2つの『箸の日』から学ぶ、お箸を手放す作法と心

－今日は何の日だろう？

そんな風に朝を迎えることはございますか？
日本には古くから、六曜や五節句、二十四節気、七十二候、花暦などがありますし、一年365日、毎日が誰か(何か)の記念日だったり、誰かの誕生日だったりしますよね。
毎日が特別な一日なのです。

そして、一年に一度くらいは、思い出して欲しい。改めて考えて欲しい。大切に想って欲しいー
そんな願いを込めて設けられているのが「記念日」です。

私が「日本人のこころ・心配り」として伝承しているお箸と風呂敷にも、記念日があります。
今日は、お箸の記念日についてお伝えしましょう。

「お箸の日」は1年に2回ある!?

日本において、「お箸の日」は一年に2日存在します。

●8月4日
一般社団法人日本記念日協会に「箸の日」として制定されている記念日です。
日付は8と4で「ハシ＝箸」と読む語呂合わせから選ばれました。

●11月11日
2015年、私も参加した箸国際学術シンポジウム(韓国にて開催)において制定された記念日です。
「1」が4つ並ぶことで、お箸が2膳並んでいるようにみえることから、この日が選ばれました。

「お箸の日」には何をするといい？

お箸の日には、日本全国の神社仏閣で、箸供養(寺院)や箸感謝祭(神社)が催されます。
日々、数多の命やご縁を繋いでくださったお箸に感謝し、延命長寿、無病息災、繁栄、安泰などを祈る祭事で、共通する習わしはお箸のお焚き上げです。

日本のお箸の多くは木材でできたものですから、燃やすことができ、可燃ごみとして処理することが可能です。
ただ、生ごみと一緒に袋に入れることに抵抗を感じませんか。

お箸は毎日、一日に何度も、私たちに沢山のご縁や命を繋いでくれる存在。
命の尊さや、ご縁の有難みを伝え、自身の存在を顧みる機会を与え、人生に寄り添ってくれている存在です。
そんなお箸だからこそ、欠いてしまったり、長く使い古したお箸を手放す時にも、感謝の気持ちや心を込めたいものですよね。

元々日本では、使い古したり、壊れてしまったお箸は、燃やして天に返したり、土に埋めて地に返したりしてきました。
しかしながら昨今は、自宅で焚火をすることもなくなりましたし、地面の多くはコンクリートに覆われているため、土に埋めることもままなりません。
そのような中お箸をお焚き上げするという習わしが残っているのが、神社仏閣でお箸の日に行われる箸供養・箸感謝祭なのです。

箸供養・箸感謝祭はどこで行っているの？

無尽蔵にお箸を神社仏閣に持ちこんでも、殆どの神社仏閣ではお焚き上げいただくことはできません。(*ところにより、年末のどんと焼きでお預かりいただける場所もございます。直接お問合せください。）
年中行事としてWebページに公開をしていなかったり、コロナ禍で辞めてしまった神社仏閣もありますが、2025年の開催(告知のみを含む)が確認できている主な神社仏閣(一部)はこちらです。（*2025年現在）

多くが8月4日に執り行っておりますが、一部異なる場合には、備考欄に記載しました。

尚、直接お箸を火にくべるのも神聖な心持になる貴重な体験ですが、多くの神社仏閣が郵送でもお箸を受け付けくださいますので、開催日が平日の場合等は、お気軽にお問合せされることをお薦めします。
* 画像は2024年に山梨・甲斐奈神社でお箸のお焚き上げを執り行っていただいた際の様子です。

どんなお箸をお焚き上げするの？お箸の替え時は？

－何年も同じお箸を使い続けている

そんなことはありませんか？
お箸の替え時がわからないというお問い合わせは少なくありません。

でも、毛玉いっぱいの着古したボロボロの服で外出しないように、お箸にも気を配ってほしい。
大切なものを扱う時には丁寧に、ゆったりと扱えるように、お箸も扱ってほしい。
だって、お箸はあなたを映す鏡なのですから。
参考コラム：お箸の使い方が語る、あなたという人――3つの文化

では、どんな時が替え時なのでしょう。以下に示します。

• ハレの日を迎えた時

ハレの日というのは所謂、冠婚葬祭にあたる日です。
もっとも分かりやすいのは、お正月でしょうか。
ハレの日にはハレの箸、つまり、真新しいお箸を使います。
お箸は一度でも使ってしまうと、魂や様々な念が宿ると考えられています。
よって、新たな願いや祈りを込めたり、お祝いをするハレの日には、新品のお箸を用いるのです。
過去の念などを断ち切り、新たなお箸を用いるのに、とても自然なタイミングです。

• 使い始めて一年がたった頃

一般的に、お箸の替え時は一年が目安言われています。
お箸は、神様と自身の橋渡し役でもあります。
お守りだって、一年に一度、きちんと奉納しますよね。
お箸も同じなのです。

• 塗装が剥がた頃

多くの木製のお箸の箸先には、油や汁などをはじき、素地である木を保護するため、漆などの塗料が塗られています。
塗装がはがれると、白っぽくなったり、がさつく口当たりになります。
そして、木が水分などを吸収し、カビや雑菌が繁殖してしまいやすくなります。
神聖で、貴重なお食事を、汚さずに身体に運ぶためのお箸ですから、清潔であることはとても大切です。

• 塗装にひびが入っているのが分かった時

少しのひび割れやささくれくらいなら問題ないとお使いの方も少なくないかもしれません。
でも、小さなひびやささくれであっても、水分はじっくりと浸透してしまうものです。
カビやにおい、雑菌が発生する前に替えましょう。

• 欠けたり、折れてしまった時

僅かでも口に当たるものですから、欠けたり、折れたりしてしまってるお箸は、危険です。
この場合は、すぐに替えましょう。

• 気に入ったお箸に出会えた時

－好みは時に変化する。
お箸も同じです。
実際に私も、10～20代の頃は極細の竹箸が好みでしたが、30代では六角箸が、40代では少し丸みかかった四角い中細箸が好みになりました。
幼い子はキャラクターものが好きな子も多いですし、私のお教室で自分で絵付けしたお箸を制作された方は、間違いなくそのお箸にお替えになります。

身体に合わない大きさの靴では不都合なように、手に合わないお箸は使いづらいものです。
好みのものや柄に接しているときは自然と笑顔になるように、自分で作ったり選んだりしたお箸は、手に取るたびに心和むものです。
お箸は毎日手にするものですから、自分の好きなお箸、使いやすいと思うお箸を用いるのが一番です。
お箸も一期一会。その時々のあなたの現われです。
お気に入りに出会えた時には、迷わず替えましょう。


いかがですか。
毎日手にするお箸だからこそ、感謝をもって、心を込めて。
今日という日と、あなたのお箸と、向き合う優しいきっかけとなりますように。