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コラム

賃料滞納による契約の解除

2010年2月20日

コラムカテゴリ:法律関連


A男さんは1年前からアパートを借りていますが,事情があり先月の家賃を滞納してしまいました。契約書には借主が家賃を1カ月でも滞納すれば貸主は無条件に契約を解除できる旨の特約があり,同特約に基づき家主は事前の催告のないまま契約を解除すると通知してきました。

 結論として,一般的には上記事例のような1ヶ月分家賃滞納のみを理由とした賃貸借契約の解除は認められにくいと考えられます。
 家賃は貸主が土地や建物を貸すことの対価として借主より支払われるものではありますが,家屋の貸し借りは,たった一瞬ではなく,貸主と借主との契約上「長い付き合い」が前提とされたものが多いかと思われます。かように賃貸借契約では,そもそもの契約の性質として貸主と借主,両当事者の継続的な関係を予定しています。従って,たとえ契約に規定される事項に借主が違反したとしても,借主の違反が両当事者のこれまでの信頼関係を著しく害し,将来にわたる継続的な関係を困難ならしめるような悪質なものと認められない限りは,契約解除は認められません。このような民法上の判例法理を「信頼関係破壊法理」といいます。
 賃貸借契約では一般的に,借主側が契約違反行為をしたその他の場合として,無断増改築,汚損・破損,無断譲渡・転貸等の行為が規定され,借主がこれらの行為を行った場合契約を解除するとの特約が付されたものが多いと思われますが,このような行為についても今回のケースのような信頼関係破壊法理が同様にあてはまります。
もっとも,何が信頼関係を破壊する程の契約違反行為であるかについて客観的な基準が存在するわけではなく,個別のケースによって異なります。これまでの判例に照らすと,今回のような賃料滞納のケースでは,賃料の大小,過去の延滞の有無,家主は修理義務をはたしたか,借主の迷惑行為の有無等さまざまな状況が総合的に考慮されているといえます。
今回のようにたった一度の家賃滞納のみで,事前の催告なしで契約を解除をし,直ちに家を明渡せということは,他の事情によっても異なるかとは思いますがよほど悪質な他の事情のない限り認められないと思われます。

この記事を書いたプロ

小原望

国際取引・契約を取り扱う弁理士

小原望(小原・古川法律特許事務所)

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