吹付断熱材の結露について
吹付断熱をご検討の方の多くが、吹付ける厚さをどのくらいにすればいいかとお考えのようです。そこで今回は吹付断熱材の厚さについてお話ししたいとおもいます。
断熱材の厚さの基準
家の断熱については一般的な関心が高くなっています。「断熱等性能等級」という言葉をご存知の方も多いでしょう。
もともとは地球温暖化対策として省エネルギーが緊急の課題になってきた昭和54年(1979年)に公布された通称「省エネ法」に始まるものです。
省エネルギー対策は、エネルギーを大量に消費する工場など製造現場だけではなく一般の家庭でも必要です。実際、家庭でのエネルギーの消費は1973年度と2014年度を比べると約2倍以上になっており、対策が急がれているのです。
そこで一般家庭においてエネルギー消費量の削減対策がどの程度とられているか、また、住宅の断熱性能を向上させることによってエネルギー消費量がどの程度抑えられているかを評価できるよう、省エネルギー基準という評価区分が設けられました。
このうち、住宅の断熱性能向上による省エネ対策について、そのレベルによって4つに分類したものが「断熱等性能等級」です。
「等級4」(平成25年基準)、「等級3」(平成4年基準)、「等級2」(昭和55年基準)、「等級1」(その他)の4つです。
吹付断熱材の厚さもこの「断熱等性能等級」に深く関わっています。
具体的に見てみると
省エネルギー基準は現在、8つの地域に区分されています。
寒い北海道が「1」と「2」に、暖かい宮崎県や鹿児島県は「7」、沖縄は「8」になっています。大阪市は「6」です。
そして、それぞれの地域において省エネルギーの基準値が設けられています。
「断熱等性能等級」には「技術基準」が示されています。この「技術基準」を見れば、各地域において、断熱等性能等級4の基準を満たすためには、家の屋根、壁、床などの各部位で最低○mmの厚さの断熱材が必要になるかということを知ることができます。
そして、この数値は、地域、木造か鉄筋かという家のつくりの違い、また、断熱工法、使用する断熱材の種類によって違っており、その「早見表」も作られています。
この早見表を使って、たとえば、鹿児島に木造住宅を建て、アクアフォームという吹付断熱材を使って屋根に断熱を施す場合を見てみましょう。
鹿児島の地域区分は「7」、家のつくりは「木造」、工法は「充填断熱工法」に分類され、アクアフォームは硬質ウレタンフォーム素材ですから断熱材の種類は「D」になります。すると、断熱等性能等級4の基準を満たすためには、屋根に最低で160mmということが分かります。
ちなみに地域区分「1」の北海道旭川市の場合は345mmと示されています。
断熱は「厚さ」だけではない
ところで、上に示した数値は、熱伝導率、そして、熱抵抗値というものに基づいて割り出されたものです。
熱伝導率は熱の伝えやすさを表す数値で、熱抵抗値は熱の伝えにくさを表す数値です。
断熱ということを考えれば、熱伝導率は数値が小さいほど良く、熱抵抗値は数値が大きいほど良いということになります。
さて、ご存知のように、熱伝導率は材質によって違いますね。たとえば、鉄の熱伝導率は0.084であるのに対し、木材の熱伝導率は0.0002です。また、同じ材質でも厚さによって違ってきます。
熱抵抗値は「熱抵抗値=厚さ÷熱伝導率」という計算式で求めます。
この式を見ると、厚さがあるほど、そして、熱伝導率が小さいほど、熱抵抗値が大きくなることが分かります。
言い換えれば、断熱性能を高めるためは、熱伝導率の数値が小さい材料を使うか、または、材料を厚くすることが必要になるわけです。つまり、単純に厚さだけが断熱効果を左右するわけではないということです。
また、家の断熱には、断熱化と高気密化がセットになっている必要があります。
極端なことを言えば、屋根、天井、壁、床に断熱を施しても窓を開け放しにしていれば冬には寒い空気が入り、夏には暑い空気が入るということです。
さらに、家の中のどの部位を重点的に断熱するかという問題もあります。
屋根裏を吹付断熱ですっぽりと覆う方法は、夏の暑さ対策として有効とされています。夏の日射しで熱くなった屋根の熱は屋根裏に伝わり、その熱が室内を暑くするからです。家に入る熱をその入り口のところでブロックするわけですね。
断熱ボードを木材の入り組んだ屋根裏にはめ込む作業に比べれば、断熱材を吹付ける作業は工期も短くて済みます。
この他、吹付断熱と断熱ボードの併用も検討に値する方法です。
現在のところ吹付断熱工法は、断熱ボードのはめ込みにくらべコストがかかりますから、何のための断熱なのかを明確にし、そのうえで全体としての効果を考える必要があります。
こうした点を踏まえ、施工会社と十分相談することをおすすめします。