労働時間と割増賃金のお話(32)
~割増賃金(その4)~
割増賃金の計算の基礎は、「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額」とされています。具体的には、労働基準法施行規則19条1項が、
① 時間によって定められた賃金については、その金額
② 日によって定められた賃金については、その金額を1日の所定労働時間数(日によって所定労働時間数が異る場合には、1週間における1日平均所定労働時間数)で除した金額
③ 週によって定められた賃金については、その金額を週における所定労働時間数(週によって所定労働時間数が異る場合には、4週間における1週平均所定労働時間数)で除した金額
④ 月によって定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異る場合には、1年間における1月平均所定労働時間数)で除した金額
⑤ 月、週以外の一定の期間によって定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額
⑥ 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間、)において出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における、総労働時間数で除した金額
⑦労働者の受ける賃金が前各号の2以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によってそれぞれ算定した金額の合計額
と定めています。
また、割増賃金の計算の基礎となる賃金からは、「家族手当」、「通勤手当」(以上、労基法37条5項)、「別居手当」、「子女教育手当」、「住宅手当」、「臨時に支払われた賃金」、「1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」(以上、労基法施行規則21条)は除外されます。これらの除外賃金は制限的に列挙されているものですから、これらの手当に該当しない賃金は全て算入しなければならないというのが裁判例です。
さらに、「家族手当」は扶養家族数又はこれを基礎とする手当額を基準として算出する手当、「通勤手当」は労働者の通勤距離又は通勤に要する実際費用に応じて算定される手当と解され、これらの手当が除外賃金とされた趣旨は、労働と直接的な関係が薄い費目を基礎賃金から除外することにあると解されるから、除外賃金に該当するか否かは、名称に関わりなく実質的にこれを判断すべきであるとするのが行政解釈であり、裁判例です。
-続-