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たいせつなことを忘れてしまう。それは低血糖のためかもしれません。

野口由美

野口由美

テーマ:病気、症状の解説

前回、低血糖をご指摘し、補食をおすすめした方から、ご相談がありました。
「補食や、食事のポイントなどいろいろ教えてもらったけど、全然できなくて、
サプリメントも飲めなくて、やめてしまいました」

低血糖の方は、食事やサプリメント、生活習慣についてお話しすると、
「なるほど!ものすごく納得しました。
家に帰って、すぐにやってみます」
と、にこにこして帰宅されるのですが、しばらくすると、
「いろいろ教えてもらったのに、できなくて」
と言われる方、少なくありません。

こんなふうになってしまうのは、決して、あなたのせいではありません。
実は、低血糖のなせるわざなんです。

たいせつなことを忘れる、勘違いしてしまう

低血糖の状態だと、脳は理性的に働くことができません。
説明を聞いて、一度は理解できたことでも、いつしかその重要性を忘れてしまいます。
たいせつだとわかっていても、どうしたらいいのか、その方法のひとつでもわからなくなると、そこで止まってしまうのです。
さらに、やっかいなのは、説明で聞いたことを、いつのまにか、自分らしく歪曲して理解してしまうことです。

たとえば、このような方がいらっしゃいました。

「補食に小さいおにぎりをすすめられたので、
玄米おにぎりせんべいを食べています」
と、どこかどや顔です。

私は、心の中で
「なんでやねん!」
と盛大なツッコミを入れていました。


おにぎりせんべいはお菓子です。
おにぎりと、おにぎりせんべいはまったく別物です。
でも、この方の中では、
「おにぎりを勧められた、それなら、おにぎりせんべいがいい」
に変換されてしまうようなのです。

その方はこのようにおっしゃっておられました。
「玄米のおにぎりせんべいだから、食物繊維もとれてからだにいいと思いました」
食物繊維は確かに必要です。
けれども、今は、低血糖を防ぐための大切な補食の話をしています。
食物繊維をとってくださいではないんですね。
それにね、食物繊維をとるのに、玄米おにぎりせんべいが良質な食べ物かどうかははなはだ疑問です。

また、このような女性もいらっしゃいました。
胃酸分泌が低下しているので、胃酸を助ける、梅干しや、リンゴ酢、レモンを食前にとってください、と話したところ、1か月後の再診で、
「はい、炭酸を飲むようにしています」
と笑顔で言われます。
えっ?
いや、炭酸ではなく、梅干し、リンゴ酢、レモンです。
「あっ、私なんで炭酸って思ったんやろ…」

この方は、初診時、
「ちょうどリンゴ酢を買ったところだから、炭酸でわるといいかもしれない」
とつぶやいておられました。
おそらく、リンゴ酢を炭酸で割って飲むといいなと思って帰宅したところ、
炭酸だけが残り、肝心のりんご酢が抜け落ちたものと思われます。

そんなことないでしょって思われるかもしれませんが、実際、こういうことがほんとうに起こってしまうのです。

あなたが悪いのではなく、低血糖のせいです

このような方は、おそらく、日常生活でも、おなじようなことを経験されているかもしれません。

○○してって言われたのに、勘違いしていて、ぜんぜん違うことしてるって注意されるとか。

たいせつな約束事を忘れてしまっていた。

やらなくちゃと焦りつつ、結局、間に合わなかった。

やる前にできないと思ってあきらめた、などなど。

それは、低血糖のためです。
自分のせいだ、自分はダメだと自分を責めないようにしてください。

低血糖でみられるさまざまな症状

低血糖になっているとき、上記にあげた症状のほかにも、さまざまな症状がみられます。

むしょうに甘いものを食べたくなる

低血糖のときは、甘いものがむしょうに食べたくなります。
特に、夕方、甘いものとコーヒーが無性にほしくなる方、
ほぼ毎日、お菓子とコーヒーをとっているという方は要注意です。

また、毎朝、コーヒーを飲まないとダメという人も低血糖の可能性が高いです。
朝の低血糖によるだるさを、コーヒーによるドーピングで無理やりアドレナリンを出させて乗り切ろうとしています。

朝起きられない、寝ても疲れがとれない

脳、筋肉、肝臓はグルコースを多く必要としています。
そのため、低血糖のとき、これらの臓器が一番影響を受けやすいのです。

脳はもっとも糖を必要としています。
低血糖のとき、脳は働くことができませんから、ぼーっとしてしまいます。

また、筋肉に糖がなければ、筋肉を動かすことができません。
ですから低血糖のとき、体は動かなくなってしまいます。

姿勢を保つにも、筋肉の働きは必要です。
朝起床時に低血糖だと、起き上がることもできません。
いつまでも寝ていたくなり、なかなか起き上がれないのはこのためです。

低血糖のとき、肝臓の働きは低下し、解毒や代謝ができなくなります。
低血糖状態では、エネルギーを作ることができないので、からだはだるく、しんどくて、疲れています。

また、エネルギーがないので、体温が低くて、寒さを感じているかもしれません。

就寝中の歯ぎしり

低血糖のとき、体は危険を感じ、アドレナリン、ノルアドレナリンを分泌して、血糖を上げようとします。
アドレナリン、ノルアドレナリンが分泌されると、からだは緊張し力が入ります。
これが夜間におこると、食いしばったり、歯ぎしりしたりします。
動悸を感じるひともいるでしょう。

朝起床時、寝違えて首が痛い、肩こり、腰痛のある人は、低血糖の可能性が高いです。
また、朝起きたとき、手がしびれていると言われる方もいらっしゃいます。
夜間、手を握り締めているためだったりします。

うつ、パニック障害

血糖値が下がるとき、アドレナリン、ノルアドレナリンの影響もあり、精神的に不安定になります。

不安でたまらない、急に死にたくなってしまう、パニックに陥るなどの症状は、血糖値の急激な変化によることがあります。

急激に血糖値が低下しているとき、感情も揺さぶられています。

血糖の変動を少なくして、血糖のコントロールを行うことで、感情の浮き沈みがなくなり、穏やかになります。

血糖のコントロールだけで、パニック発作がなくなることがあるのはこのためです。

低血糖には低血糖対策

もしかすると、自分も低血糖かもしれないと思われた方がいらっしゃるかもしれません。

低血糖かどうかは血液検査結果でわかります。
会社の健診、健康診断などの血液検査結果をお持ちになって、ご相談ください。

検査結果をもとに、栄養療法の視点から、さまざまな栄養状態を読み解きます。
さらに、低血糖対策についてもていねいにお伝えいたします。

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野口由美
専門家

野口由美(医師)

クリニック千里の森

患者一人ひとりの個性を重視した「患者ファースト」の治療方針のもと、薬に頼らない医療を提供。近代西洋医学の最前線で培った豊富な知識、自身の体験を裏付けに、幅広い選択肢の中から最適な治療法を提案します。

野口由美プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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