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辻村登志子

シニア世代の起業を支援する会計の専門家

辻村登志子(つじむらとしこ) / 税理士

辻村会計事務所

コラム

定年後に起業するために資格は必要なのか

2018年7月23日

テーマ:定年後の働き方

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 投資信託

資格を取得すれば、起業が容易になると思い込んでいるシニアは多いですが、それは間違っています。資格はあくまでライセンス。相応の実務経験と信頼がなければ、起業して継続することは難しいでしょう。私は、起業に資格はいらないと考えています。この記事では、資格が活用できるケースに触れながら、起業よりも重要な3つの能力について解説します。

定年後、資格を活用したビジネスならうまくいく?

定年後、起業するためにはどのようなことが必要でしょうか。「資金だ」と発言する方がいる一方で、「経験だ」「人脈だ」と語る人もいます。定年後に起業を希望するさまざまな経歴の方にお会いすると、「起業する際には資格が必要ではないか」という声をしばしば耳にします。本当にそうなのでしょうか。

結論から言うと、その考え方は違っているように思います。資格はあくまでもライセンス。自分のやりたいことが資格と結びついている場合は資格が生きてきますが、そうでないケースでは必ずしもそうとは限りません。

弁護士や税理士、行政書士など、「士業」を中心に資格がないとできないビジネスは世の中にたくさんありますが、資格を取っただけではうまくいきません。当然、実務経験も必要です。資格は保持しているものの、実績がない人にあなたなら依頼したいと思うでしょうか。きっとそうではないでしょう。

定年後にまったくの未経験から実務経験を積んで開業し、ビジネスを軌道に乗せていくことはかなり難しいのが実態です。このあたりは、ビジネスを長年経験してきたシニアなら肌感覚でわかっていただけることでしょう。

実務経験者なら資格は起業で有利に働く

とはいえ、資格はそれなりの苦労をして手に入れたもの。有効に活用したいという気持ちもよくわかります。実際、資格は実務経験が豊富な方にとっては起業の心強い味方です。いくつか例を出して説明しましょう。

例えば、生命保険会社に勤務していた方のケースです。この場合、取得しておいて損がないのはFP(ファイナンシャルプランナー)でしょう。生命保険は、一生をかけた高い買い物。保険料を長期にわたって払い続ける生命保険では、お金のやりくりが肝になってきます。

このとき、生命保険だけでなく投資信託や債券、株など、FPが持つ広範な知識を使えば、より最適なアドバイスができるようになり、お客さまから信頼されるようになるでしょう。実際、生命保険会社での勤務経験を生かしてFPとして起業している人はたくさんいます。

人事や財務など、管理部門で働いてきた人の場合はどうでしょうか。管理部門での資格といえば、人事であれば社会保険労務士、財務であれば税理士が思い浮かびます。

社会保険労務士は、企業の人事の相談役。人事とひとくちに言っても、採用から教育、人事制度設計まで内容は多岐にわたります。もし、人事制度を設計したノウハウがあるなら、それを強みにして社会保険労務士として起業することはできるかもしれません。税理士も同様です。企業でこれまで積んできた決算の知識や税務申告などがきっと生かせるでしょう。

多くのシニアが「資格なし」で起業している

ここまで資格を使った起業に言及してきました。しかし、多くのシニアは「資格なし」で起業を実現しています。経験豊富なシニアの方ならお気づきでしょうが、起業には資格よりも「必要な能力」があるのです。

私が考える必要不可欠な能力は3つあります。ひとつは「論理的思考力」です。サラリーマンと違い、起業家は自分で仕事を取ってこなければなりません。このとき、必要となるのが、自分のビジネスやお客さまへのメリットを論理的に説明する力。これがなければ、お客さまにまともに話を聞いていただくことさえ難しいでしょう。

次に「共感力」です。お客さまは日頃さまざまな課題に直面し、苦労されています。その苦労に共感し、寄り添えることが必要です。かなり感覚的な話ではありますが、「わかります。私も○○をした経験があります」などと話せるようでなければ、お客さまと相通じることは難しいのではないでしょうか。共感できなければ、お客さまにとってメリットのある提案をすることは叶わないでしょう。

また、お客さまの話をしっかりと聞く度量も求められます。起業家として失敗するケースでよく見られるのは、自分の話ばかりをしてお客さまの話を全然聞かない人。売りたい気持ちはわかりますが、お客さまを置いてきぼりにして、自己中心的に振る舞うのは良くありません。

最後に「実行力」です。どんなビジネスにも共通していることですが、実際に動いてみないとどのような結果が生まれるかわからないのが実態です。ぜひ、素晴らしいアイデアがあるならすぐに実行に移してください。そうすることで、自分のアイデアの良い点と悪い点が浮かび上がり、次に生かすことができるでしょう。

もちろん、準備は必要ですが「考えてばかりいても始まらない」のは事実です。資格ばかりに頼らずに、ビジネスマンとして必要な能力を継続的に伸ばすよう心がけてください。

この記事を書いたプロ

辻村登志子

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