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労働時間と割増賃金のお話(12)

竹下勇夫

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テーマ:労働時間と割増賃金のお話

~適用除外(その2)~


 労働基準法の定める労働時間・休憩・休日の規定の適用を除外されているもののうち、最も問題となるのは「監督若しくは管理の地位にある者」すなわち管理監督者でしょう。

 以前、マクドナルドの店長が管理監督者に当たるかどうかで争われたことをご記憶している方もおいででしょう。管理監督者に該当すれば労働時間等の適用除外になりますが、それが裁判によって否定されたら時間外や休日労働につき賃金を支払わなくてはなりませんからことは重大です。

 行政解釈は管理監督者について、「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである。」としています。

 他方、裁判例においても先ほどのマクドナルドの店長の事案では、「管理監督者については、労働基準法の労働時間等に関する規定が適用されない」理由について、「管理監督者は、企業経営上の必要から、経営者との一体的な立場において、同法所定の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与され、また、賃金等の待遇やその勤務態様において、他の一般労働者に比べて優遇措置が取られているので、労働時間等に関する規定の適用を除外されても、上記の基本原則に反するような事態が避けられ、当該労働者の保護に欠けるところがないという趣旨によるものであると解される。したがって、原告が管理監督者に当たるといえるためには、店長の名称だけでなく、実質的に以上の法の趣旨を充足するような立場にあると認められるものでなければならず、具体的には、①職務内容、権限及び責任に照らし、労務管理を含め、企業全体の事業経営に関する重要事項にどのように関与しているか、②その勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないものであるか否か、③給与(基本給,役付手当等)及び一時金において、管理監督者にふさわしい待遇がされているか否かなどの諸点から判断すべきであるといえる。」という一般論を述べたうえで、

 ①店長の権限として、企業経営上の必要から、経営者との一体的な立場において、労働基準法の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与されているとは認められない、②店長の職責として、店舗の責任者として、店舗従業員の労務管理や店舗運営を行う立場であるにとどまるから、かかる立場にある店長が行う職務は、特段、労働基準法が規定する労働時間等の規制になじまないような内容、性質であるとはいえない、③店長に対する処遇につき、店長の賃金は、労働基準法の労働時間等の規定の適用を排除される管理監督者に対する待遇としては、十分であるといい難い、と述べて、店長は管理監督者に当たらないとし、店長に対する時間外労働や休日労働に対する割増賃金の支払いを認めています。
                                           —続—

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専門家

竹下勇夫(弁護士)

弁護士法人ACLOGOS

検察官として10年、弁護士として30年超のキャリアを有し、高い専門性が求められる企業法務を得意とする。沖縄弁護士会会長等の公職を歴任する傍ら、琉球大学大学院法務研究科(現在は学部)講師の顔を持つ。

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