3000万円ないと破産?定年退職時に必要な貯金額とは
高齢者雇用安定法によって、大半の企業は継続雇用制度を導入しました。これにより、希望者全員が定年後も働けるようになりましたが、継続雇用制度にはメリットもデメリットもあります。この記事では、再雇用の場合のメリットやデメリットについて触れつつ、継続雇用でない働き方についても考えます。
定年後の再雇用によって賃金は半減する
定年後の生活を考えるうえで、再雇用などが行われた場合、どのくらいの給与が支給されるのか、事前に知っておくことが必要でしょう。国は高齢者雇用安定法の改正により、企業に対し、「定年制の廃止」「定年年齢の引き上げ」「継続雇用制度の導入」のいずれかの導入を義務づけました。
こうしたなか、企業はこの義務に対応するため、大半が「継続雇用制度の導入」を行いました。これにより、希望者全員が定年後も継続して働けることとなりました。なぜ、「定年制の廃止」や「定年年齢の引き上げ」も措置として挙げられているにもかかわらず、企業は選択しなかったのでしょうか。
それは、「人件費の上昇」を抑えるためです。これまで日本企業は、人件費が高くなりがちな高年齢の労働者を定年制という制度によって雇用義務を打ち切ることで、人件費の調整を行ってきました。定年制を廃止したり、定年年齢を引き上げることは、企業の人件費負担を重くすることにつながるため、大半の企業が「継続雇用制度の導入」を選んだわけです。
再雇用のメリットとデメリット
企業が「継続雇用制度の導入」を選んだ理由を考えてみると、高齢者雇用安定法による措置は、定年を控えた人にとってメリットがある一方でデメリットも含んでいることがわかります。メリットは言うまでもなく、就労の場が確保されることでしょう。定年後に、自ら仕事を探し、新しい仕事を得るのは思いのほか苦労するものです。こうした負担がなく、同じ職場で働けることは、身体的にも精神的にも負担が少なくて済みます。
一方のデメリットですが、主なものは2つ挙げられます。
ひとつは「給与が減少する」ことです。前述の通り、企業が継続雇用制度を導入している理由は人件費の削減です。こう考えてみると、今までと同じ給与で働ける可能性はかなり低いことがわかるでしょう。実際、継続雇用制度によって就労する場合、現役時代の50~60%にまで給与は抑えられる傾向があります。
もうひとつは「人間関係」です。定年後は、今までとは違う役割を求められるようになります。例えば、これまで部長であった人が、プレイヤーとして補助的な役割のもと働くことになったり、いわゆる雑用係として今までとは異なる価値のそれほど高くない業務を担当することもあります。しかも、部下として接してきたメンバーが上司となり、命令されるケースも考えられます。プライドが高い人のなかには、こういった就労環境に耐えきれず、早々にリタイアしてしまう場合も散見されます。
継続雇用制度によって働くことは、「就労の場が確保される」という点だけを考えると良いことに見えますが、実際は、給与や人間関係など、思いのほかストレスがかかるものです。
待遇に不満があるなら転職や起業も視野に入れる
これまで解説してきたように、継続雇用制度によって働くことにはメリットもデメリットもあります。それぞれを比較考量したうえで、継続雇用制度を利用するかどうか考えるべきでしょう。
こうした継続雇用制度の問題点が露見するなか、転職や起業を選択する人も出てきています。シニアはこれまで培ってきた卓抜とした職務能力があります。勤務してきた企業内ではなく、市場で自分の力を試して報酬を得ることも一つの選択肢でしょう。
近年は、中小企業を中心に即戦力となるシニアの力を求める求人も増えています。例えば、大企業の経理部において銀行折衝を長年やってきたシニアが、経理部長として中小企業に就職するケースなどがあります。また、製造業のエンジニアとして働いてきたシニアが、新商品の開発部隊として他社に移るケースも見られます。つまり、年齢が高いからといって、転職できないという話ではないのです。
起業も選択肢のひとつです。これまでの記事でも解説してきたように、起業するシニアは増加中です。この背景には、「自分の好きなことがやりたい」という理由がある一方で、継続雇用に対する不満も見え隠れします。起業はそれほど簡単なことではないのは事実ですが、現役時代からしっかりと準備をして臨めば、相応の報酬は得られるものです。
起業して事業を軌道にのせるためには、職業能力を培い、人脈を構築する必要があるでしょう。もし、あなたが定年間近で起業を考えているならば、すぐに行動に移すことです。最近では、自治体や商工会議所などを中心に、起業支援を行う組織が増えています。足繁くこうした場所に通い、情報を得ることで、きっと起業は身近なものだと感じられるでしょう。
平均寿命が伸長するなか、働き方は国民的なテーマになっています。継続雇用だけでなく、転職や起業も視野に入れると選択の幅が広がることは間違いありません。