夫婦問題や親族問題!共有名義によくあるトラブル!
離婚に際し大きな問題になるものに共有不動産があります。どんな点が問題になるかを見てみましょう。
Aさんの事例
Aさん夫婦は結婚2年後、郊外の分譲住宅を住宅ローンで購入しました。妻B子さんも仕事を持っており、家は夫婦の共有名義です。ローンの頭金も二人で出し合いました。
子供も生まれ幸せな日が続いていましたが、Aさんが会社を辞め独立することを考え出した頃から、夫婦仲がうまくいかなくなりました。
その後、Aさんは妻B子さんの反対を押し切って会社を辞め、友人と事業を始めました。幸い事業はうまく行っています。ただ、事業を始めるにあたって、Aさんが友人と連名で知人から借金をしたことが夫婦仲に大きな亀裂を生んでしまいました。
そして5年前、Aさんは家を出て、それから別居状態が続いています。別居後も住宅ローンはAさんが支払っています。
現在、Aさんとしては、妻B子さんと離婚したいと考えています。慰謝料や養育費については十分のことをするつもりですが、家を売却し、住宅ローンの残債を整理したいと望んでいます。
Aさんの事例にある問題点を見てみましょう。
①妻B子さんが売却に同意するか
Aさんの家は妻B子さんとの共有名義です。共有名義不動産の売却に際しては、共有者の同意が必要になります。ですから、Aさんが家を売却するためには、妻B子さんの同意がなければなりません。
②ローンの融資先が承諾するか
Aさんは住宅ローンが残っている家を売却したいと望んでいるわけですが、仮に妻B子さんが売却に同意したとしても、Aさん、B子さん夫婦の判断だけで売却できるかというと、そうはいきません。ローンを組んでいる金融機関の許可が必要になります。なぜなら、金融機関は融資を決定する際、家と土地に抵当権を設定しているからです。
おそらく金融機関に相談すると「任意売却」を持ちかけられることになるでしょう。
しかし、もし、任意売却によって家が売却できたとしても、それで住宅ローンの残債が整理できればいいですが、残債を整理できない場合、残ったローンをAさん、妻B子さんがいくらずつ支払っていくかという問題があります。
③財産分与の問題
では、Aさんがお金を工面することができ、ローンの残債を整理した場合はどうでしょう。金融機関との問題はこれで片付きます。しかし、離婚前の共有不動産の売却には、財産分与という問題が絡んできます。Aさん、B子さん夫婦が購入した分譲住宅(不動産)は「夫婦が婚姻中に協力して築いた財産」の一つです。
そして、Aさん夫婦の場合、二人が「協力して築いた財産」である家には、それぞれに共有不動産の持分というものがあります。
持分はその不動産に対し出資した割合によって決まります。仮に、Aさんと妻B子さんの持分を、Aさん9/10、妻B子さん1/10としてみましょう。
しかし、たとえ1/10であっても妻B子さんは共有者ですから、Aさんは妻B子さんの同意がなければ家を売却することはできません。そして、財産分与においては、実際の持分比率にとらわれず基本的に夫婦平等に1/2と考えるのが主流なのです。
つまり、Aさんの実際の持分が9/10、妻B子さんの持分が1/10であっても、実際の持分に関係なく平等に持分1/2の権利があるとするわけです。
問題はこうした状態にある家を売却できるかどうかです。
④買い手が現れるか
現在、Aさんの家にローンの残債はなく、家の売却に関しては、Aさんと妻B子さんの判断に任せられているとしましょう。
共有不動産の売却については共有者の同意が必要ですが、その持分については、他の共有者の同意がなくとも売却することができます。
では、ここでAさんの持分のみを買い取る人が現れるでしょうか。と言うのも、この場合、Aさんの持分9/10を買い取ったとしても、妻B子さんから「この家の1/2の権利は私にある」と主張される可能性があります。それを承知でAさんの持分を買い取る人がいるとはあまり考えられません。
⑤共有物分割請求を起こしても・・・
不動産の共有状態を解消する一つの方法として、共有物分割請求があります。共有物の分割方法を裁判所で決めてもらうための訴訟手続きです。
しかし、Aさんの事例では共有物分割請求が認められないことが考えられます。
共有分割請求において裁判所が出す判決には、土地のように分けられるものは分割する現物分割があります。また、共有者のうちの一人が不動産の全部を取得し、その代償金を他の共有者に支払う全面的価格賠償もあります。
そして、共有不動産を競売にかけ、その売却代金を共有者で分け合う競売があります。
Aさんの事例では現物分割でも全面的価格賠償でもなく、競売という判決になりそうです。しかし、競売になれば妻B子さんと子供が住む家がなくなることになります。そのため、Aさんの事例では共有物分割請求が「権利の乱用」を理由として認められない可能性が大きいと考えられるのです。
離婚による共有持分の解消方法については、下記記事でもわかりやすく解説しています。
共有持分 離婚とは