再掲『共通テストでの“失敗”にどう対処すべきか』
こんにちは。与一の井上です。
今回はタイトルにある「求められる“国語力”とは何か」について考えたいと思います。
まずその前に、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが高校の国語の授業に導入される新たな指導要領についてお話します。
国語から文学が消える?
2022年度の新指導要領では、高等学校の国語で共通必修科目が[現代の国語/言語文化]となり、
選択科目が[論理国語/文学国語/国語表現/古典探求]となることが決まっています。
大雑把に言えばいわゆる論説文が[現代の国語]に、小説が[文学国語]、そして契約書などの実用的な文章の読み取りが[論理国語]に分類されるようです。
(実際には[現代の国語]に小説を入れた教科書があるとのことで議論となっているようですが…)
新指導要領において注目すべき部分は、新たに[論理国語]が導入されること、そして国語と言えば誰もがまず思い浮かべる[文学]が選択科目となることです。
この背景にはPISA(国際学習度到達テスト)というOECD加盟国で3年毎に実施されるテストで日本の順位が大きく下がったことがあると言われています。
このテストは読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーという3分野での習熟度が計られ、2018年に行われたテストでは、その中でも読解力が前回に比べ一番順位が落ちるという結果になりました。
その結果に危機感を抱き、高校の国語の授業に新たな指導要領が導入されたと考えられています。
問題はこれにより今後の大学入試がどう変わっていくかということです。
新指導要領の導入の背景を考えれば、今後の共通テストにも同様の考えが反映されていくことは間違いないでしょう。
一番極端な可能性は、共通テストの国語が[論説文+実用文+古文+漢文]の構成となることです。
つまり従来の<文学>の代わりに[論理国語]が受験科目となる可能性があると言うことです。
(現在その可能性を考えた高校側が選択科目を[論理国語>のみとし、[文学国語]が高校の授業から消えてしまうことを有識者が危惧し、それに対し文科省が「仕組みに対して誤解がある」と述べるという事態になっており、今後に関しては不透明な状況です。)
あくまで私個人の考えですが、すぐに受験から[文学]が消えることはないだろうと思っています。
それでも[実用文]が何らかの形で出題される流れは間違いないだろうとも思います。
国語力=“読解力”ではない…?
さてここまでの話で疑問に思われたことはありませんか?
“読解力”の低下を懸念して新たな指導要領を導入することとなり、その結果[文学]の代わりに[実用文]の授業が増える可能性を生み出した…?
「なんで読解力を付ける緊急の必要性を感じたのに、文学の授業を減らすんだ?」そう思いませんか?
一つの結論が導き出されます。
「文科省の考える“読解力”とは、従来の“文章を読んで理解する能力”では(もはや)ない」
この結論に基づいて今一度今年の共通テストを振り返りましょう。
「数学・国語そして英語において“情報処理能力”が求められていた」とお話をしました。
つまり、文科省の言う“読解力”とはイコール“情報処理能力”であり、今後は国語のみならず全てのテストに於いて、「読み、そして深く理解・解釈すること」よりも、「正しく読み、必要な情報を見つけ出すこと(またそれを利用すること)」が重視されていくと言えるのではないでしょうか。
これからの学習はどうしていけばよいのか
これまでは「国語が苦手」「国語力を付けたい」と言えば、「本を読め」と当然のように言われてきました。
そしてそのアドバイスを受けた子が言われた通り本を読んだとすると、そのほとんどが小説であったのではないでしょうか。
ですがこれからは小説を読んで培われた“読解力”をもってしても、必ずしも国語の点数を上げること、また他の教科のテストにおいてその力を活かすことが可能であるとは言えないのです。
今後は“読解力”を付けるためには、一つの長い小説を読むのではなく、新聞や情報誌など様々な項目のある文書に数多く触れる、そうした“読書”を意識的にしていかなければならないのです。
漠然とした表現になってしまいますが、「文字に意識的に触れ、目にした文字を読むのが当たり前である」こうした意識を持つこと、これが必要となっていくでしょう。
最後になりますが、ここまでの話は中学生に関係がない、ということは全くありません。
今までの基礎学・入試の問題を見ると、大学入試の傾向を意識した問題は数多く見られます。
大学入試で大きな変化があるとなれば、それが中学生のテストにも反映されることはむしろ当たり前のことだと言えます。
さてそれを踏まえてこれを考えてみてください。
「正しく読み取ることが必要であるのに、問題を読まずに解くなんて許されると思いますか?」
「問題を読んでなかった」なんてテストが終わったあとにへらへらしながら言う中学生、もう既に大学入試の失敗の可能性が見えていますよ。