定年後も住宅ローンが残る場合の対策
高齢者雇用安定法によって、希望者全員が定年後も働けるようになりました。確かに、継続雇用制度によって同じ職場で働くことができれば、労働者にとって金銭的な恩恵は大きいでしょう。しかし、継続雇用制度によって、やりがいなどが失われることもあります。この記事では、継続雇用制度のメリットとデメリットについて詳しく解説します。
定年後、継続雇用制度を利用するかどうか検討する
これまでの記事でも触れてきましたが、国は高齢者雇用安定法の改正により、企業に対し、「定年制の廃止」「定年年齢の引き上げ」「継続雇用制度の導入」のいずれかの導入を義務づけました。
これに対応して、大半の企業は「継続雇用制度の導入」を行っています。これにより、希望者全員が定年後も継続して働けることとなりました。
年金不安が広がるなか、長期的に給与が得られるため、労働者にとっては朗報とも思える継続雇用制度ですが、メリットだけに目を奪われていては本質を見逃してしまいます。継続雇用制度のデメリットをきちんと理解して選択することが重要でしょう。それでは、継続雇用制度のメリットとデメリットについて概観しましょう。
メリットは2つあります。ひとつは、就労の場が確保されることです。定年後に、自らハローワークなどに足を運び仕事を探すことは、体力的にも精神的にも厳しいものです。同じ職場で継続して働けることで、こうしたストレスはありません。
人手不足とはいえ、高年齢者の求人の状況は依然として厳しいのが実態です。定年後、金銭的なゆとりがあって無職の期間があっても問題がないのなら、継続雇用制度を利用しなくてもよいかもしれません。しかし、そうでないのなら、継続雇用制度は経済的な安定に資するとても有り難い措置でしょう。
再雇用によって年金支給額を増やせる可能性も
もうひとつのメリットは「年金が増える可能性がある」ことです。年金は、会社員の場合、国民年金と厚生年金の2階建てになっています。
実は、継続雇用制度を利用して働くことによって、どちらの年金も増やせる可能性があります。国民年金は40年間保険料を支払うことで満額を得ることができますが、経済的な理由などで未払い期間がある人もいるでしょう。
国民年金は、原則60歳までの加入ですが、未払い期間がある場合、60歳を超えても任意加入することによって未払い保険料を支払うことができます。
例えば、5か月間、未払い期間がある場合。任意加入を行ったうえで、継続雇用制度によって5か月間勤務すれば、国民年金の未払い分を解消できます。
厚生年金は70歳まで加入できる年金制度です。継続雇用制度によって勤務し続ければ、その分だけ厚生年金の支給額が増加することになります。年金の支給額に不安を感じており、少しでも年金を増やしたいと思っている人は、継続雇用制度を活用して将来に備えるとよいでしょう。
給与減少や人間関係など、複数のデメリットがある
ではデメリットについても解説していきましょう。
主なデメリットは3つ挙げられます。ひとつは「給与が減少する」ことです。
継続雇用制度によって就労する場合、現役時代の50~60%にまで給与が抑えられる傾向があります。
トラックの運転など、特に現場系の職場で多いケースですが、同じ仕事をしているにもかかわらず、継続雇用という理由によって給与が半減してしまうわけです。同一労働であるにもかかわらず、このような措置となってしまうため、就労のモチベーションが極端に低下する恐れがあります。
もうひとつは「人間関係」です。定年後は、給与の引き下げと同時に今までとは違う役割を求められるようになります。
例えば、管理職であった人が、かつての部下のサポート役となるケースなどです。このような立場をまったく問題にせず、サポート役に徹することができる人はいいでしょう。しかし、そうでない人は現実と理想のギャップに苦しむことになります。これまで部下であった者に命令されることもあるわけで、プライドが高い人ほど、現状に耐えきれなくなり、退職してしまいます。
最後は「年金が調整される恐れがある」ことです。
年金制度には、就労によって一定額の収入を得ると年金支給額が調整される措置があります。継続雇用制度によって、給与を得たものの、年金が調整されてしまえば金銭的なうまみは失われてしまいます。継続雇用制度を利用する前に、自分にはどの程度の年金が支給されるのか、確認することをおすすめします。
このように、継続雇用制度にはメリットもデメリットもあります。金銭的なメリットは継続雇用制度にあるかもしれませんが、仕事のやりがいは失われる可能性が高いです。近年、転職や起業を選択する人が増えているのは「お金よりもやりがい」を重視する傾向があるからでしょう。
シニアはこれまで企業内で培ってきた職務能力があります。継続雇用制度は便利なものですが、見方を変えれば、年齢で人を差別しているものと見ることもできます。
起業は、年齢に関係なく、実力によって報酬を得ることができ、さらにやりがいもある働き方のひとつです。継続雇用制度だけにとらわれず、転職や起業も検討すると定年後の視野が広がるでしょう。