価格(資産価値)が落ちないマンションの条件とは?
はじめてマンションの購入を検討するときに、専有面積が狭くても「都心の利便性の高さを重視するマンション」を購入するのがよいのか、都心から離れた郊外など多少不便な立地であっても「価格と広さを重視するマンション」を購入するのがよいのか、迷うことがあります。
実は、この2つのパターンの考え方には、パターンによって ある共通した思考の傾向性がある場合があります。
それは、「利便性を重視するマンション」を購入したいと思われる方は、購入する段階から、将来売るときのことを考えていて、価格が下がりにくい物件を選ぼうとしているケースが多く、
一方、「価格と広さを重視するマンション」を選ばれる方は、購入時点では「一生住むつもり」と思っていて、売る時のことはあまり考えていないことが多いことです。
しかし、この2つの考え方は、「資産価値」という視点から見た場合、将来、大きく異なってしまいます。
例えば、利便性重視の方が選ぶことの多いマンションの事例では、都心の4,480万円の53.6㎡の2LDKなど、人気沿線の駅から徒歩4分、通勤・通学・買物などの利便性は抜群で、アドレスの知名度も高いマンションであったりすることが多いのですが、決して広くはないために、子どもが増えたり成長するに伴い、やはり手狭な印象を受けます。
一方、価格と広さを重視する方が選ぶことが多いマンションは、例えば、郊外など、都心から少し離れた場所に建つ3,980万円、81.7㎡の3LDKや4LDKなど、将来、子どもが2、3人生まれても充分な広さを有していることや、周辺には緑も多く住環境良好であることが多いマンションです。都心から離れている分だけ広さのわりには価格が安い為、住宅ローン返済も比較的軽く、生活も都心のマンションを購入した場合より若干 楽であることが多いです。しかし、交通の便が悪いために、自宅と都心までの交通アクセスは、徒歩やバス、電車を乗り継ぐ為、電車やバスが来るタイミングがあわない場合、1時間以上かかることもあります。時には仕事の都合で終電の時間になると終バスの時間を過ぎて、タクシーを利用することもあります。こちらのパターンを選択される方は、住環境の良さや価格の安さ、専有面積の広さと引き換えに、交通の便の悪さという代償を支払っていることになります。しかし、広い面積や安い価格に奥様も満足し、お子様も伸び伸び育ち、特に不満を抱かずに暮らしている場合が多いです。よく、このパターンを選択されるご家族のご主人様からは「僕が我慢すればよいのだから」という言葉を聞くことがあります。
しかし、「資産性」の視点からみたときに、そんな2つのパターンの家族が、例えば10年後などに売却を余儀なくされる状況が訪れた時に、大きく運命が分かれてしまいます。
10年前に4,480万円で購入した、都心の人気沿線の駅から徒歩4分の53.6㎡の2LDKマンションは、売却時に4,580万円で売れ、一方、10年前に3,980万円で購入した、郊外の81.7㎡の3LDK又は4LDKマンションは、売却時には2,100万円になってしまうことがあります。
実は、郊外のマンションは都心のマンションに比べ、価格が下がる可能性が高いのです。
日本では、どんどん都市への人口集中が鮮明になってきていて、都会に人が多く集まり、地方は人が減少していき、都市と地方の格差拡大が進んできています。
また、都市の中でも二極分化が進んできていて、人が集まり住宅価格が上昇するエリアがある一方、人口が減少し価格が下落しているエリアが出てきています。
東日本大震災のときに職場のある都心から自宅までの実際の距離(電車の乗車時間ではない)が遠い為に帰宅が困難になった「帰宅難民」が発生したことや、働き盛りの世代だけではなく、今後、少子高齢化に伴い、郊外に居住しているシニア世代が、徒歩で数分の場所に何でも揃う買物施設があることや最新設備のある医療施設が近くにある、どこに行くにもすぐ行けるなど、老後生活の便利さや安心を求めて都心へ移住する傾向が高まっていることなど、「職住近接」のトレンド 、「都心回帰」の流れは高まり、今後、ますます都心圏のマンションの資産価値が高まる一方、都心から離れたマンションほど資産価値が下がりやすくなっていく可能性があると思われます。
よく、マンションを初めて購入しようと考える方々が陥りやすい思考パターンは、
「賃貸マンションの家賃は意外と高いし、もったいない。よし、結婚を機にマンションを購入しよう」
→「今は夫婦2人だけど(又は子どもが生まれたばかりだけど)、将来、子どもが(生まれて)大きくなったとき(または増えたとき)に備え、3LDK、できれば4LDKは必要だ」
→「ところで、自分たちはいくらくらいのマンションが買えるのだろう?」
→「自分たちが買える、希望にかなう3LDK又は4LDKのマンションがあるのはこのエリアだ」
→「これからの時代は、経済も不透明だし地震も心配。住宅ローンの支払いは不安だ。無理するのは危険なので、堅実に無理のない返済計画が必要。支払いは月々○○万円までだ。」
→「通勤の便がよく災害にも強そうなエリアの3LDK又は4LDKの都心マンションは価格が高くて手が出ない。また、交通が便利でも地震や水害などが起きたときに不安なエリアは心配だ。一方、災害に強そうなエリアの郊外のマンションなら、多少交通の便が悪いが、安全そうだし、住環境も良さそうで十分な広さと価格も手頃だから、まあよいだろう。」
→「都心のマンションには憧れるけど、やっぱり自分達には分不相応だし、子どもが出来たときのことを考えた充分な広さのものはそもそも買えない。それに緑が多い住環境で、将来生まれる子どもたちを伸び伸び育てたい。」
と、このような感じです。
しかし、資産性という視点から見た場合、マンションの価値は「立地」の影響が想像以上に大きく、「価格が落ちにくいマンション」とは、「都心で交通の便がよいマンション」の場合が多いのです。
売却に備えて、都心のマンションを選ぶことと、売却を全く考えずに「一生住むつもり」と郊外のマンションを選ぶのとでは、「マンション」という不動産を「資産」ととらえるのか、「消費」ととらえるのか程の差が出てしまうこともあるのです。
もちろん、緑が多く住環境の良いエリアに建つ、広くて、比較的価格が安い、郊外のマンションは、交通、買物、教育体制、医療体制、その他の都心の利便性を考えなければ、魅力的です。
しかし、郊外マンションが都心マンションに比べて安いと言っても、やはりマンションは高額な買物です。
長い人生、色々なことが起き、突然、ライフステージの変化が訪れる場面に出会すこともあろうかと思います。
「資産性」を見越して購入するということは、ライフステージの変化に応じて、売却する必要が出てきた時に売却することができるということであり、それは、いつマンションをお金に換えても、ある程度の金額になると思って安心していられるということでもありますので、住宅ローンを背負っているというストレスからも、ある意味解放されて精神衛生上もプラスなのではないかと思います。そのような考え方から見れば、お金がたくさんあるので消費してしまってもよいから自分達の希望を満たすマンションを手に入れたいという方であるならともかく、資産性の視点から、やはり資産になるマンションを購入するという考え方が大切といえます。
不動産コンサルタント 後藤 一仁
【本コラムは「YAHOO!JAPANニュース経済:トピックス」、「Infoseek 経済ビジネス・ニュース」、「livedoorNEWS経済」、「msnマネー」、「Business Media誠」、「ニコニコニュース」等掲載コラムです。】
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