Mybestpro Members

野口由美プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

「両親は毒親ではないでしょうか?」

野口由美

野口由美

テーマ:症例紹介

22歳の女性の方から、「両親は毒親ではないでしょうか?」との相談を受けました。

話を聞いてみますと、さまざまな毒親さんエピソードがでてきました。
女性は長年の疑問がはれてすっきりしたと言われます。
さらに、これから自信をもって自分のやりたいことを進めていきたいと話されました。

毒親育ちさんが社会人になるとき、気をつけておいてほしいことについても、解説を加えました。

家を出ていけ!


ゆり子さん(22歳)がおひとりで相談に見えました。

「私の両親は毒親じゃないのかなってずっと疑問に思っているんです。
でも、こんなことだれにも相談できなくて、いろいろ考えて、病院を受診しようって思いました」

どんなところから毒親かなって思ったんですか?

「私がやりたいことがあると、なんでも反対してくるんです。
小さい時からずっとそうなんです。

今、就職活動中なんですけど、
私はずっとやりたい仕事があって、希望の就職先を考えていたら、
『そんな会社はやめろ』とか、
『そんな業界はだめだ』とか、いろいろ言ってきます。

今、バイトしているところから、正社員にならないかって言われているのですが、
それは私がやりたいことではないので、あんまり気が向かないんですね。
でも、父は『そこでいいじゃないか』みたいに言ってくるんです。
私の将来をそんな適当に決めつけられるのがとても嫌なんです。

就職先は自分で決めたいと言ったら、父から
『もう、おまえは絶縁だ!家を出ていけ!』
って言われました。
就職したら、家を出てひとり暮らししようと思っていたので、どっちにしても家を出るからいいんですけど、絶縁するとか言いだして…もう、面倒だなって思って…。

それにね、父からよく言われるんです。
今回も言われたんですけど、
『だれのおかげで大学に行かせてもらってると思ってるんだ!』
『授業料はだれが払ってると思ってるんだ!』
気に入らないことがあると、すぐこうなんです。
もう、うっとうしいです」

わぁー、でました!

「えー、『でました』なんですか?」
はい!The毒親フレーズです。
The毒親フレーズのなかの「誰のおかげで」シリーズです。
おとうさん、連発してますね。

「父の口癖です。
もうしょっちゅう言ってます。」

そもそも、親は、子供を養育する義務があるので、そんなことをいうのはおかしいんですね。

「そうなんですね。なんだか、ほっとしました。
私がおかしいのかなと思っていて…」
そうですよね。
親のことはむやみと否定しにくいですもんね。

親から離れて一人暮らし

「あーでも、毒親ってわかってすっきりしました。
ずっと、なんかおかしい、なんかおかしいって思っていたんです。

親が毒親の場合、私はどうするのがいいですか?
私は、両親から離れたいと思っているんです」

わたしも、そのような親とは離れたほうがいいと思いますよ。
いつも否定してくる人とずっと一緒にいると、よくない影響を受けてしまいます。

なにせ、親から言われることですし、私の方がおかしいのかな?って考え込んでしまいますよね。
そんな時間もエネルギーも、もったいないです。
不要なストレスからは離れて、ご自分のやりたいことに集中してほしいです。

「そうなんですね。
よかった。
家を出てひとり暮らししようって思うけど、
そうかといって、ひとり暮らしするのは怖いし、たいへんな気がして、
友達に話すと、『ひとり暮らしはたいへんだよ』って言う人もいるし…、
いったいどうしたらいいんだろうかって迷ってました。
でも、これで、ひとり暮らししようって、前向きに考えられます。
自分が決めたことに自信をもっていいんですね。

就職も、一人暮らしにもわくわくしているんですが、一方では、迷いもあって…。
でも、だんだん、自分の思うようにしていいんだって思えるようになりました」

そうですね。
自分のことをいつも否定する人がそばにいるって、実はそれだけで、かなりのストレスなんです。
ひとりになったら、きっと、『なんだかすごい楽だなぁ』って感じると思いますよ。

「あー、わかります。
しばらく、家を離れて生活していたことがあって、そのとき、同じことを思いました。
親がそばにいないって、こんなに気持ちが楽なんだって。
もう、せいせいしたっていうか、のびのびするっていうか、自由だぁ!って感じでした」

うんうん、そんな感じ。
親から離れると、またその感覚、得られると思います。

それにね、親から離れたほうがいいのは、
親からのストレスがなくなって、気持ちが楽になるからだけじゃないんですね。
もっとたいせつなことがあるんです。

毒親からは離れた方がいい理由

親からいつも否定されていたり、
親の思う通りの選択しかできない場合、
子供は自分の意思というものがなくなってしまうんです。

いつも自分がやりたいことを否定され、
親から進路を押し付けられていると、
自分は何が好きで、どんなことに興味があるのかすら、わからなくなるんですよ。

これってとても怖いことです。
でもゆり子さんは、今の時点ですでにやりたいことをお持ちですし、
しかも自分の意思を通したいと強く思っておられますよね。
これは、とても、とっても立派なことなんですよ。

毒親育ちさんは、ゆり子さんのように、強い意志をもって、私のやりたいことはこれ!って言える方は多くはないんですよ。
もしかしてゆり子さんの近くに、親のかわりとなるような方がいらっしゃったんでしょうか。
愛情あふれた大きなお母さんみたいな存在がありましたか?

