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くらしと法律6 国際離婚と子の監護

小原望

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日本人であるA子さんは米国人男性と国際結婚し,米国で暮らして一男をもうけました。しかし,その後夫婦は離婚,A子さんは幼い息子(3歳)を連れて日本に帰国することを考えています。

上記は架空事例ですが,近年国際結婚の著しい増加に伴いかような国際結婚破綻のケースが子の不法な連れ去り,いわゆる「子の奪取」として深刻な問題となることが後をたちません。本件事例のように,米国で離婚した場合,3歳の息子の親権は日本人女性のA子さんと米国人男性の共同親権となります。従って,一方の親(この場合父親である米国人男性)の同意を得ず,子を連れて米国から出国した場合,A子さんは子を誘拐したとして米国刑法により犯罪者となるおそれがあります。
「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」(Hague Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction)はこのような問題に対処するための国際的なルールとして締結され,16歳以下の子が不法に定住国から連れ出された場合,子をその国に送還させる義務が条約締結国に生じるものです。
日本では現在のところ上記ハーグ条約に加盟していないため,子を強制的に元の国に送還させる義務はありません。日本が未加盟である背景としては,日本人女性が夫からのDV(ドメスティックバイオレンス)を受けて離婚した例が多いことが指摘されています。しかし,同ハーグ条約には例外事由として,子が送還により身体的・精神的に重大な危険にさらされるおそれがあれば送還しない決定もできると定められており(同13条b),日本でも国際的なルールとしての同条約への加盟が現在検討されております。
ハーグ条約の根底にあるのは「子の福祉」理念の尊重です。個別のケースによって国際離婚に伴う紛争の複雑さはそれぞれ異なりますが,ハーグ条約の加盟の是非をめぐる議論は,国家間の政治的問題や法制度設計の違いにとどまらず,国際離婚をしたカップルにとって子の利益のための最善の選択は何かという普遍的な問題をはらんでいると言えるでしょう。

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小原望(弁護士)

小原・古川法律特許事務所

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