共有名義の収益は分配することが原則!
共有名義不動産の売却は、単独名義の不動産を売却するようなわけにはいきません。共有者全員の同意、同意を証明する書類を準備するなど、必要な手続きがあります。
共有名義の不動産を売却する
共有名義不動産の売却と言っても、不動産そのものを売却する、あるいは、その不動産に対する持分を売却する、など、いくつかのケースが考えられますが、ここではまず基本となる形の、不動産そのものを売却するケースについて考えてみましょう。
この場合、最初におさえておかねばならないことは、共有不動産の売却には共有者全員の同意が必要だということです。
たとえば離婚を期に夫婦の共有名義であるマンションを売却することになったとします。夫の持分が9/10、妻の持分が1/10としましょう。この場合、夫の持分のほうが圧倒的に多いわけですが、妻の同意がなければマンションを売却することはできません。
これは、家と土地、土地のみという場合でも同様です。共有不動産の売却には共有者全員の同意が必ず必要です。そこで、共有名義不動産の売却にあたってまず最初にしなければならないことは、共有者の同意を得る、ということになります。
共有者全員の同意が得られ、共有名義不動産の売却ができた場合、売却代金の配分はその不動産の持分に応じて配分することになります。マンションの売却代金が3000万円としたなら、夫が2700万円、妻が300万円ということになります。
共有不動産売却の注意点
Aさん、Bさん、C子さんの兄妹が親から土地を相続したとしましょう。そして、協議の上、この共有名義の土地を売却することにしたとします。共有名義不動産の売却に際しては、共有者全員の同意だけではなく、売却手続きに共有者全員が立ち会い、契約書への署名・押印をする必要があります。共有者全員が売主になるわけですから、これは避けられません。
しかし、Aさんたち兄妹全員が集まって手続きをしたくても、Bさんは遠方に住んでいる、C子さんは病気がちなど、兄妹全員が集まるのは難しいことも考えられます。
この場合、たとえばAさんが代表になり売却手続きを行う方法があります。Bさん、C子さんの委任状を用意し、代表者のAさんが売却手続きを代行するわけです。
ただ委任状に関しては、後々トラブルにならないよう、できるだけ詳細・正確なものにする必要があります。そのため、委任状の作成にあたっては、最寄りの法務局で登記簿謄本を取得しましょう。登記簿謄本には土地の住所や地目(土地の現況)、面積、所有権に関する事項などが詳細に記されています。それを委任状に正確に記入し、実印を押して、印鑑証明書も添付します。
ところで、Bさん、C子さんが「売るのはいいけど手続きが大変そうだから、全部、A兄さんに任せたい。必要なら名義もA兄さん一人に変更してほしい」と言い、Aさんも「それじゃあ、そうしよう」ということで、共有名義不動産の名義を変更することも考えられます。
しかし、単に名義変更してしまうと問題があります。名義を変更するということは、共有者の持分(この例ではBさん、C子さんの持分)を代表者(この例ではAさん)に贈与することになるからです。そして、代表者(この例ではAさん)に贈与税がかかってしまうことになります。土地は高額ですから、納める贈与税も高額になるでしょう。この点で名義変更は注意が必要です。
共有不動産売却に必要な書類
①登記済権利証または登記識別情報
登記済権利証は不動産の登記が完了した際、登記名義人に対して交付されるものです。登記人が正当な所有者であることを証明するものです。
登記識別情報は、登記済権利証と同じ役割を果たすものですが、12桁の英数字の組み合わせたものになっています。クレジットカードのカード番号のようなものです。クレジットカードのカード番号、暗証番号については他人に知られないよう注意するように、登記識別情報も厳重に管理しなければなりません。売却の際には、登記済権利証、登記識別情報のいずれかが必要になります。
②土地測量図・境界確認書
売却する土地の面積や、近隣の土地との境界線を明確に示す書類です。
単独名義の不動産の売却についても言えることですが、境界線を明確にしておかないと後々、売却した相手、あるいは近隣の土地の所有者とトラブルが生じる可能性があります。
③共有名義者全員の身分証明書と実印、印鑑証明書、住民票
不動産の売却には本人確認ができる身分証明書が必要になります。共有名義不動産の場合は、共有者全員の身分証明書、実印、印鑑証明書、住民票が必要になります。
共有名義の不動産の売却は、共有者同士でよく話し合い、お互いに納得したうえで行う必要があります。しかし、その点は問題がなくても実際の手続きは難しく、また、複雑になりがちです。共有名義不動産の売却に際しては専門家に相談することをおすすめします。
共有持分のに売却の流れについては、下記記事でも解説しています。
共有持分の買取業者どう選ぶ?~選ぶポイントと共有不動産の売却の方法~