賃料滞納による契約の解除
4.裁判外代替的紛争解決方法(ADR)
最近ADRという言葉が新聞等によく出ていますが、それは裁判外の代替的紛争解決方法(Alternative Dispute Resolution)の頭文字をとった略語です。一般的にADRには
(1)示談(和解)斡旋、(2)調停及び(3)仲裁があります。
(1)、示談(和解)斡旋
示談(和解)とは民事上の紛争を裁判によらずに当事者間で解決する契約(例えば交通事故の場合)ですが、当事者の直接交渉でうまくいかない時などに第三者の斡旋人が両当事者より事実関係を聴取のうえ解決に向けて調整を図り、まとまれば示談書(和解契約)を作成します(例えば、公益社団法人総合紛争解決センターの和解斡旋)。
(2)、調停
当事者間における紛争の自主的解決のために、第三者が(調停委員又は調停人等)が仲介ないし助力することを意味し、このような調停には民事調停法による民事調停、家事審判法による家事調停の他各種の裁判所外の公私の機関による調停があります。調停が成立すると調停調書を作成しますが、裁判所で成立した調停調書には確定判決と同一の効果があります。
(3)、仲裁
仲裁とは、一定の法律関係に関して現在又は将来発生する可能性がある紛争の処理を、国の裁判所の判断に委ねるのではなく、私人である第三者(仲裁人)の判断に委ねる旨の合意(仲裁合意)に基づいて行なわれる紛争解決の方法をいいます。仲裁を端的に一言で言い表すならば、私的裁判といえます。仲裁判断には確定判決と同一の効果があります。
(4)、仲裁と裁判との違い
仲裁は、私人がその意思に基づいて設ける紛争解決方法であるため自主的・自律的な性格を有しており、この点で国家による裁判とは異なります。また、仲裁は当事者の仲裁合意が必要ですので、この点は誰でも提訴できる裁判と異なります。
(5)、仲裁と調停との違い
仲裁人の判断には拘束力が認められており、当事者はこれに従わなければなりません。この点で、調停人の示す調停案を受諾するかどうかが当事者に留保されている調停とも異なります。また、調停は誰でも申立てできますが、仲裁には当事者の仲裁合意が必要である点でも異なります。
(6)、日本のADR
①司法型ADR:民事・家事調停
②行政型ADR:建設工事紛争審査会、公害等調整委員会等
③民間ADR:公益社団法人総合紛争解決センターの和解斡旋・仲裁、日本商事仲裁協会の仲裁・調停、日本知的財産仲裁センターの調停・仲裁等
(7)、ADRに適する事案
当事者が和解をすることができる民事上の紛争で、簡易かつ柔軟な手続で、迅速に解決する必要がある事案、秘密性の保持が必要な事案、専門性の高い(海事、建設、医事等)事案
(8)、調停前置主義
事案によっては、いきなり訴訟をするよりも、まず話し合いを試みることが望ましいと考えられる事案では、訴訟を提起する前に必ず調停の手続を経なければならないとすることになっています。これを「調停前置主義」といいます。借地借家に関する賃料の増減の請求は簡易裁判所の民事調停を、離婚等の家事事件は家庭裁判所の家事調停をまず申立て、円満解決を試みても不調(調停が不成立)となった後に、提訴することができるとされています。