高い畳を選べば、後悔しないのか?

畳の仕事をしていると、前にその部屋を施工した職人の仕事を見ることがあります。
そこで思うんです。
職人って、同じ仕事をしていても、考え方もやり方も本当に人それぞれだなと。
丁寧な人もいれば、早さを優先する人もいる。
細かいところまできっちりやる人もいれば、ある程度でまとめる人もいる。
一番わかりやすいのは「丁寧か、雑か」です。
でも実は、普通のお客様が見ても、その違いはほとんどわかりません。
下手な仕事は見ればわかる。でも、そこそこ上手い仕事はわかりにくい
経験が浅かったり、明らかに失敗している仕事は、見ればある程度わかります。
でも、そこそこ経験のある職人の仕事になると、ぱっと見ただけでは「いい仕事か、悪い仕事か」はわかりにくいんです。
見た目は普通に納まっている。
畳もちゃんと入っている。
それでも、実際に畳を上げてみると、
「あ、ここはごまかしてあるな」
というところが見えてくることがあります。
隙間の調整をしていない。
見えないところだから、そのままにしている。
本来ならもう一手間かけられるところを、省いている。
そういうところは、同じ畳職人だから気づけます。
「お、ここまでやるのか」と思う仕事もある
逆に、前任者の仕事を見て、
「うわ、めちゃくちゃ丁寧にやってるな」
と思うこともあります。正直、
「そこまでやるんか。おれはそこまでできねえな」
と思うことだってあります。
職人同士だからこそわかる、細かい工夫や気遣い。
そういう仕事を見ると、やっぱり勉強になります。
雑な仕事=悪い仕事、ではない
ここは少し大事な話です。
私は、雑な仕事がすべて悪い仕事だとは思っていません。
仕事には、予算もあれば納期もあります。
「とにかく安く仕上げたい」
「今日中に終わらせないといけない」
そんな条件なら、どうしても時間をかけられないこともあります。
丁寧に時間をかける仕事と、スピードを優先する仕事。
どちらが正しいかは、その仕事の条件によって変わります。
でも、雑な仕事は後で必ず見られる
ただ一つ、職人として怖いのはここです。
自分がやった仕事は、何年か後に別の職人が見ることがあります。
畳替えで私が現場に入って、
「あー、これは雑やな。どんだけ忙しい畳屋さんだったんだろう」
と思うこともあります。
そして、お客様から
「前はどこの畳屋さんでしたか?」
と聞かれる。
これ、地味ですが結構きついです。
良くも悪くも、前任者の仕事が話題になる。
つまり、仕事そのものが何年後かに
その店の評判を作るんです。
雑な仕事を残せば、それがそのままネガティブな宣伝になる。
職人だからこそ、他人の仕事から学べる
いい仕事を見れば、
「ここは見習いたい」
と思う。
残念な仕事を見れば、
「自分はこうならないようにしよう」
と思う。
これが、職人を続けていると面白いところです。
人の仕事を見ることで、自分の仕事も見直せる。
他の職人に見られても恥ずかしくない仕事をしたい
結局、私ができることは一つです。
次にこの畳を触る職人に、ダメ出しされない仕事をする。
完璧なんて無理です。
もっと上手い職人もいるし、
もっと丁寧な職人もいる。
でも、
「ここ、ちゃんとやってるな」
そう思ってもらえる仕事は残したい。
見えるところだけじゃなく、見えないところも。
何年後かに、別の畳職人がこの部屋に入ったとき、
「お、いい仕事してるな」
そう思ってもらえるように。
そのために、今日もちゃんと仕上げていくだけです。


