マナーだけではない「ながらスマホ」の危険
「知らない」と「関心の分散」が最も危険
私の住む埼玉県では、日々警察に寄せられる不審者・声かけ情報が、年間2,286件(前年比+119件)です。また、減少傾向にある犯罪の中に於いて、強制わいせつと自動販売機ねらい(何れも街頭犯罪に分類されます)が増加しました。そして、著しく増加したのが振り込め詐欺です。認知件数1,158件(前年比+458件)、被害総額32億3,816万円(前年比+13億7,609万円)となり、40ポイント前後の増加になりました。
※各数値は、平成27年1月埼玉県警察発表の26年度中の暫定値です。
日常生活では、殆ど目にしない情報だと思います。また、気になる情報(犯罪)は、家族構成や年齢、性別によって、個人差が生じると思われます。しかし、殆ど目にしない(=知らない)と気になる情報の個人差(=関心の分散)にこそ深い落とし穴があります。
情報の共有には犯罪の抑止効果あり
犯罪に至らない不審者や声かけ情報には、重要な意味が隠されています。科学警察研究所(通称:科警研)の調査で、子どもたちが「ヒヤリ」「ハッ」とする危険な出来事は、通報を大きく上回る数で発生している事が解っています。この事実は、ハインリッヒの法則(1件の重要事案には、29件の軽微な事案と300件のヒヤリハットが隠されている)を裏付け、「ヒヤリ」「ハッ」との段階で対処しなければ、軽微とはいえ被害者が生まれ、次第に重大事件の発生に繋がって行きます。このように、通報は重大事件発生の防止に役立つ重要なもので、真偽が曖昧であったり、軽微だからと自身の判断で通報を躊躇しないこが大切です。
また、「ヒヤリ」「ハッ」とした危険な情報は、多くの人で共有することも大切です。情報を得ることで警戒心が増し、多くの人が取組むことで抑止効果が増していきます。
関心は被害対象から場所へ変化
犯罪の発生には、3つの要素が必要です。「動機づけられた犯行者」「適当な標的」「有能な監視者の不在」の何れかが欠けても犯罪は発生しません。強制わいせつと自動販売機ねらいを例にとると、女性と自動販売機が「適当な標的」、人通りの少ない生活道路などが「有能な監視者の不在」になり、どこにでもある風景です。この風景の中に潜む「動機づけられた犯行者」が、どちらを襲うのかで認知される犯罪が変わってしまいます。つまり、犯罪の種類は「犯行者」に委ねられており、犯罪の発生する「場所」は同じなのです。
このように、家族構成や年齢・性別によって変化する関心は、被害の危険を「犯行者」に委ねています。被害を回避するためには、関心を被害対象から「場所」へ変化させることが最も重要です。
防犯対策では、例え軽微な情報でも収集し、早期に対処することが大切です。そして、子どもや高齢者、住宅や自動販売機など被害対象に拘らず、学校や町内会など多くの人で取組むことが肝心です。