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陸・海ともに働きやすい職場づくりを導き、事業の発展に貢献

労務相談の専門家

鈴木圭史

鈴木圭史(すずき・けいじ)さん
公正な立場で職場を守るのが社会保険労務士の仕事です

#chapter1

リスクを可視化し改善する労務監査で、企業の〝健康診断〟を

 長時間労働や残業代未払いなどの労務リスクは、多くの企業が抱える課題です。「労働基準監督署の定期監査で、法令違反があるとして監督指導を受ける事業者が毎年約6割との数値が出ることも珍しくありません」と話すのは、「ドラフト労務管理事務所」代表の鈴木圭史さん。社会保険労務士として、労働環境を調査する「労務監査」に力を入れています。

 会計監査と異なり労務監査は任意のため、実施していないという企業も少なくないでしょう。「企業の健康診断として定期的に行うことをおすすめします。リスクの把握は、行政機関の調査対応だけでなく、トラブルの予防にもなります」

 顧問契約のほか、内部監査の代行や、単発の「労務診断サービス」を展開。就業規則や帳簿が適切に管理されているかなど、社内に潜む不正を精査します。顧問先は、人材派遣や情報通信、海運など多岐にわたり規模もさまざま。「企業ごとに経営方針は異なり、問題があっても一度に改善するのは難しい場合もあります。できていないことを見える化し、今すぐ・半年後などやるべきことに優先順位をつけ、〝今よりも良い〟環境づくりを先導します」

 特に気を付けてほしいのが、有給休暇の未取得だとか。「『休暇は病気に備えて取っておく』と考える人はいまだに多く、企業側もやり過ごしてしまいがちですが、『義務化を知らなかった』では済まされません。従業員に直接有休消化を促すことが必要です」。細やかなサポートで社内に変化をもたらし、顧問先から「社員の在籍年数が長くなり、定着率が上がった」など成果を実感する声が届くそう。

#chapter2

労務コンプライアンス意識を高め、IPOやM&Aなど成長につなげる

 労務管理のあり方は、時代とともに変わりつつあります。「いわゆる〝ブラック企業〟は、離職率が高い傾向にあります。人の入れ替わりが激しいと、採用や教育コストがかさみ、経営を圧迫することも。〝何としてもやれ〟〝仕事は見て盗め〟といった根性論などが横行する組織は、労働人口が減少傾向にある今の社会には通用しません」と鈴木さん。

 「働きやすい職場づくり」は、法令順守だけでなく、経営戦略の視点からも重要度が高まっています。近年IPO(上場)やM&A(合併・買収)の審査においても、労務コンプライアンスは厳しくチェックされます。

 「財務と同等に労務を重視する経営者はまだ少数派ですが、売り上げを生むのはそこで働く人です。つまり収益とヒトの問題はつながっており、労務管理は、数字に表れているもの以上に企業価値を左右します」

 これまで数々のM&A支援を担当してきた鈴木さん。予測される大きなリスクを回避できたときに、手応えを感じるといいます。

 ある企業から買収候補先の労務分析を依頼されたときのこと。財務状態に問題はなく、買収額にも折り合いがつきそうという状況で、鈴木さんの調査により、社会保険の未加入や時間外労働などが判明しました。
 「万が一訴訟に至れば多額の費用がかかり、企業イメージも低下するなど、ダメージは計り知れません。リスクが顕在化したことにより、価格を抑える形で買収が成立。あわせて問題点の改善にも取り組み、企業利益に貢献できました」

会社の将来像を一緒に描きましょう

#chapter3

海事代理士業をスタートし、「船員の働き方改革」のサポートも

 社労士として20年以上の経験を誇る鈴木さん。始まりは、大学の講義で学んだ労働法を、働く人を守るルールとして身近に感じたことだったとか。興味は広がり続け、鈴木さんが新たに取り組むのは「船員の働き方改革」です。

 2022年4月に施行される船員の働き方改革を進める法改正を機に、海事代理士として事業をスタート。海運や遠洋漁業などの事業者に向け、申請書作成や行政手続きなどのサポートを行います。

 長期間港に戻らず、船内で業務に就く船員は、仕事と生活の線引きがあいまいなど特殊な職種です。そのため労働基準法は適用外で、船員法に基づき労働時間や休暇などが定められています。

 労働関係法の条文で「船員は除く」という文言を見るたび、現場の実情が気になり勉強したという鈴木さん。「海運業界は人手不足が深刻です。改正の柱の一つが、勤怠などを陸でも管理し、事業主の責任を明確化したこと。目的は陸上と同じ労働環境にすることなので、これまでの経験が生かせます」と意欲を見せます。また、得意分野である人材派遣業の知見をもとに、船員派遣事業の支援にも対応する予定です。

 「働きやすい環境とは、従業員ばかりに恩恵があるわけではありません。働く人と経営者、双方が納得できる職場づくりで、優秀な人材の定着を図り、企業の成長につなげます」。企業に即した、目指す姿の実現に向け〝ドラフト(設計図)〟を導きたい。事務所名には鈴木さんのそんな思いが込められています。

(取材年月:2022年2月)

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専門家プロフィール

鈴木圭史

労務相談の専門家

鈴木圭史プロ

特定社会保険労務士

ドラフト労務管理事務所

社労士として20年以上の経験を誇り、労務相談から発展した、労務リスクの回避につながる労務監査を推進。IPOやM&A支援でも実績があります。「船員の働き方改革」に対応する海事代理士業も。

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