通学路に潜む危険と安全対策
子どもを守る親子のコミュニケーション
不審者や声かけ情報は、子どもたちが発信する注意報です。耳を塞ぎたくなるほど賑やかな子どもたちのおしゃべりですが、時に重要な情報が含まれていることがあります。
核家族化や共働きなど、子どもとの接点がなかなか見いだせない家庭も少なくありません。しかし、補うための道具は溢れるほどあります。上手に活用することが大切です。また、子どもたちの情報発信に、必ず応えることが重要です。そして、答えを与えるのではなく、一緒に考えることが最も重要です。
ヒヤリ・ハットとハインリッヒの法則
今年1月に群馬県で発生した「小4少女連れ去り未遂事件」の被害少女の機転は、親子(家族)のコミュニケーションが作り出した賜物と言えます。犯行者の「疑わしい事実(誘い文句)」より親子(家族)の繫がりが勝った事例で、見習わなければなりません。
5,000件余りの労働災害を検証して得られた「ハインリッヒの法則」は、科学警察研究所(通称:科警研)の調べで、犯罪現場にも当てはまると考えられています。「ハインリッヒの法則」とは、1件の重大な事故や災害の背後には、29件の軽微な事故や災害が起こり、300件の「ヒヤリ・ハット(傷害の伴わない災害)」が起きていたとするもので、事前の予防で重大な事故や災害は防げることを意味しています。子どもを狙う事件現場に当てはまると、1件の連れ去り事件には29件の未遂、300件の不審者や声かけ事案が発生していたことになります。つまり、不審者や声かけ情報は、真偽に関わらず通報し、多くの地域住民が共有することで、警戒心が芽生え、犯行の抑止に繋がるということです。地域住民の警戒心は、目に見えないものであっても、犯行を知られたくない者にとっては、敏感に感じるものです。その心情が、手口(子どもたちが1人でいる時を狙う)に表れています。また、防犯活動を通して最も懸念するのが「真偽に関わらず通報する」ことです。
警戒心は教えずに気づかせるもの
子どもたちの防犯教育でよく得られる声が、家族に話さないです。理由は「信じてもらえない」、「他人を疑ってはダメ」「もう一度良く考えてみて」と注意されるなどです。経験の少ない子どもたちの訴えですから、真偽を確かめるのは当たり前のことです。しかし、情報の収集と真偽は別なことで、集められる情報は真偽に係らず多いほど良いのです。情報は、数で大きな差が生まれ、多ければ警戒心が増し、少なければ無関心(知らない安心)を招きます。子どもたちに何も起こらなくても、地域住民の「警戒心」は、犯行を企む者にとって同じ作用があり、私たち大人を狙った犯行の抑止効果も期待できます。
子どもたちの防犯教育で最も必要なのは、答えを与えずに気づかせることです。答えは時の経過と共に忘れられますが、気づきは忘れられるものではありません。学校で学んだ方程式や歴史は忘れても、気づいた後悔は忘れません。また、気づきには行動が伴うことを忘れないでください。気づきを利用した防犯教育は、犯行者に出会ってしまった時に、迷いのない回避行動として役に立ちます。
子どもが頼れるのは家族だけです。凶悪な犯行から守るために、会話を増やす、一緒に考える、気づき気づかせるなど、コミュニケーションを充実させることを忘れないでください。