”言語化”スキルを磨く ~マイベストプロコラム執筆で得たノウハウ~
このカテゴリーは、弊社が関わるセミナー・イベントをご紹介するものです。チラシ等ではお伝えすることが難しい、セミナー・イベントの企画意図や思いなどをご紹介します。
IT革命のことを思い出してみる
インターネットを通して、消費者や企業は世界中の情報を簡単に低いコストで入手できるようになり、それによって経済・社会に大きな変革が起きたことをIT革命と呼んでいます。総務省の情報通信白書(令和3年版)では、IT革命に関連する施策を次のように説明しています。『1990年代後半、コンピュータや通信技術の急速な発展により社会、経済の大きな変革が世界規模で進行していた一方で、我が国のICTの取組は遅れている状況にあった。そこで、2000年11月には、内閣に設置されている情報通信技術戦略本部がIT基本戦略を決定するとともに、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)が成立している。このIT基本法に基づき、2001年1月には内閣に高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)が設置され、IT国家戦略として「e-Japan戦略」が公表された。これにより、ICT化に向けて国全体として推進するための体制が整備されるとともに、ICT化による実現するビジョン等を定めた国家戦略が策定されている。続いて、同年3月には、e-Japan戦略を具体化した施策を示す「e-Japan重点計画」が、6月には次年度の行動プログラムを示す「e-Japan2002プログラム」が公表された。e-Japan戦略では、5年以内に世界最先端のIT国家となることを目標に掲げ、IT革命の推進に不可欠な超高速ネットワークインフラをはじめとする基盤整備を迅速に進める必要があるとして、4つの重点政策分野として「超高速ネットワークインフラ整備及び競争政策」、「電子商取引と新たな環境整備」、「電子政府の実現」及び「人材育成の強化」を示した』。国としてIT化を強力に後押ししていたことが分かります。
IT革命当時の私は、現場で奔走するエンジニアでした。2000年問題(西暦2000年になるとプログラムによっては、コンピュータが誤作動する可能性があるとされた年問題)の対応や巨大な電子カルテシステムの開発に携わるなど、忙しい日々を過ごしていました。IT化機運が高まったことも手伝って、ITシステム導入の提案を受け入れていただけるお客様も増えました。この時の決め台詞は”ITを活用して業務を効率化しましょう”とか”IT化して生産性を上げましょう”といった類でした。「他社がITを導入してうまくいっているようだから、ウチにもITを導入することにした」と言われるお客様も多かったです。しかし暫くして「ITを導入したけれど、効果が実感できない」とか「ITを導入したけれど、思ったほどの効果が得られていない」という反省の声をセミナーなどで耳にするようになりました。心配になってお客様にそれとなく聞いてみると「ITを導入して良くなったと思うよ。でも経営指標に現れているかというと微妙だね。」という声もありました。当時の私は、IT技術は理解していましたが、経営については素人でした。IT技術が経営にどのように活かせるかという発想がそもそも無かったかも知れません。
経営層がIT導入に対する抵抗がなく、それなりの予算と時間があれば、ITは簡単に導入できます。しかし、それで経営にITを活用していることになるかというと、必ずしもそうではありません。経営にITを活用する目的は、現場の顕在化した課題の解決ではなく経営課題の解決です。経営が目指す方向や戦略を実現する手段としてITを活用することこそがIT経営の本質です。
昨今のDX推進機運
DXは、2004年にスウェーデンのウメオ大学に所属するエリック・ストルターマン教授が提唱した"ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるという社会の変化を表した概念"が起源だそうです。日本では、経済産業省が2018年5月に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設置し、2018年9月に同研究会が発表した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』で、あらゆる産業において、新たなデジタル技術を利用してこれまでにないビジネス・モデルを展開する新規参入者が登場し、ゲームチェンジが起きつつあり、こうした中で、各企業は、競争力維持・強化のために、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)をスピーディーに進めていくことが求められているという課題があると説明しました。その中で、DX を加速していくために、DX を実現すべく IT システムを構築していく上でのアプローチや必要なアクションあるいは失敗に陥らないために失敗の典型パターンを示した「DX を推進するための新たなデジタル技術の活用とレガシーシステム刷新に関するガイドライン」(DX 推進システムガイドライン)を策定するとし、2018年12月に公表しました。これ以降、新型コロナウィルスの流行に伴い再討議され、2022年には「デジタルガバナンス・コード2.0」として改訂(現在も改定前の「DX推進ガイドライン」と呼ばれていることがあるそうです)され、現在に至ります。デジタルガバナンス・コード2.0では、DX化の最終的な目標とすべきゴール地点を描き、それまでのプロセスを段階に分けて解説しています。
