【疎遠な親の相続】突然の死亡連絡…葬儀の義務と相続放棄の全知識
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
「俺が死んだら、葬式なんてしなくていい。金もかかるし、みんなに迷惑かけるだけだから」
「私の時は、火葬だけで、簡単に見送ってくれれば、それで十分よ」
ご自身の終活について、お子様と話す中で、このように「簡単でいい」「葬式は不要だ」とおっしゃる親御様は、本当に多いのではないでしょうか。
その言葉を聞いて、「そうか、親がそう言うなら…」と、額面どおりに受け止めてしまうのは、実は非常に危険なことかもしれません。
なぜなら、その言葉の裏側には、子供を想う親の複雑な“本音”と“建前”が、隠されている場合が少なくないからです。
今回は、この極めてデリケートな、親が遺す「葬式は簡単でいい」という言葉をテーマに、
- その言葉に隠された、3つの“親の本音”
- 「簡単でいい」を鵜呑みにした家族が陥る、深刻な後悔
- 言葉の真意を汲み取り、後悔しないお葬式にするためのヒント
- 親の想いと、遺族の気持ち、両方を満たす葬儀の形
などを、分かりやすく解説していきましょう。
【結論】親の「簡単でいい」は“子供への配慮”。言葉ではなく、その裏にある“本音”を汲み取る対話が不可欠
親御様が口にする「葬式は簡単でいい」という言葉。
その言葉の9割は、本心から葬式をしてほしくない、と思っているわけではありません。
その真意のほとんどは、
- 子供たちに、金銭的な負担をかけたくない
- 子供たちに、葬儀の準備で大変な思いをさせたくない
- 自分一人のために、大勢の人を集めて迷惑をかけたくない
といった、残される子供たちへの、深い愛情と配慮から来ているのです。
この言葉の裏にある“本音”を汲み取らずに、言葉どおりに本当に簡素な直葬(火葬式)などで済ませてしまうと、
- 「本当に、これでよかったのだろうか…」という、遺族側の深い後悔
- 「最後のお別れもさせてもらえなかった」という、親族や友人からの不満
といった、誰も望まなかった結末を迎えることになりかねません。
大切なのは、親の言葉を「はい、分かりました」で終わらせないこと。
「どうしてそう思うの?」「誰か、特に会ってお別れしてほしい人はいない?」と、もう一歩踏み込んで対話を重ね、その言葉の裏にある親の本当の想いを探り出すこと。
それが、後悔しないお見送りを実現するための、最も重要な鍵となるのです。
1. なぜそう言う?「簡単でいい」に隠された、親の3つの本音
その言葉を、私たちはどう受け止めるべきなのでしょうか。
本音①:【経済的配慮】子供にお金の苦労をさせたくない
これが、最も大きな理由でしょう。
ご自身の葬儀のために、子供たちが貯金を切り崩したり、その後の生活に困ったりするようなことがあってはならない、という親心です。
「お金のことは心配しないで」と伝えても、親は子供の負担を気にし続けるものです。
本音②:【身体的・精神的配慮】子供に面倒な思いをさせたくない
葬儀の準備は、悲しみの中で行う、非常に心労の大きい作業です。
喪主の挨拶、親戚への連絡、様々な手配…。
そうした煩わしさから、我が子を解放してあげたい、という気持ちも強く働いています。
本音③:【世間体への配慮】自分のために、人を煩わせたくない
高齢になり、友人や知人も少なくなったと感じている親御様ほど、「自分のために、わざわざ人に集まってもらうのは申し訳ない」という、謙遜や遠慮の気持ちから、「内々で、こぢんまりと」と考える傾向があります。
2. “言葉どおり”にした家族の、あまりにも深い後悔
実際に、お父様の「火葬だけでいい」という言葉を尊重し、ごく近しいご家族だけで直葬を執り行ったご家庭がありました。
しかし、その数日後から、事態は予期せぬ方向へ進みます。
- ひっきりなしの自宅弔問:訃報を人づてに聞いた、お父様の生前のご友人や会社関係者が、次から次へと自宅へ弔問に訪れ、その対応に追われる日々。
