カープ愛で学ぶ ー1人から目を切らない大切さ
富士市富士宮市にて在宅医療に携わっている薬剤師の栗原です。
今日は『薬屋のひとりごと』とのコラボで盛り上がっているお薬手帳について書いてみようと思います。
目次
Ⅰ.マイナンバーカードに紐付けられたお薬情報
マイナンバーカードと保険証が紐づけられるようになって、皆様が病院にかかった時に処方されるお薬の情報が一元的に管理できるようになりました。
マイナンバーカードがあれば、それを薬局の受付で提示することで保険証として活用することができます。やり方は簡単(店員も丁寧に説明させて頂きます)。
マイナ保険証の活用によって、診療情報や健康診断データなどと一緒に処方情報も電子データとして管理できるようになりました。この管理は、自主的に皆様が選択して行なっているのではなく、マイナ保険証を使うことで自動的になされるようになっているものです。色々と意見はあるでしょうが、このデジタル化時代には避けられない変化であると言えます。
II.お薬手帳アプリの登場
最近はマイナ保険証を介した電子データ以外にも、薬局から処方情報をQRコードとして提示してもらい、皆様の側でお薬手帳アプリを活用して処方薬情報をデータ化することもできるようになりました。とても優れたアプリも登場してきており、お薬の情報も詳細に閲覧することが出来ます。紙のお薬手帳は、アナログの良さもありますが、うっかり家で無くしてしまったり、どこかで紛失して個人情報が外部に漏れる危険性があったりと、気がかりな点も否定できません。
お薬手帳アプリも、情報が外部に漏出する危険性は隣り合わせですが、うまく管理すれば紙のお薬手帳よりも利便性が高く、情報活用に幅が生まれます。自身の血圧や1日の行動量などをスマホなどの機器を用いて紐づければ、理想的な健康管理ツールの一つとなるのは間違いありません。
Ⅲ.まずはお薬手帳とは何か?を理解することが大切
かような時代ですから、紙で出来たお薬手帳はもういらないのでは?と思われる方もそれなりにいらっしゃると思います。
今後は、おそらくは紙のお薬手帳もその働きを終える時代がやってくるのだと思います。
でも、そもそもお薬手帳は、残念ながら今の段階でも十分に、その持っているポテンシャルは生かされていないのではないか?と私は薬剤師の1人として感じています。
以下、お薬手帳の有効活用のためのポイントを紹介していきたいと思います。
Ⅳ.お薬手帳活用のポイント
1.お薬手帳を通して薬剤師の知恵を利用する
何よりもまず、お薬手帳は、過去に遡って病院から処方されたお薬を一覧することのできる道具です。
ほとんど病院にかかることのない人も一定数いらっしゃいますが、1年に数回といったレベルで病院にかかられる方についても、それは病院や薬局側にとってはとても貴重な情報となります。
お薬手帳の価値は、その利用者にとってはそれほど大きくないと感じるかもしれません。「自分が飲んでいるお薬は自分で分かっている。だからお薬手帳がなくても自分は問題ない」。・・その通りかもしれません。
でも、もしもその情報がお薬手帳という形で薬剤師というお薬の専門家の目に触れる形になっていれば、それは皆様にとって、さらに価値を生じさせるものとなるのです。
「自分は対してお薬を飲んでいないから、お薬手帳はいらないのではないか?」と感じるかもしれません。でも、たとえ飲むお薬が少ないとしても、そのことさえも、お薬手帳という形で管理されていることで、薬局側にとって、それはそれで大変重要な情報となるのです。
お薬手帳によって薬剤師がある情報は、「これこれのお薬を飲んでいる」という情報をポジティブ(積極的な)情報であるとするなら、「他のお薬は飲んでいない」という情報は、ネガティヴ(消極的な)情報ということが出来ます。そしてまさにこのこのネガティブ情報も、薬剤師にとってとても大切な判断材料になるのです。
単にお薬を飲んでいない、ということではなくて、お薬手帳を管理運営した上で「飲んでいない」となれば、その方は、「お薬を飲まない」ということについての積極的な意思を表明することになります。つまり単に健康体であるというだけでなく、健康についての明確な意識を持った上で服薬の現状がないという状態にあるということなのですから、その人は、何もしないで健康でいられる人よりも、より健康に近い人であると感じます。
果たしてその人が病院に来られて処方されるお薬が、お薬手帳のデータから見て、その患者にとって初めてのお薬なのか?それとも処方歴があるものなのか?といったことだけでも薬剤師にとってはとても大きな情報なのです。
2.既往歴、アレルギー歴、副作用歴などを記入する
お薬手帳を開いて最初のほうのページには、既往歴やアレルギー歴、副作用歴などを記載するページが設けられています。
