共有名義・共同名義は同じ?共有名義不動産になるケースと注意点を紹介
共有とは1つのモノ(財産)に対し複数の人が所有権を持っている状態を指します。この「所有権」について少し詳しく見てみましょう。
合有・総有とは
所有権には「共有」のほかに「合有」、「総有」があります。
「合有」の例としては組合財産があります。「共有」とどう違うかと言えば、共有の場合には共有者それぞれに共有持分があり、「持分」については自由に処分できます。共有物の分割請求をすることもできます。
しかし、合有の場合、そうは行きません。たとえば組合財産について組合員は「持分」を持ってはいるものの、その持分を自由に処分することはできませんし、組合財産の分割を請求することもできません。
「総有」の例としては、町内会やサークルをイメージすると分かりやすいとおもいます。卑近な例をあげれば、町内会や子供会の際、町内会が持っている什器を町内会のメンバーなら誰でも使うことができます。しかし、町内会のメンバーにはその什器(財産)に対する持分はありません。持分がないのですから分割請求をすることもできません。
また、不動産登記簿には「甲区」と「乙区」があります。甲区欄には「その不動産を誰が所有しているか」という所有権に関する事項が記載されます。
そして、乙区欄には「所有権以外の権利」、たとえば賃借権などが記載(登記)されます。この「所有権以外の権利」の共有を「準共有」と言います。
保存・管理・変更について
3人の兄弟、Aさん、Bさん、Cさんが共同で中古別荘を購入したとしましょう。物件価格は1000万円、Aさんが400万円、Bさん、Cさんがそれぞれ300万円出資しました。物件は当然「共有名義」で、「共有持分」はAさんが4/10、Bさん、Cさんがそれぞれ3/10になります。
この中古別荘(共有名義不動産)に関して、Aさん、Bさん、Cさん(共有者)は、それぞれ所有権を持ちます。言い換えれば「所有・収益・処分」の権限があるということで、具体的には、①保存行為、②管理行為、③変更行為を行うことができるということです。
①保存行為
保存行為とは共有物(ここでは中古別荘)の現状を維持する行為です。たとえば、Cさんが別荘の雨戸が破れていることを発見したとします。そのままにしておけば雨が入り込み別荘が傷んでしまいます。
この場合、Cさんは単独で雨戸を修繕することができます。別荘の雑草除去やベランダ(工作物)の床板の浮きを直すなどのほか、小・中規模の修繕なども保存行為にあたります。
②管理行為
管理行為とは、目的物を利用・改良する行為です。「利用」とは、この中古別荘を貸別荘にして収益を上げる、などを指します。ただしこの場合、たとえばCさん一人がそう提案しても、Aさん、Bさんの同意がなければなりません。管理行為については「共有者の持分価格ベースで過半数の同意」がなければ行えないからです。
この例では、Cさんの持分価格は300万円、それに対しAさん、Bさんの持分価格は400万+300万=700万円ですから、Aさん、Bさんが反対であれば、Cさんの提案は実現できないことになります。
「改良」に関する行為とは、たとえば中古別荘のトイレをリフォームする、などを指します。Bさん、Cさんの間でトイレのリフォームについて意見がまとまったとしましょう。この場合、Bさん、Cさんの持分価格は300万+300万=600万円ですから、持分価格の過半数を超えます。そのためAさんが反対でも、Bさん、Cさんの希望通りトイレをリフォームすることができます。
さて、そのリフォーム工事が60万円としましょう。この費用の支払いはどうなるでしょう。この費用はそれぞれの持分に応じて負担することになります。つまり、Aさんが60万円の4/10で24万円、Bさん、Cさんはそれぞれ60万円の3/10ずつ、つまり、18万円ずつになります。
③変更行為
変更行為とは、大規模なリフォーム、共有している建物・土地(ここでは中古別荘)の売却などを指します。そして、この変更行為には、共有者全員の同意がなければ行なえません。
所有権の侵害について
最後に、共有名義不動産に対する所有権の侵害について見てみましょう。Aさんたちの中古別荘を、Aさん、Bさんの同意がないにも関わらずCさんが大規模なリフォームを行なおうとすれば、これは、Aさん、Bさんの所有権の侵害に当たります。Aさん、Bさんは、大規模なリフォームを止めさせることができます。
所有権の侵害に対しては外部の第三者に対しても主張することができます。Aさんたちが購入した中古物件に、兄弟の叔父さんが住み着いたとします。これは、第三者による不法占拠です。Aさんたちの所有権を侵害する行為で、Aさんたちは、叔父に対し立ち退きを求めることができます。また、第三者によって勝手に所有権移転登記がされたという場合、その登記を抹消することもできます。
所有権の基礎知識については、下記の記事でも詳しく解説しています。
ぜひご覧ください。
共同所有の形態(共有・総有・合有)
不動産の共有持分とは?メリット・デメリットや売却方法まで解説