- 親族からの厳しい叱責:「なぜ、俺たちに最後のお別れの機会もくれなかったんだ!」「あんまりじゃないか!」と、お父様のご兄弟から、電話で厳しく責め立てられる。
- 家族自身の後悔:「お父さんは、本当にこれで満足だったのだろうか」「もっとちゃんとお別れをすればよかった」という、言いようのない罪悪感と空虚感が、いつまでも家族の心に残り続ける。
葬儀とは、故人のためだけにあるのではありません。
それは、残された人々が、故人の死と向き合い、心の整理をつけ、明日からまた前を向いて生きていくために不可欠な、「お別れの儀式」でもあるのです。
その大切な機会を省略してしまったことが、結果的に、ご遺族自身の心を、長く苦しめることになってしまったのですね。
3. 親の“本音”を探り出す、魔法の質問
では、親の真意を汲み取るためには、どうすれば良いのでしょうか。
「簡単でいい」と言われたら、こう尋ねてみてください。
- 「『簡単』っていうのは、具体的にどんなイメージ?お坊さんは呼ばなくてもいいってことかな?」
- 「もしもの時、誰に一番に連絡してほしい?最後にお別れしてほしい、大切な友人はいる?」
- 「遺影に使うなら、どの写真がいいかな?一番、お父さんらしい写真を選んでおきたいんだ」
- 「お葬式の時に、好きだった〇〇(曲名)を流したら、きっと喜ぶよね」
このように、抽象的な言葉を、具体的な質問に置き換えていくことで、親御様もご自身の希望をイメージしやすくなり、ポツリ、ポツリと、本当の想いを語り始めてくれるかもしれません。
4. 親の想いと、遺族の気持ち、両方を満たす葬儀の形
話し合いの結果、見えてきた親の想い。それは、「子供に負担はかけたくない。
でも、親しい人たちと、ささやかでも温かいお別れはしたい」という、一見、矛盾した願いかもしれません。
この両方の願いを、高いレベルで満たすことができるのが、「家族葬」や「一日葬」といった、現代の葬儀スタイルです。
- 家族葬:参列者を、ごく近しい親族や友人に限定することで、費用や気遣いの負担を抑えつつ、通夜・告別式という儀式をきちんと行い、心ゆくまで故人を偲ぶ時間を確保できます。
- 一日葬:通夜を行わず、告別式から火葬までを一日で執り行う形式です。遠方の親族の宿泊負担などを軽減できるメリットがあります。
「火葬だけ」というゼロか、「盛大な一般葬」という百か、ではありません。
その間にある、多様な選択肢の中から、ご自身の家族に合った、最適な“落としどころ”を見つけることが、何よりも大切なのです。
【まとめ】“お別れの儀式”は、残された者のためにこそある
親が遺す「簡単でいい」という言葉は、子供への最後の、そして最大の愛情表現です。
その愛情を、私たちは、言葉どおりに受け取るのではなく、その真意を汲み取り、最高の形で応えなければならないのではないでしょうか。
では、本日のポイントをまとめます。
- 親が言う「葬式は簡単でいい」は、子供への経済的・精神的負担を気遣う“建前”であることがほとんど。
- 言葉どおりに本当に簡素化してしまうと、ひっきりなしの自宅弔問や、親族からの不満、そして遺族自身の深い後悔を招くリスクがある。
- 葬儀は、故人のためだけでなく、残された人々が心の区切りをつけるための、不可欠な儀式でもある。
- 「簡単でいい」と言われたら、「誰に連絡してほしい?」など具体的な質問を重ね、親の“本音”を引き出す対話が重要。
- 親の「負担をかけたくない」という想いと、遺族の「きちんと送りたい」という想いの両方を満たす、「家族葬」や「一日葬」が有効な選択肢。
ご葬儀の場で、ご遺族が「父は、口では『簡単でいい』と言っていましたが、生前、親しくしていたご友人がこうして集まってくださって、きっと照れながらも、喜んでいると思います」と、涙ながらに微笑まれることがあります。
それは、ご遺族が、親の言葉の裏にある愛情を、見事に汲み取り、最高の形で応えられた、何よりの証拠なのですね。
私たち葬儀社も、そんなご家族の深い対話を、プロとして支え、最適な「お別れの形」をご提案していきたいと、心から願っております。
株式会社大阪セレモニー



