『“やる気”について考えるー「やる気スイッチ」の与えた誤解』
こんにちは、与一の井上です。
今日の話は少なからず宣伝のように聞こえるかと思います。興味のない方はここで読むことを止められることをお勧めします。
皆さまは塾に何を求められますか?「お子さんの成績を上げること」こうですか?「高校/大学に合格すること」こうでしょうか?
自分のお子さんが塾に通うことで、どうなって欲しいと思いますか?
最近私には「塾をやっていて良かった」と初心を思い出させてくれる瞬間がありました。ある中3生(Kさんとします)のお話をさせて頂きます。
「何もわからない」そこから何を目指すのか。
Kさんは中1から自宅近くの塾に通っていました。後から聞いた話ですが、お母さんは第一子であるお兄さんの時には色々と気にしていたようですが、その妹さんに対しては「1年生から塾に行かせているから問題ないだろう」と高をくくってしまっていたそうです。
ですが1年生も終盤に差し掛かったある時、テストの成績が振るわないKさんにこう言われてひどく驚いたそうです。「実は英語が何もわからない」と。
そこからもお母様は暫く自分なりには頑張っている(つもり)のKさんを見守っていたということですが、やはりテストがある度に暗い顔をして帰ってくる姿を見て心配し、かなり距離があるにも関わらず、与一へと体験・入塾のご相談へと来てくれました。
さてお母さんとの話し合いの末いざ入塾したは良いですが、「英語が何もわからない」との言葉通り、中1の最初の内容からほぼ理解ができていませんでした。頭の中に断片的に知識はあるものの、どう使うのか、どう使い分けるのかが全くわかっていなかったのです。
ここで私は腹を括りました。Kさんにもお母さんにも、「目の前のテストで点数を取ることは暫く我慢してください。3年生になるまでに1から全てを教えなおし、3年生からは他の子に追いついて一緒に授業を進められるようにします」と伝えました。
諦めなければ必ず成長する。
そこからは来る日も来る日も〝be動詞と一般動詞の区別〟を延々と繰り返しました。丁寧に教えればその場では理解し問題を解けても、翌週には忘れてしまっている。何度教えても理解した筈のことができなくなってしまう。そんなことを毎週毎週続けました。もし良ければ、との提案を受けて通常週1回の授業をKさんは週2時間、同じことばかりを繰り返しました。
きっと楽しくなかったことでしょう。同じことをやっているのにできていかない自分が歯がゆかったことでしょう。加えて毎週単語を覚えさせることも課していましたが、単語を覚えることが苦手なことも、余計に「できない」という気持ちに拍車をかけます。夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬を迎えても大きな改善は見られませんでした。
年を越したころ、少しずつ成長の兆しが見られます。まず毎週課していた単語テストの正解率が上がってきました。そしてわからないながらもずっと頑張って使ってくれていたSVOCを理解し始め、明らかに英語が「文」としての体を成してきました。
そして2年生の終盤、〝受身〟〝現在完了〟を教え始めた辺りから、遂に「追いついた」こう思えるようになりました。
約束していた中3生となりました。4月からは他の子同様週1回の授業としました。もう特別扱いをする必要がない、そう思ったからです。
「本当に嬉しかったこと」は
少し難しい文法を他の子と一緒に教えても、Kさんは理解できるようになってきていました。ですが実際に問題を解かせれば、まだ粗は目立ちます。そこでこう声を掛けました。「できるようになるほど、ミスが目立ってくるようになる。これを『勿体ない』と思えるようになったら、それが本当のスタートラインだ」と。
6月となり、3年生最初の定期テストが近づいて来ました。テストに向けて復習に入る中、Kさんにこう伝えました。「今回のテストは、点を取りに行こう。」
彼女は力強く頷いてくれました。
「嬉しかった話」はここで終わりです。結局結果として何点取れたのかが言いたいんじゃないのか、そう思いますか?
私にとって結果は大きな問題ではありません。「テストで点を取りに行こう」という声掛けに対して、力強く頷いてくれたこと。「英語が何もわからない」と言い、来る日も来る日も中1の内容を繰り返したこの子が、「テストで点が取れそうだ」とコツコツ積み上げた力に、一生懸命繰り返した結果付けた力に自信が持てるようになったこと。この事実こそが何よりも嬉しい気持ちにさせてくれたのです。
(結果は89点でした。まだ「点を取る」ことには上手さが足りませんでした。)
今ではK子さんが他の子に後れを取ることはほぼありません。他の子も理解・定着にかなり苦労する単元を今は進めていますが、他の子よりもできていることも珍しくはありません。だから今度聞いてみようと思います。「英語わかるようになった?」と。
やっぱり「点を取らせる塾」はしたくないし、できない。
皆さまは塾に何を求められますか?「お子様の成績を上げること?」「高校/大学に合格すること?」
与一には高校に上がるときに別の塾から変わってきてくれる子が少なくありません。本当に残念ですがそれらの子には「中学校で塾に行っていたはずなのに中学内容が全然身に付いていない子」がやはり少なくありません。大変申し訳ないのですが、一体何をどう教えて来たのだろう、と毎年思います。
だから私はこうお伝えしたいのです。与一では点を取るための授業はしません。時間がどれだけかかろうとも「わかる」ようになるまで徹底的に教えますよ、と。



