精神分析は精神科学に基づき心の病を癒し人間の謎を解き明かす第一章-3

大澤秀行

大澤秀行

テーマ:人間とは何か



第一章 生命の始まり 『3_無意識』


心理学とは砂の城、幻想の体系

現在の地球及び人類の窮状を救えるのは、一人一人の人間の心掛け、心構えしかない。一人一人の心の持ちようにより、地球の運命も人類の運命も決まってしまう。
ここに来て、精神の科学が必要となる。即ち「人間の心とは何か」との問いに答えられるのは、精神の科学だけであるから。

既存の心理学や哲学ではそれに答えられない。何故なら、科学ではないから。
感情や思考、価値や定義、文化や生活様式や行動のパターンや生活論において、況や血液型論に至って、最早これまでの心理描写は単なる想像の産物でしかない。何らかの大乗も科学的根拠も持たず、仮設の積み重ねでしかない。

それは唯の砂で作った城の様な体系である。人間が普遍的に共通して共有している「心」という砂粒のかたまりを不文律とした幻想の体系である。


対象無き言語、メタ言語

フロイト、ラカンは言語学を基に、言語という分子と文字という原子の化合物としての文章をコンテキスト(文脈)として人間の存在を意味と形式、欠如と欲望において弁証法によって構築した科学の体系なのである。

そのために「心」という単語は出てこないし、使わない。人を表す心的言語、即ちメタ言語で「自我・自己」と表す。メタ言語とは、「対象無き言語」のことである。

自我と言って、それが指し示す物はなく、自己と言ってもそれを表す形は存在しない。「優しい心」と言っても、その優しいはどこにも無い。その人の表情、振舞い、態度、言葉使いと言っても、それは目に映る一瞬の姿であり、優しさの形ではない。それは彫刻でしか表せない。
しかし、日常生活はストップモーションで把えることはなく、すべての事は流れている。行く川の流れは常に絶えず、決して元の水にあらずが現実である。


complex(複合観念)

我々は、時の流れの中で、見たままを記憶するのではなく、映像に加工の手を加え、額縁の中に入れて、内面の記憶野に保存しているのである。この様な機能としかけを心的作用と言う。

明らかに人は五知覚で構成しただけの世界をみて、体験して生きている訳ではない。時に時間を止め、空間を区切って、それに感情や言葉をつけ、記憶保存している。それをcomplex(複合観念)という。

この概念はフロイトの弟子のユングが定義したものである。心的作用が創り出した「心のアルバム」の様なものと考えれば、判り易いかもしれない。人はそのアルバムを折に触れ、何かの拍子に振り返ってみるのである。

過去への郷愁というが、そんなノスタルジーを持っているのが人間である。人はそれを何度も何度も繰り返す。訳もなくみてしまう。それをフロイトは反復強迫と言った。

繰り返される過去への逆行を退行という。何故そうしてしまうのか。それは今が苦しく、現実逃避の一手段として行う。ならば、楽しい事や、懐かしく無邪気な時の場面がいい。何故なら、それは癒しであり、安心であるから。

心的作用:無意識とは


人はこうして自己治癒の試みとして、いくつもの方法を持っている。この作用を自己防衛機制という。
戻る地点は心の要請から、ほぼ同じ地点と予想される。何故なら、確かに癒される場面はそれほど多くなく、限られているからである。この地点をフロイトは固着点と言った。
そうして、何の脈絡もなく固着点に遡行する訳ではなく、理由あって間違いなくその地点に辿り着けるということの確かさを支えている意識の働きを、フロイトは「無意識」と言った。

人間に共通して抱かれている心的作用は、「反復」と「無意識」と「欲」ということになる。そこに行きたいと強い衝動を「欲動」と名付けた。この三つに分析場面で生じる「転移」を合わせ、ラカンは精神分析の四基本概念と言った。

1-2『精神の科学の誕生』⇦ ⇨ 1-4『人類は享楽を目指して生きよ』


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大澤秀行
専門家

大澤秀行(精神分析家)

合同会社LAFAERO1(ラファエロワン)

精神分析家として34年の臨床実績があり、現在もメールや電話も合わせると、一日平均10名の精神分析によるセラピーを行っている。

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