「いいえ、親戚にも、まわりにもそんな人はいないです。
私は兄弟もいなくて、ひとりっ子なんです。
だから、だれにも相談できなくて。
いつもすべてを、ひとりで考えて決めなくてはいけなくて、本当に大変だったんです」

いつも、ご自分で、すべて決めてこられたのですね。
ほんとうに大変でしたね。

父だけでなく母も毒親

ところで、お父様の発言に対しては、お母様はなんと言っておられるのですか?

「実は、変なのは父だけではないんです。
母もどうなんだろうかって思ってます。

母は絶対折れない人です。
いつも自分は正しいって思ってます。

父は、大きな声で怒鳴って自分の意見を通そうとするので、いつも夫婦喧嘩が派手でした。
物を投げたり、飛んできたり、
父は暴力をふるったりもしてたと思います。

小さい時から、大きな夫婦喧嘩が絶えなくて、もういやだなって思っていました。
『この人たちはこどもだな』って思ってました」

いやぁ、ほんとうに大変でしたね。
『両親はおかしい、この人たち(親のこと)はこどもだ』
って思える百合子さん、達観してますね。
すごいです。
こどものときから感じていたんですよね。
子供のほうがおとなですね。

「おまえはブス」

お母様のことはそのほかにもなにかありますか?

「母はいつも自分の容姿をすごく気にしています。
最近は、美容皮膚科に通っていて、何かを注入するとか、いろいろいじってます。
それに、わたしに、『あんたはブスだ』とか、
『そんな不細工であんた大丈夫?』とか言ってきます」

えー!!!!
正直言いますけど、ブスどころか、めちゃくちゃきれいですよ。
私、玄関入ってこられたとき、わーきれいな方!
女優さん?モデルさん?って思いましたもん。
(ゆり子さんはうつむいて、首を横に振っています)

でもね、それも、毒親あるあるなんですね。
娘はどんどんきれいになっていくでしょ。
でも、母親の方はどんどん年をとって、若いころの美しさは失われますよね。
それでも普通は、娘が美しく成長していくことがうれしいものです。
でも、毒親は嫉妬して、引きずりおろそうとするんですよ。

母親からそんな心無いことを言われている娘さんのなかには、
母から言われたことを真に受けて、本当に自分はブスだって思い込んでいるひとが少なくないんですけど、ゆり子さんはどうですか?
お友達からきれいだねって言われて、そんなことはない、母からブスって言われるしって思っていませんか?

「友達がきれいって言ってくれると、そんなことはないって全力で否定してます。
そうですね、そういうときは、ありがとうって言ったらいいのかもしれないですね」

毒親育ちさんが社会人になるとき気をつけておいてほしいこと

ゆり子さんには、これから、好きな仕事をして、素敵な人たちにたくさん出会って、ご自分の世界を広げていっていただきたいと思います。

親と一緒の生活から一歩、外に出ると、親と一緒の時には常識だったことが、実は常識ではないことに気が付き、びっくりするような経験をたくさんされると思います。

社会にでていくとき、毒親育ちさんには気をつけていただきたいことがあるので、二点、お伝えしますね。

気を遣いすぎない

毒親育ちさんは小さいころから、親の機嫌をうかがったり、機嫌をとったりしていて、それが普通のことだと思っています。
子供は親に育ててもらわないと生きていけませんから、親に気を遣うのは、生きていくために必要なことだったんです。

気を遣うのは普通のことだと思っているので、おとなになっても、子供の時と同様に、周りの人に気を遣います。
でもね、今はもうおとなです。
気を遣わないと生きていけないことはないんですね。

毒親育ちさんは、他人に気を配ることがとても上手で、よく気が付きます。
それ自体はいいことなんです。
ただ、会社でいつもいつも、人に気を遣っていると、とっても疲れてしまいます。

疲れてしまったら、気を遣っていないか、
気を遣いすぎて体に力が入っていないか、チェックするようにしましょう。

仕事は断ってもよい

人からなにか頼まれると断れないとか、
断ったら悪いんじゃないかって感じることはないですか。
断れないことが多い場合は、特に注意が必要です。

ゆり子さんはまじめで努力家ですし、仕事の場では、おそらく完璧に近い仕事をされると思います。
何を頼んでも断らないし、そのうえ、仕事は完璧にやってくれるし、いい人だよとまわりの評価は高いでしょう。

でもね、ゆり子さん自身の仕事もあるし、頼まれた仕事もどんどん増えるしで、いっぱいいっぱいになって、最後は倒れちゃった、なんてことがあるんですね。
ご自分のペースを知って、自分に可能な範囲の仕事の量を知っておくことも重要です。

それに、会社のなかには、やりたくない仕事を他人に押し付けたりする人もいます。
毒親育ちさんは、そういう仕事を受けとる傾向があるんです。

それが悪いわけではないのですが、他人からいいように使われないよう、気をつけたほうがいい場面もあるってことを知っておいてほしいんです。

他人だけじゃなく、自分にも気を遣ってあげてくださいね。

「はい、わかりました。覚えておきます。
今日は、話を聞いてもらって、とてもすっきりしました。
自分を信じていいんだって思えました。
今日は来てよかったです。
ありがとうございました」

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

野口由美
専門家

野口由美(医師)

クリニック千里の森

患者一人ひとりの個性を重視した「患者ファースト」の治療方針のもと、薬に頼らない医療を提供。近代西洋医学の最前線で培った豊富な知識、自身の体験を裏付けに、幅広い選択肢の中から最適な治療法を提案します。

野口由美プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

健康不安で苦しむ患者の心身を親身にケアする心療内科医

野口由美プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