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「在宅医療における薬剤師の疑義照会の実際」 ― 医師との関係性の中で考える判断 ― ― 在宅医療アラカルト⑪ ―

栗原憲二

栗原憲二

テーマ:在宅医療、薬剤師、配薬

富士市・富士宮市で在宅医療に携わっている薬剤師の栗原憲二です。

在宅医療の現場では、処方内容に対して確認や調整を行う場面が少なくありません。
 いわゆる疑義照会です。

薬局の窓口で受け付ける処方箋と比べると、在宅医療における疑義照会は、相対的に発生頻度が高いと感じることがあります。

本稿では、その背景と実際について整理してみたいと思います。






なぜ在宅では疑義照会が増えるのか


在宅医療において疑義照会が多くなる理由は、一つではありません。複数の要因が重なり合っています。

まず挙げられるのは、情報の非対称性です。

薬剤師が訪問して患者様から詳しくヒアリングを行うと、

・本来医師に伝えるべき内容が共有されていない
・症状や困りごとが十分に表現されていない

といったケースに出会うことがあります。

在宅では、医師が患者様の自宅に訪問するという特性上、自然体の患者様が医師に伝えるべきことが曖昧なまま診療が進むことがあるのかもしれません。



入力環境の違いが生むリスク


もう一つの要因として、処方入力環境の違いがあります。

病院では、

・固定された端末
・整備された環境

の中で処方が入力されます。

一方で在宅では、

・モバイル端末
・患者様ごとの異なる環境

で入力が行われます。

そのため、ヒューマンエラーが起こりやすい条件が生まれます。

具体的には、

・用量の入力ミス
・日数のずれ
・単位の誤認

などです。



残薬調整と日数のずれ


在宅医療では、残薬調整が頻繁に行われます。
 薬剤師が訪問時に、

・残薬を回収
・服薬状況を確認

する中で、処方日数の調整が必要になる場面も多くあります。

しかし、過去の調整がそのまま次回処方に反映される

ことで、

・日数の入力ミス
・意図しない処方延長

が生じることもあります。
 このような場合、疑義照会による確認が不可欠になります。



重症患者における処方変更の頻度


在宅医療では、

・慢性疾患の進行
・急性増悪
・全身状態の変化

などにより、

処方内容が頻繁に変更されることがあります。

変更が多いということは、その分だけ入力・伝達の負荷が高まるということでもあります。

その結果として、意図しない処方内容が生じる可能性も高まります。



在宅特有の薬剤制限


在宅医療では、輸液を含む処方も少なくありません。

しかし、

・薬局から払い出し可能な薬剤
・払い出しが認められていない薬剤

が存在します。

この区別は、制度上の制約によるものですが、現場では見落とされることもあります。

そのため、疑義照会を通じて適正化を図る必要があります。



疑義照会は「対立」ではない


疑義照会というと、医師に対して薬剤師が明日は異なる意見をする行為と捉えられがちであるかもしれません。

しかし在宅医療においては、対立ではなく「調整」としての意味合いが強いと感じています。

・患者様の状態
・実際の服薬状況
・生活環境

これらを踏まえて、処方の意図をより適切な形に整えていく。その過程が疑義照会です。



医師との関係性の中での判断


疑義照会の質は、医師との関係性にも大きく影響されます。

・伝え方
・タイミング
・情報の整理

これらが適切であれば、円滑なコミュニケーションが成立します。

一方で、一方的な指摘になってしまうと、意図が十分に伝わらないこともあります。

そのため、相手の立場を理解した上での対話が求められます。

そのために処方医の処方の特性や、処方医の考え方をしっかりと処方箋から汲み取ったり、往診同行につくことで実際の処方の現場に普段から触れておくことが有効です。



薬剤師の専門性とは何か


在宅医療における薬剤師の専門性は、単に薬の知識を持っていることではありません。

・現場で得た情報
・患者様の実際の状況
・処方の背景

これらを統合し、適切な形で医療に反映させる力にあると感じています。

疑義照会は、その象徴的な行為の一つです。



まとめ


在宅医療における疑義照会とは、単なる確認作業ではありません。

それは、現場の現実と処方の意図をつなぐプロセスです。

・情報を補い
・誤差を修正し
・より良い医療へと近づける

その積み重ねの中で、在宅医療は成り立っています。
 そしてその中心には、医師と薬剤師の信頼関係があるのだと感じています。





Practical Aspects of Prescription Inquiries in Home Medical Care

― Judging Within the Relationship with Physicians ―
― Home Care À La Carte ⑪ ―

I am Kenji Kurihara, a pharmacist engaged in home medical care.

Prescription inquiries occur more frequently in home care than in pharmacies.



[[Table of Contents]]



Why Inquiries Increase


Information gaps often exist.

Patients may not fully communicate with physicians.



Environmental Factors


Mobile input increases risk of errors.



Residual Medication Adjustments


Past adjustments can affect future prescriptions.



Frequent Changes


More changes increase error probability.



Regulatory Constraints


Some drugs cannot be dispensed at home.



Inquiry Is Coordination


It is not conflict, but alignment.



Conclusion


Inquiries bridge reality and prescription intent.

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栗原憲二
専門家

栗原憲二(薬剤師)

ふじやま薬局

店舗は整形外科並びに内科、透析医院の処方の授受を受けているため、普段から幅広いお薬を取り扱っています。在宅では、個人宅並びに施設担当。富士・富士宮地区を幅広く車で訪問させていただいております。

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