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血圧日記帳を使いこなす

野口由美

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テーマ:病気、症状の解説

血圧日記帳をご存知でしょうか?

病院で血圧が高いことを指摘され、血圧日記帳をつけてくださいと言われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

血圧日記なんて、面倒なことはしたくないと思われたかもしれません。

実は、血圧日記帳は、知らず知らずのうちに、体調コントロールできるすぐれものです。

血圧高めな方だけではなく、正常な方や、血圧低めの方にもお勧めしたい、血圧日記帳の簡単で効果の高い使い方をご紹介します。

血圧日記帳はすぐれもの

私は、ある患者さんのひとことから、血圧日記帳は実はすぐれものだと気づきました。

それ以来、診察室で血圧日記帳を勧めるときは、彼の一言を使わせていただいています。

それまでは、血圧の高い方に血圧日記帳を勧めても、必要ないと、断る人は少なくありませんでした。

けれども、この話を聞くと、ほとんどの方が、「そういうことなら、血圧日記帳をつけてみたい!」と言われます。

どういうことかというと、まず、その患者さんのひとことを聞いてください。

血圧日記帳でフィードバック

「血圧日記帳をつけていたら、だいたいわかってきたよ。

暴飲暴食すると血圧上がるよね。

飲み会あると、血圧上がるしね。

運動すると、血圧下がるよね。運動はやっぱりいいよね」

この患者さんは、血圧日記帳を上手に使って、血圧を見事にコントロールされていました。

日記帳をつけていくと、どういうときに血圧が上がるのか、どんなときに血圧が下がるのか、ご自分の血圧の傾向がだんだんわかってきます。
そうしたら、ご自身で、自然に気をつけるようになりますよね。

暴飲暴食すると血圧上がるよね。
たくさん食べたらダメなんだなぁ。

飲み会あると、血圧上がるなぁ。
アルコールはよくないっていうのはホントだね。

運動すると、血圧下がるよね。
運動はやっぱりいいんだね。
という感じです。

病院で医者から、「食塩、飲酒は控えて」と言われると、「その通りなんだろうけど、なんだかあんまり従いたくない」という気持ちになりませんか。

運動習慣を尋ねますと、「運動しなくちゃと思うけど…」とか、「時間がなくて…」と言葉を濁す方、とても多いです。

でも、血圧日記帳をみて、ご自分で気が付くと、自然に気をつけようという気持ちになってきます。

血圧日記帳を見て、ご自分でフィードバックする習慣が身につくと最強!ということなんです。

このフィードバックのために、血圧日記帳に記録しておいてほしいことがあります。

それは、日記帳のメモ欄に、その日の出来事をメモしておくということです。

たとえば、「飲み会があった」とか「夜寝るのが遅くなった」、「夜遅くに食事した」など、気がついたことをメモしておくと、血圧の傾向を知る際、とても参考になります。

また、体調のよくないときや、ストレスがかかった時なども、ひとことメモしておくといいと思います。

そのような様々な出来事があったときに、血圧が上がるのか、下がるのか、どの程度上下したのかを知ることで、よりいっそうご自身の体を理解する助けとなるでしょう。

血圧低めの方にもおすすめ

血圧日記帳は、血圧が高い人だけでなく、血圧低めの人にもいいと思います。

体調がすぐれないとき、血圧がいつもよりかなり下がっている場合があるのです。

血圧低めの方は、食後や、運動後、入浴後などにめまいや気分不良を訴えられることがあるのですが、そのようなときに血圧を測ると、いつも低めの血圧がさらに下がっていて驚くことがあります。

そのような出来事を血圧日記帳に記録しておくと、後でかかりつけ医に相談するとき、手帳をもとに医師に説明しやすいでしょう。

家庭血圧が重要な理由

血圧は常に変動しており、一定ではありません。

一般的な日内変動では、睡眠中の血圧は低く、起床とともに上がっていき、日中は高く、夕方から夜にかけて下がっていきます。

病院では正常で、それ以外の場所や時間で血圧が高い方は、病院では高血圧とはわかりません。

家庭血圧が重要なのは、病院では見つけることのできない血圧の異常を見つけることができるからです。

高血圧の基準は、診察室血圧で140/90mmHg、家庭血圧が135/85mmHgです。
高血圧の降圧目標として、診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満が設定されています。
厳密には、年齢や、基礎疾患の有無によって細かく規定されていますので、詳細をお知りになりたい方は、高血圧診断基準を検索してください。

家庭血圧の測り方

血圧日記帳は、原則、朝起床時と夜寝る前の、一日2回の血圧を記します。

朝は、起床後、トイレに行ってから、椅子に座って安静にして測定します。

夜は、寝る前に、椅子に座って安静にして測ります。
いつも同じ姿勢で測ります。

コーヒー、紅茶、アルコールを飲んだ後は、測定しないでくださいと注意書きされています。
しかし、ご自身の本来の血圧として記録しなければ、実験的に測定してみるのはいいと思います。

日常生活でできる高血圧改善

血圧日記帳をつけて、ご自身の傾向がわかってきたら、高血圧の方は、日常生活の留意点にも目を向けてみてください。

血圧の高い方は、食塩、飲酒を控えましょうというのはよく知られています。
腎機能が正常な方は、野菜、果物を積極的に取りましょう。

体重が増加している場合は、体重を落とすと血圧は下がります。

また、寝不足は血圧を上げますので、睡眠時間を十分確保することも大切です。

運動習慣も重要です。
運動は、血圧に影響するだけではありません。
体内の代謝機能を高め、認知機能にも影響することがわかっています。
血圧を気にされている方だけでなく、すべての人に運動をお勧めしています。

低血圧を改善するには

血圧低めの方に対しては、食事をしっかり三食とる、運動をするなどが勧められていますが、残念ながら、はっきりした治療法は確立していません。

実際には、血圧が低いことだけが問題なのではなく、貧血傾向や低血糖など、様々な要因が重なっていることが多いのです。
貧血傾向や低血糖に対しては栄養療法が有効ですが、より多角的な視点から検討する必要があるかもしれません。

自分に合った血圧日記帳を選ぶ

様々なタイプの血圧日記帳が市販されていますので、気に入ったデザインのものを選ぶのもいいと思います。
血圧日記のアプリも多数ありますし、スマートフォンで健康管理される方も多くなってきました。
病院や健診施設の中には、高血圧の方に血圧日記帳をお配りしている場合があります。
また、製薬会社などのサイトで血圧記録表をダウンロードすることもできますので、これらを使って、ご自分だけの血圧手帳を手作りされている方もいらっしゃいます。
ご自分に合った血圧日記帳を選んで、ご自身の体調管理に役立ててください。

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野口由美
専門家

野口由美(医師)

クリニック千里の森

患者一人ひとりの個性を重視した「患者ファースト」の治療方針のもと、薬に頼らない医療を提供。近代西洋医学の最前線で培った豊富な知識、自身の体験を裏付けに、幅広い選択肢の中から最適な治療法を提案します。

野口由美プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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