「既往歴」とは、現段階ではその病状は落ち着いていたり治療済みの疾病のことです。「アレルギー歴」とは、花粉症のみならず食べ物一般、動物などのアレルギーも含みます。「副作用歴」とは、お薬を飲んで何か体調がおかしくなったり気分が悪くなったりといった、お薬を飲むことで生じた好ましくない体の反応です。
こういったことを記載してくださっていれば、それを見て薬剤師は、この度の処方内容で問題ないかを検証することができることになります。
お薬の成分は、たとえそれらが全く別の名称であっても、大きくグループ分けすると仲間に入ることがあります。成分的に仲間であるということは、副作用として現れる症状も似てくることが多いのです。
ですから、全く別物として受け取ったお薬が、副作用歴のあるお薬と仲間であるといった場合を避ける必要がありますが、それを判断できるのはお薬について専門的な学びをしている薬剤師なのです。
3.実はお薬手帳に記載すべきことは多くある
お薬手帳の中には、「血液型」や「かかりつけの病院名」「自宅連絡先」「平時の血圧」などを記載する欄が設けられているものがあります。
何か緊急事態が生じて、もしも本人が医師や医療者に対して明確な意思表示が出来ない事態が生じた場合でも、これらの記載があるお薬手帳は医療側にとってはかけがえのない情報になります。
マイナンバーカードに紐付けられる情報にはお薬の情報のみならず、診療情報、健康診断の情報なども含まれています。よって、マイナンバーカードの活用によって、今後2、3年のうちには、かなり医療機関側にとって有益な医療系の情報が整うことになります。
現段階では紙のお薬手帳からの移行期であることは間違いありませんが、この期間に、より有効なお薬手帳の活用方法をぜひ学び取って頂きたいと思うのです
お薬手帳には、薬局で配布されるお薬手帳シールの他にも、日々の血圧を空欄に自由に書き込んでいただいても良いですし、大切なこととしてはドラッグストアで購入したお薬についても記載して頂くということです。
一般的にはドラッグストアで手に入れることのできるお薬は、処方箋を通して受け取ることのできるお薬よりは効果は低いと言えるのですが、それでも間違った使用方法をすると大変な問題を引き起こすことがあります。
複数のお薬を誤って併用したり、本来そのお薬が対象としている症例とは違う症例に使用したりすると、治りが遅くなってしまうでしょう。
お薬の効果は誰に対しても同様のものを期待出来るのですが、人によってお薬に対する感応性が異なっているため、ドラッグストアで購入したお薬といえども、決してその副作用を軽視することはできないのです。
体重を書き込んでも良いです。結局、お薬手帳を自分の健康管理の上で様々に活用する方法は色々とあるということなのです。
4.お薬手帳を自分でカスタマイズしてみる
気に入ったお薬手帳がないのであれば、100円ショップで適当なリングノートを購入し、それをお薬手帳の代わりに代用して頂いても全然問題ありません。処方薬のシールを貼り付けたら、その後の服用後の自覚症状を書き込んでくだされば、後々とても有益な情報となります。
コレステロールのお薬を飲んでいるとしたら、定期検診で得られたLDL値を記入していただいても良いです。糖尿病のお薬を飲んでいるとしたら、受診時に継続的な血中の血糖値の平均を現すA1Cを記入して頂くととても良いと思います。献血を定期的にされている方であれば、その都度、献血された血液の血液データが郵送されてきたり、献血アプリで確認できたりしますので、それを記入されても良いのです。
お薬の内服や外用剤の使用は、医療における外科的処置とは少し違いますが、治療行為の1つであって、それによって検査値がどのように推移するかを照らし合わせることで、お薬の効果も明確になります。それでも数値が良くならなければ、他の薬剤の提案も可能となるでしょう。
つまりはお薬手帳を活用すれば、自身の健康についての情報を一元管理するための手段となり得るということなのです。
お薬についての情報は、処方薬と一緒に渡される「お薬情報」を一読して、そのポイントをお薬手帳に記載していただくことをお勧めします。
また処方薬を薬局で受け取るとしたら、薬剤師から服用上のアドバイスや注意点を必ず伝えられますので、それをお薬手帳に記載するのも良いと思います。
当然ながら、今はいくらでもお薬の情報について自分で調べることのできる時代です。Google検索はもちろんのこと、chatGPTのようなLLMを活用すれば、インターネット上の知識の集約体を、分かりやすい形で閲覧することも出来るわけです。二百字程度に要約してもらってそれをプリントアウトしてお薬手帳に貼り付けても良いと思います。
お薬手帳は医療機関側にとってとても有益な情報源ですが、それ以上にその所有者にとって第一義的に活用されなければならないものです。そしてその活用については、皆様の知恵と工夫にかかっている。
この記事を参考にして、よりお薬手帳を活用して行っていただければ、医療者の1人として嬉しく思います。