畳屋の“仕事の質”を見抜く、たった一つの質問

畳のメンテナンスには、「裏返し」「表替え」「新調」があります。
その中でも、費用を抑えやすい方法が「裏返し」です。
今使っている畳表をいったん外し、裏面を表にして張り直す。畳表そのものを新品に替えずに使えるのが、裏返しの特徴です。
ここだけ聞くと、「裏返しは、お得でいい方法だな」と思われるかもしれません。
私も、状態が良ければ、裏返しはとてもいい方法だと思っています。
でも、ひとつ知っておいていただきたいことがあります。
裏返しをすれば、必ずきれいになるわけではありません。
裏側まで汚れが染みていることがあります
一般に、畳表の裏側は表ほど日焼けしていません。
そのため、年数が浅く、傷みも少なければ、裏返すことでかなりきれいになることがあります。
ところが、水や飲み物をこぼした畳は、事情が違います。
表面だけの汚れに見えても、実際には裏側まで染みていることがあるのです。
これは、畳表を外してみないと分からない場合もあります。
「裏側はきれいだろう」と思ってひっくり返してみたら、裏側にもしっかりシミが残っている。
こうした状態では、裏返しをしても、期待したようなきれいな仕上がりにならないことがあります。
一生懸命拭いた跡が、かえって目立つことも
何かをこぼしたら、すぐに拭きたくなりますよね。私も同じです。
ただ、畳表の種類によっては、強くこすることで表面が白っぽくなったり、色が変わったりすることがあります。
「汚れを取りたい」と頑張った結果、そこだけ目立ってしまう。現場でも、そうした状態を見かけます。
畳に何かをこぼした時は、無理にゴシゴシこする前に、畳屋へご相談ください。
畳表の種類や汚れの状態に合わせて、扱い方を確認することが大切です。
裏返しでいけるかどうかは、状態を見て決めます
私は、裏返しができるかどうかを、年数だけでは決めません。
確認するのは、次のようなところです。
・畳表の傷み
・日焼けの程度
・シミの有無
・裏側の状態
・畳床の状態
裏返しで十分に使える畳もあります。
一方で、「これは表替えをした方がいい」と判断することもあります。
さらに、畳の土台である畳床まで傷んでいれば、新調した方がいい場合もあります。
ここは、いちばん安い方法を選べば正解、という話ではありません。
今の畳の状態に合った方法を選ぶことが大切です。
安く済ませることより、後悔しない選び方を
お客様から、「とりあえず一番安い方法で」と言われることもあります。
もちろん、それでいい時もあります。使えるものを、無理に替える必要はありません。
でも、裏返しをしたあとに「思っていたよりきれいじゃないな」と感じるくらいなら、最初から表替えを選んだ方が良かった、ということもあります。
私が大事にしているのは、今の畳に何をするのが、お客様にとって一番いいかということです。
費用だけでなく、仕上がりへのご希望も伺いながら、一緒に考えたいと思っています。
言われた作業だけをして、終わりにはしたくありません
お客様から「裏返しで」と言われたので、裏返しをする。
それで、依頼された作業は終わるかもしれません。
でも、畳屋が状態を見れば、「これは裏返しでは厳しい」と分かることもあります。
その時に何も伝えず、そのまま作業を進めるのは違うと、私は思っています。
状態を見て、
「裏返しでいけます」
「これは表替えの方がいいです」
「畳床も替えた方がいいです」
と、理由も含めてお伝えする。
それが、プロの仕事だと思っています。
畳の仕事は、張り替えて終わりではありません。
これから何年使うのか。
どこまで直したいのか。
ご予算はどれくらいなのか。
そこまで含めて考える。
私は、そういう畳屋でいたいと思っています。


