義援金に関する税務あれこれ
マイホーム購入時など一時に多額の資金が必要な場合に、親と子など特殊な関係がある者相互間(以下、家族間)で資金援助が行われることも多くあります。資金援助は貸借または贈与により行われますが、親族間では両者の区別があいまいな場合もあります。今回は、親族間の金銭貸借に係る税務上の留意点について概観します。
親族間の金銭貸借に係る税務上の留意点
国税庁においては、限られた人員などの中で適正かつ公平な課税を確保するため、実施調査以外にも納税者の自発的な納税義務の履行支援などを目的とした取り組みを、様々な機会を捉えて、多様な手法により実施しています。例えば、税務署が登記情報などから収集した不動産の取得者に対して、購入金額、支払金額の調達方法(借り入れ、贈与、預金、資産売却など)および共有者などの内容を尋ねる書面(いわゆる「お尋ね」)による紹介を行う事はよく知られています。これは、主として、その取得に伴う課税対象となる事実を把握することにより、申告が必要と認められた場合には、納税者の自発的な申告を促す行政指導の一環であると考えられます。このような書面による紹介に対して、例えば、支払金額の調達方法について、親族からの借入金がある旨を回答した場合、その借入金について、贈与税の課税対象となるかどうかその詳細を確認する必要があることから、税務署への来署依頼などにより、さらなる内容の説明を求められる場合もあります。
金銭貸借であることから、当事者間では贈与税の課税対象になるという認識がないにもかかわらず、税務上は贈与として取り扱われること(予期せぬ贈与課税)は、正しい知識をもつことで予防することが出来ます。
親族間で金銭貸借を行う場合、金銭消費貸借契約書など書類を作成することは比較的認知されています。しかしながら、税務(贈与税)の観点からは、書類の有無よりも借入金の返済条件や事後の借入金の返済状況が重要です。例えば、借入金の返済条件について、その金銭を借り受けたものの収入状況から、明らかに返済できないような返済条件とした場合には、事実上、返済されることが予定されていないものと考えられ、形式上は貸借であっても、実態は贈与ではないかとの疑義が生じます。
さらに、借入金の返済状況について、契約に基づいて返済が行われていない、途中から返済が滞っている、または返済状況が確認できない(現金手渡しで返済しているなど)という場合もあります。このような場合にも、形式上は貸借であっても、実態は贈与(または返済期間中の債務免除による贈与)ではないかとの疑義が生じます。