防犯は犯罪を防止するだけでは未完成 ≪歩み/その1≫
安全と安心にお金は必要!?
日本は、世界各国から注目を集める法治国家です。しかし、関心が寄せられるのは法律が整備され、法律を守る従順さではありません。どんな時でも冷静さを失わず、思いやりの行動をする国民性です。では、なぜ防犯対策に高額な費用が掛かると感じるのでしょうか。
防犯対策でよく知られているのは、鍵や防犯カメラ、防犯ブザーや携帯端末など道具を利用したもので、即効性を期待したものばかりだからです。しかし、どれも決め手に欠ける感が否めず、不安が増すばかりではないでしょうか。何故なら、犯罪者がそこに居ることが前提の対策だからです。
防犯対策には4つの手法と手順があります。答えを急ぐばかりに、最後の手法である「被害対象の強化」だけが注目され、残り3つの犯罪者を近づかせない対策は殆ど施されていないことが実情です。
犯罪者の嫌う環境を整備することが優先
犯罪者の心理には、欲求を抑えられない、楽をしたい、捕まりたくないなどが挙げられます。どれも自分勝手な考え方で、規範意識が欠如しているとも言えます。また、自分勝手な分、孤独を感じている犯罪者も少なくありません。みなさんは、CPTED(セプテッド)/防犯環境設計をご存知でしょうか。犯罪が発生する物的な環境や状況に着目した犯罪予防の手法で、物的な環境を適切に整備・管理し、効果的に利用すれば、犯罪の機会を減らし、犯罪不安を軽減すると共に社会生活を向上させるというものです。つまり、規範意識を形にすることで、犯罪者を近づかせない手法です。
防犯環境設計/CPTED
①監視性の確保
見張りのような視線ではなく、自然な視線の確保を指します。
②領域性の強化
コミュニティ-の形成を促進させ、縄張りを意識させます。
③接近の制御
犯罪者の動きを意図的に制御することで、接近を妨げます。
④被害対象の強化
住宅ではドアや窓の強化、人的には防犯ブザーや護身術などです。
写真は、昨今見かけなくなった「井戸端会議」の様子ですが、実はこの女性たちのおしゃべりが地域の安全を守っていました。道端に人が集まることで、人の目が「監視性の確保」を担い、おしゃべりが「領域性の強化」を作り出し、通報される恐れが「接近の制御」を促します。つまり、「井戸端会議」は、犯罪者が嫌う「捕まってしまう」を連想させる、効果的で費用の掛からない防犯対策の1つです。
人が作り出す危険は人の手で防ぐ
核家族化が進み、生計の担い手が不足することで留守宅が増え、プライバシーの保護が優先されることで、情報の共有化が遅れる現代社会は、犯罪の温床と言っても過言ではありません。頻発する凶悪犯罪は、行き過ぎた行為への警鐘なのかも知れません。
ご近所や道ですれ違う人と交わす挨拶、道端の吸い殻やゴミ集積所の清掃、空き地に茂った草刈、破損した公共設備(街灯など)の修繕や交換などは、犯罪者の嫌う規範意識の表れです。また、地域住民の協力で行うことがコミュニティの形成を促し、野外活動が表現の場となって、犯罪者を遠ざけます。
このような地域で取組む活動は、費用が掛からず、有効的な防犯対策です。そして、継続することが最も重要で、力まず、焦らず続けることが肝心です。また、美化運動や交通安全などと合同で活動することも、続けるための秘策です。
犯罪は、人が作り出す危険です。物や道具で一長一短に解決できるものではありません。地震や水害など自然災害と違い、日々の生活習慣、ちょっとした気遣いや思いやりで減らすことのできる危険です。¥0-からの防犯対策を今日から始めてみませんか。