ところで、独立行政法人中小企業基盤整備機構が公表した「中小企業の DX 推進に関する調査(2023 年)」によれば、DXを理解している(「理解している」「ある程度理解している」)企業は 49.1%で、前回調査(2022 年 5 月)の 37.0%と比較して 12.1 ポイント増加しているとしています。一方、DXに取り組むにあたっての課題は、「IT に関わる人材が足りない」が 28.1%、「DX 推進に関わる人材が足りない」が 27.2%と続いていて、「IT に関わる人材が足りない」は前回調査よりも 3.2ポイント増加しているとしています。DXの具体的な取組内容のトップ3は、「文書の電子化・ペーパレス化」「ホームページの作成」「営業活動・会議のオンライン化」だそうですが、業務プロセスの変革が伴っているかが少し気になるところです。
最近のITベンダー等の謳い文句では、ほぼ確実にDXという言葉を使っているように思います。そのような影響もあってか、世の中では、DX=業務のデジタル化 と解釈をされているように感じます。今の世の中は、技術が進歩し、デジタル化は必然と言っても良い環境にあります。デジタルトランスフォーメーションのトランスフォーメーションは、変化,変形,変質という意味ですが、DXにおいては、デジタル化よりも変化、変形、変質に力を入れる必要があります。
DX化のチャンス到来
昨年は企業の法改正で改正電子帳簿等保存法が話題になりました。電子帳簿保存法は、帳簿や決算書、請求書など国税関係帳簿・書類を、一定の条件を満たして電子化して保存することを認める法律です。改正電子帳簿等保存法には「電子帳簿等保存制度」「スキャナ保存制度」「電子取引保存制度」の3つの制度があります。様々なお客様と電子帳簿保存法について話をしてみると、最近は電子メールに添付する形で電子的に請求書や領収書を送ってこられる業者さんが増えていて、それを最低でも台帳を作成して検索できるようにして保管しないといけないので、総じて”仕事が増える”という印象をお持ちのようでした。確かに、今の業務をそのままに改正電子帳簿保存法に対応しようとすると業務プロセスに作業を追加することになりますので、面倒臭いと受け止めてしまいがちです。ここでポイントとなるのは”今の業務をそのままに改正電子帳簿保存法に対応”という前提です。むしろ、この法改正をきっかけにして業務プロセスを改正電子帳簿保存法対応を前提にゼロベースで見直し、入力が電子データだと進めやすい自動化やデータ連携(二度打ち無し)等を活用することで大幅に業務効率化するとともに作業ミス低減等を狙うべきではないでしょうか。
ところで、DX化は目的ではありません。DX化は手段であって、実現したいのは経営目標であり、解決したいのは経営課題です。経営課題を解決する方法を考え、今どきは当たり前となっているデジタル技術を活用することで結果的にDX化できたというのが本来の姿であると考えています。
弊社共催セミナーのご紹介
上述の「中小企業の DX 推進に関する調査(2023 年)」でDXに取り組むにあたっての課題としてあがっている「IT に関わる人材が足りない」を掘り下げて考えてみると、業務プロセスについては熟知しているが、業務プロセスを〇〇〇にしたいけどITで実現できるか分からないとか、どのような製品を組み合わせればできるのかが分からないという話になるのではないでしょうか。そのような方々に朗報です。弊社では業務改善を目的としたITソリューションのご紹介、すぐに改善効果が出せるようなITツールのご紹介等を含むセミナーを開催します。このセミナーにご参加いただいて、自社の業務改善をイメージしていただければ幸いですし、弊社が業務改善のイメージを膨らませていただくサポートができれば良いと考えています。
まとめ
IT革命真っ只中の時代、もしかしたら”IT化”という言葉が持つイメージを利用して、お客様に対してとても定性的な効果を謳って強引にシステム導入を迫っていなかったかと反省していた時期がありました。今から20年以上前のことです。その後、色々な経験を積んで、効果を設計しようという発想になり、施策に定量的な指標と目標を設定し、経営課題解決と施策の因果関係を明らかにするというプロセスを踏むように努力しました。施策を踏まえた新業務フローで業務を進めていき、指標が目標を達成しない場合は、その原因を追求して次の施策を実施するという流れ(PDCA)です。今ならお客様のDX化を強力にサポートする自信があります。ただサポートの結果、最終的にDX化になっていない可能性もありますのでご注意ください。なぜなら、DX化は手段であって目的ではないからです。DX化の目的は”経営課題解決”であるべきです。