小な地に居を構えた徳川幕府が、増大する江戸の人口を収用する場所の確保という事情のもとに天正18年(1590年)にまでさかのぼり、東京都東部低地の隅田川左岸に広がるエリアや臨海部エリアでは埋め立てによる土地の造成が、どんどん行われてきました。臨海部でない内陸部であっても、埋立地である可能性があります。)
一方で、同法47条1号は土地の形質等について「取引の判断に重要な影響を及ぼす事項」を予め、宅建業者が知っている時には説明しなければならないとされています。
ということは、宅建業者は、当該土地が「以前は海を埋立てした土地であるので、地震が来た場合、液状化の可能性がある」と知っている時は、重要事項として説明する必要がありますが、知らない場合は説明義務はないということになります。
同じようなケースで、地震による液状化のための不同沈下で建物が傾いてしまったケースなどがあります。
このようなケースの場合も、仲介業者は不動産取引の専門家として通常求められている注意義務がありますが、法律(宅建業法)は地盤の専門家でなければわからない土地の瑕疵の調査まで、宅建業者に求めてはいません。
仲介業者は、地盤の調査義務がないことはもちろん、取引する土地が「液状化の危険のある土地」であるかどうかを判断する能力もありませんので、予め売主から軟弱地盤の土地であることを告げられているような場合を除き、説明義務はなく、仲介責任を問うことはできません。
ですので、土地を購入する場合は、仲介会社の担当営業マンの言葉を鵜呑みにせず、行政が作成するハザードマップや液状化危険度予測マップ、活断層マップ、水没マップ、古地図(昔は海や川、池、沼などではなかったか)等を調べたり、管轄の区役所に自ら出向き、地盤を確認するなど、可能な限り、ご自分で調べる必要があると思います。
もし、ご自分で調べるのが不安な場合は、不動産コンサルタントや不動産調査会社など、専門家の力を借りるのもよいと思います。
液状化を軽視してはいけません。液状化が起きると、電柱や建物が倒壊する他にも(仮に自分の建物が不同沈下しなかった場合でも、)不同沈下するところと、しないところに段差ができて、水道管やガス管などが壊れることや、街の下水道管の正常な排水勾配がとれなくなって(下水が下流にいかなくなり)、上流と下流の逆流現象が起きることがあり、汚水や雑排水等が流れなくなる状況を余儀なくされる可能性があります。
備えあれば憂いなしです。
(不動産コンサルタント 後藤 一仁)