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労働時間と割増賃金のお話(34)

竹下勇夫

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テーマ:労働時間と割増賃金のお話

 以上で労働時間と割増賃金のお話を終了させていただきます。

 なお、最近、午後9時から翌朝6時までの夜間勤務について、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価でき、労働からの解放が保障されているとはいえないとして、夜勤時間帯全体を労働時間に該当するとしたうえで、本件雇用契約では、基本給のほかに1日当たり6000円の「夜勤手当」が支給されており、夜勤時間帯については実労働が1時間以内であったときは夜勤手当以外の賃金を支給しないことが就業規則等で定められていたことから、このような場合における夜勤時間帯の割増賃金算定の基礎となる賃金単価は、夜勤時間帯における1時間の休憩時間を控除して、夜勤手当6000円÷8=750円であるとした裁判例があります。

 この裁判例では、最低賃金との関係について、最低賃金に係る法規制は全ての労働時間に対し時間当たりの最低賃金額以上の賃金を支払うことを義務付けるものではないから、泊まり勤務に係る単位時間当たりの賃金額が最低賃金を下回るとしても、直ちに泊まり勤務の賃金額に係る合意の効力が否定されるものではない、としています。

 この裁判例は、夜勤時間帯のように労働密度の薄い労働時間については、通常の労働と異なるとして、割増賃金の算定基礎を変動させることを認めたものといえます。

                                       -了-

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専門家

竹下勇夫(弁護士)

弁護士法人ACLOGOS

検察官として10年、弁護士として30年超のキャリアを有し、高い専門性が求められる企業法務を得意とする。沖縄弁護士会会長等の公職を歴任する傍ら、琉球大学大学院法務研究科(現在は学部)講師の顔を持つ。

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