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成年後見人になる心構え

西川智子

西川智子

テーマ:認知症・知的障害のための成年後見制度

「親が認知症になったので、息子である自分が成年後見人になろうかと考えている」「自分は親の面倒を見ることができない。自分のかわりに成年後見人になってくれる人を探したい」…。

後見人はどのような仕事をするのか、どのような心構えが必要なのかなど、後見人についての知識をあらかじめ持っていると、いざという時に安心です。そこで、この記事では成年後見人の仕事の流れと、心構えについて解説しましょう。

成年後見人の仕事の流れ

まずは、後見人になった時に取り組む仕事について見ていきましょう。後見人の仕事の流れは以下の通りです。

1.成年後見を家庭裁判所に申し立て、審判により後見人に選任された後、成年後見人に就任します。

2.後見人は、まず本人(被後見人)の財産(銀行の預貯金、借入金、不動産、株式、車、保険など)や収入の全体像を把握します。この時点で、後見監督人が選任されているときは、監督人の立会いのもと調査を実施します。また、月々の医療費や税金などについて、収入・支出を見積もり、中長期的な見通しを立てて、生活プランを立案します。

3.後見人に就任した後、1カ月以内に本人の財産を調査します。年間収支や財産目録を作成し、家庭裁判所に概ね2カ月以内に提出します。

4.「登記事項証明書」が、法務局から送られてくるので必要な手続きを行います。

5.後見人としての報酬を受け取るため、家庭裁判所に対して報酬付与の申立てを行います。
※ご家族が後見人になっている場合は報酬付与申立を行わないことがあります。
報酬付与申立をするかしないかは後見人が決めます。

後見人としての日常の仕事

●財産管理
後見人は、本人(被後見人)になり代わり、日常生活に必要な金銭の管理から、不動産の管理・処分、遺産相続の手続きにいたるまで幅広く財産を管理します。

また、後見人は財産が正しく管理されていることを示すため、本人(被後見人)の収入や支出を記録に残しておかねばなりません。そのため、用意した金銭出納帳に、本人(被後見人)の年金や給与などの収入や公共料金、税金、経費などを記録し、領収書を全て保管しておきます。これらを怠ると、後見人を解任され民事・刑事上の責任を問われることもあります。

●身上監護
本人(被後見人)の生活環境を整え、安心して生活できるようサポートすることも後見人の日常の仕事になります。

具体的には、本人の安否や健康状態を観察して、適切な医療や介護を受けることができるように配慮し、施設への入退所や処遇を監視します。また、住まいに関する契約や、医療・介護施設の利用契約や各種手続き、費用の支払いなど、さまざまな法的行為を代理します。

●報告の義務
家庭裁判所は、本人(被後見人)の生活や財産が守られるように、後見人に報告を求めたり調査を行ったりします。ですので、後見人は、後見事務の内容をいつでも家庭裁判所に報告できるように備えておく必要があります。

●成年後見人が行わない仕事
食事や洗濯といった本人(被後見人)の身の回りの世話や、医療行為への同意。また、入院の強制や、遺言、婚姻・養子縁組の届け出などは、成年後見人が行うことはできません。
しかし、できないと言って放置するわけではなく、介護保険申請をするなどして本人がきちんと生活できるよう配慮することが後見人に求められます。

●役割の終了
後見人の仕事は、本人(被後見人)が亡くなった時や、成年後見人の職務を裁判所から解任された時などに終了します。

後見人としての最後の仕事は、「財産目録の作成、成年後見終了登記、財産の引き渡し、家庭裁判所への終了報告」となります。

家庭裁判所への相談

初めて後見人になった場合、わからないことも多いと思います。そんな時は、迷わず家庭裁判所に相談してください。審判書または登記事項証明書の「事件の表示」に記されている番号を伝えるとスムーズに相談できます。

成年後見人としての心構え

●本人(被後見人)の意思を尊重する
本人(被後見人)が全ての能力を失ってしまったわけでない場合、成年後見人は、本人の意思を最大限尊重しなければなりません。

後見人が本人の代わりに判断する時は、本人の性格や行動を分析し、「本人であればこうするだろう」という推測に基づいた判断を求められます。

●本人(被後見人)のために制度を活用する
成年後見制度の特徴は、物事を判断する能力が低下した本人(被後見人)のためにつくられているという点にあります。そして、成年後見人の役割は、判断能力を失った本人(被後見人)が、安心して生活ができるようサポートを行うこと。

ですので、認知症になった親の銀行講座からお金を引き出して使うために成年後見人になりたいと思っても、本人の利益になる使い方でないと家庭裁判所から許可されません。

例えば、後見人が自分の用途のために本人(被後見人)のお金を引き出して使うことは許されません。しかし、本人(被後見人)が住んでいる家の修理のために使うのであれば、正当な理由なので許可が得られます。

●本人(被後見人)と後見人の財産を区別する
成年後見人は、本人(被後見人)と自分の財産を明確に区別して管理しなければなりません。

特に注意が必要なのは、本人と同居している親族が後見人となった場合。「親子なので少しのお金なら大丈夫」と思って自分のために使ってしまうと、業務上横領罪で刑事告訴され懲役刑となることもあります。

スーパーなどで後見人が必要なものと、本人(被後見人)が必要なものを一緒に買うときは、レシートを分けてもらうなど、細かな点まで注意を払わねばなりません。

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西川智子
専門家

西川智子(行政書士)

西川智子法務行政書士事務所

社会人として多くの経験を積み、年齢を重ねたからこそ理解できる相談があります。老いや高齢者の抱える問題に実感を持って取り組み、難解な法律の仕組みも分かりやすく丁寧にご説明します

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