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労働時間と割増賃金のお話(31)

竹下勇夫

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テーマ:労働時間と割増賃金のお話

~割増賃金(その10)~


 固定残業代を支払うことが労働契約の内容となっているとして、この労働契約の内容が有効であるためにはどのような要件が必要とされているのでしょうか。

 当然のことながら、労基法37条がある以上、割増賃金として支払われた金額が、通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として、同条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らない必要があります。そうであれば、その前提として、労働契約における賃金の定めについて、通常の労働時間の賃金に当たる部分と、同条等に定める割増賃金に当たる部分とを判別できることが必要となります。そうでなければ、同条等によって定められた割増賃金の額を下回っているのかどうか算定のしようがないからです。これを「判別要件」と呼んでいます。

 そして、判別できるというためには、それが時間外労働に対する対価として支払われていることが必要となります。時間外手当以外のものが混じり込んでいるとすれば、やはり計算の基礎が失われてしまうからです。これを「対価性要件」と呼んでいます。

 裁判例では、多くの場合、この判別要件、対価性要件が検討されることになります。

                                       -続-

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専門家

竹下勇夫(弁護士)

弁護士法人ACLOGOS

検察官として10年、弁護士として30年超のキャリアを有し、高い専門性が求められる企業法務を得意とする。沖縄弁護士会会長等の公職を歴任する傍ら、琉球大学大学院法務研究科(現在は学部)講師の顔を持つ。

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