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松原昌洙

共有名義不動産の売買、仲介に強い不動産会社社長

松原昌洙(まつばらまさあき) / 宅地建物取引士

株式会社中央プロパティー

コラム

トラブルに巻き込まれたくないから共有不動産の権利を放棄したい!

2018年11月3日 公開 / 2023年5月19日更新

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 共有不動産

共有不動産において、共有者の1人が自分の持分の権利を放棄することを「持分放棄」といいます。持分放棄のルールやその手続き、持分を受け取った人に課せられる税金について説明します。

トラブルに巻き込まれたくないから共有不動産の権利を放棄したい!

持分放棄とは

持分放棄とは、共有不動産において共有者の一人が自分の持分を放棄することです。
この方法は、共有不動産関係を解消するために共有者が自分の意志でする場合と、共有者が死亡し、その人に相続人がいない場合にとられる方法です。

どちらの場合でも、放棄された持分は法律に基づきその他の共有者に対して、その人たちが持つ持分に分けて与えられます。

持分放棄をするには、その共有不動産における所有権の移動を行わねばなりません。そして放棄された持分を受け取った共有者には、贈与税も課せられます。

持分放棄をするのはどんな時?

持分放棄がとられるのは、夫婦で共有不動産を取得したのち離婚をするケースに多くみられます。
持分放棄をするのはどんな時?

他には、共有不動産の共有者の1人が亡くなって相続人がいない時、他の共有者に亡くなった人の持分が引き継がれるケースです。

といっても離婚の場合、持分の権利を放棄した人には売却代金が入らないことから、実際にはこの方法で共有不動産の権利を処分せず、他の手段で共有名義を解消する夫婦の方が多くなっています。

離婚した夫婦は、2人で住宅ローンを契約して不動産を購入していたことが多く、夫婦のどちらかが家に残るなら、家を出る方が持分を放棄しても住宅ローンは家に残るものが返済し続けることになります。

家に住み続ける方が2人分の住宅ローンを支払えるほど資金力はなく、家を出る方も自分の住宅ローンを一括返済できるお金を持っていないことがほとんどです。

このため持分放棄をとらずに、家を売却して得た現金を、夫婦それぞれが分担して受け取り、住宅ローンの返済に充てることが多いのが現状です。

持分放棄の手続きは、受贈者も一緒に出向くこと

持分放棄の手続きは、所有権移転登記手続きを行うことで完了します。

持分の放棄は、持ち主が自由にその権利を放棄できますが、不動産登記をし直すときは、放棄する人とその持分を受け取る他の共有者とで共同申請をしなければなりません。

持分放棄の登記を申請する時、放棄する人が用意する書類などは次の通りです。
・ 登記済証(権利証)または登記識別情報
・ 印鑑証明書(発行日3か月以内のもの)
・ 固定資産税評価証明書
・ 実印
・ 本人確認資料

持分を受け取る共有者が用意するものは
・ 住民票
・ 認印
・ 本人確認資料

書類の提出が済めば、持分を受け取る人は、登録免許税を支払います。
計算式は次のようになります。

登録免許税 = 固定資産税評価額 ×(受け取る持分割合)× 20/1000

1,000万円の不動産の1/2を放棄した場合、所有権移転登記の登録免許税は
1,000万円 × 1/2 × 20 × 1000 = 10万円 となります。

持分放棄と贈与の違いとは

持分放棄とよく似た共有不動産の権利の解消法には「贈与」があります。
この2つは、持分を受け取った人がその価値に対して贈与税を支払う時の税率は同じですが、下記の点で違いがあります。

(1)持分を引き継ぐ人
贈与
持分を受け取る人やその割合、人数など自由にきめることができる

持分放棄
自分以外の共有者へ持分割合に応じて帰属

(2)持分取得後に不動産を売却した時の譲渡所得税の計算の仕方

・ Aさん持分1/2、Bさん持分1/2の土地
・ 取得費用は100万円(各持分50万円)
・ 現在の評価額は土地全体で1,000万円(各持分500万円)
・ AからBへ、持分を贈与 / Aが持分放棄し、共有不動産の権利を解消
・ Bさん、共有不動産関係解消後に土地全体を1,000万円で売却

以上の経緯において、Bさんが、持分放棄で土地を取得した場合と、贈与で取得した2通りにおいて、売却時の譲渡所得税を計算します。

譲渡所得税とは、不動産を売却した代金から、売却に伴う費用やその不動産を取得した時の費用、および特別控除などを差し引いた金額に対して課せられるものです。

贈与
2人で不動産を取得した時の費用をそのまま引き継ぎます。
Bさんが土地を売却した時の譲渡所得の計算は次の通りです。
(※譲渡費用、特別控除は省略しています)

1,000万円 - 100万円 = 900万円

持分放棄

放棄の場合、不動産取得当時のAさんの費用持分50万円から、Aさんが持っていた土地の評価額500万円と変わります。

Bさんが土地を売却した時の譲渡所得の計算は次の通りです。
(※譲渡費用、特別控除は省略しています)

1,000万円 - (500万円+50万円) = 450万円

贈与の場合は、譲渡所得900万円、放棄の場合は、譲渡所得450万円に対して譲渡所得税が課せられます。

共有不動産の権利放棄は1人で決めずに専門家に相談すること

共有不動産を所有していれば、共有者どうしの意見が対立しやすくストレスを抱えることが多くなります。

共有不動産の権利放棄は、この不動産の共有関係から解放される方法の1つですが、実際に共有ストレスから解放されるとはいえ、自分がその代償を得ることはできません。
そのため、現実的にはこの方法をとる人は多くはいません。

共有不動産関係を解消したい、でも損はしたくないと考えるのであれば、不動産の専門家に相談し、事態の収拾をするようにしましょう。


共有持分の放棄については、下記の記事でも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
共有者の同意なく共有持分を放棄する方法【2023年最新版】

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