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労働時間と割増賃金のお話(29)

竹下勇夫

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テーマ:労働時間と割増賃金のお話

~割増賃金(その8)~


 ところで、割増賃金として支払われた金額が、通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として、労基法37条等の関係規定に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らなければよいということの前提として、通常の労働時間の賃金に当たる部分と、同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別できることが必要とされています。
 そうでなければ、下回っているかどうかの検証のしようがないからです。これを「判別要件」と言っています。

 そして、判別するということができるというためには、その手当が時間外労働等に対する対価として支払われていることが必要とされています。これを「対価性要件」といいます。以後これらの要件を中心として固定残業代の支払いに関する問題点を見ていくことにします。

 ところで、割増賃金を固定残業代として支払うといっても、そのことが労働契約において明確になっていなければならないことは当然です。このことは、言い換えれば、使用者と労働者との間で割増賃金について固定残業代で支払うということの合意が必要であるということです。

 このような合意があるという場合、個々の労働者との個別の合意によることもありますが、一般的には就業規則や賃金規程において割増賃金を固定残業代として支払う旨を定めていることが多いでしょう。最初にこの場合の問題点から見ていくことにします。
                                       -続-

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専門家

竹下勇夫(弁護士)

弁護士法人ACLOGOS

検察官として10年、弁護士として30年超のキャリアを有し、高い専門性が求められる企業法務を得意とする。沖縄弁護士会会長等の公職を歴任する傍ら、琉球大学大学院法務研究科(現在は学部)講師の顔を持つ。

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