賃料滞納による契約の解除
5.契約書の重要性
企業間の取引や個人の貸し借りでも重要な事柄については,書面による契約にしておくこと,いざという時に役に立ちます。
契約は「申込」と「承諾」があれば成立しますので,「契約書」というタイトルがなくても,書面でその内容を明記し年月日と当事者の署名・押印があれば「覚書」や「確認書」というタイトルであっても,法律上は契約書です。
欧米では,重要な事柄については,あらかじめ書面による契約書を取り交わしておくということは普通になっていますが,日本では親しい間柄の会社や個人に対して,契約書まで要求するのは気が引けるといった理由で,口頭の約束だけで済ませたために,後日トラブルになる例が多数あります。当事者間で話し合いで解決できず,裁判になった場合には,自分に有利な事項(例えば貸金を返せという場合のお金を貸したという事実)はそれを主張する側が証拠によって証明しなければならないという原則があります。これを「立証責任」といいます。従って,原告である貸主は「金銭消費貸借契約書」によって,貸した金額,返済時期等を立証できればベストですが,かかる正式な契約書がなくても「借用書」等により,その内容が証明できれば目的を達します。被告である借主の方でも半分は返したと主張する場合には,「領収書」,銀行の「送金控」等により証明する必要がありますう。後者の場合には,相手が借金の返済であることを認めなければ何のために(別の理由による送金であることもある)送金したかにつき,明らかにすることが必要となります。
また,契約書を作成する場合には,重要な事項についてはすべて定めておくことが重要です。日本ではかなりの人が「良好な関係にある時に,そこまで言うと水臭いと思われる」と遠慮して,本当に言いたいことを言わずに,いずれそのうちに話し合えばよいと考え,「後日の当事者間の協議により定める」としている場合が非常に多いです。しかし,良好な関係にある時に言えないことが,トラブルになってからの協議で当初の希望どおりの内容でまとまるということは通常はありえません。重要なことで,今決められる事項についてはまず最初にはっきり主張し,なるべく契約の文言の中に含めるようにされるべきです。将来でないと詳細が確定しない等の事情があり,現在決められない事項についてのみ「協議事項」とされるのがよいと思います。
重要な約束事(お互いに権利,義務の生じる事柄)については,書面による契約書を作成しておくことをお勧めいたします。