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労働時間と割増賃金のお話(7)

竹下勇夫

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テーマ:労働時間と割増賃金のお話

~休憩時間(その3)~


 さらに、労働基準法34条3項は、「使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。」と規定しています。これを「休憩時間自由利用の原則」と呼んでいます。

 休憩時間ですから、その間どのようにそれを使うかは労働者の自由であることは当然のように思われますが、裁判例をみるといろいろな問題があるようです。

 第一に、自由に利用させなければならないのですから、休憩時間中に使用者の労務指揮のもとに身体・自由を半ば拘束された状態にあるようなものは、休憩時間としては不完全といえます。休憩時間中に電話番をさせるような場合がこれにあたります。

 第二に、休憩時間中の外出について所属長の許可を受けさせることについては、行政解釈は、「事業場内において自由に休憩し得る場合には、必ずしも違法にはならない。」としていますが、この解釈には異論もあり得るところです。

 第三に、休憩時間内における事業場でのビラ配布行為等は問題がないのでしょうか。行政解釈は、「休憩時間の利用について事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を害わない限り差し支えない。」としています。

 最高裁も、「一般私企業においては、元来、職場は業務遂行のための場であって政治活動その他従業員の私的活動のための場所ではないから、従業員は職場内において当然には政治活動をする権利を有するというわけのものでないばかりでなく、職場内における従業員の政治活動は、従業員相互間の政治的対立ないし抗争を生じさせるおそれがあり、また、それが使用者の管理する企業施設を利用して行われるものである以上その管理を妨げるおそれがあり、しかも、それを就業時間中に行う従業員がある場合にはその労務提供業務に違反するにとどまらず他の従業員の業務遂行をも妨げるおそれがあり、また、就業時間外であっても休憩時間中に行われる場合には他の従業員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後における作業能率を低下させるおそれのあることがあるなど、企業秩序の維持に支障をきたすおそれが強いものといわなければならない。したがって、一般私企業の使用者が、企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは、合理的な定めとして許されるべきである」としたうえで、ビラの配布行為が形式的に職場の規則に違反するようにみえる場合でも、ビラの配布が事業場内の秩序風紀を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは、右規定の違反になるとはいえないと解するとし、「本件ビラの配布は、休憩時間を利用し、大部分は休憩室、食堂で平穏裡に行われたもので、その配布の態様についてはとりたてて問題にする点はなかったとしても、上司の適法な命令に抗議する目的でされた行動であり、その内容においても、上司の適法な命令に抗議し、また、局所内の政治活動、プレートの着用等違法な行為をあおり、そそのかすことを含むものであつて、職場の規律に反し局所内の秩序を乱すおそれのあつたものであることは明らかである」として、懲戒事由に該当するとしています。

 もっとも、平穏にビラ配布が行われる場合、多くは最高裁の言う、ビラの配布が事業場内の秩序風紀を乱すおそれのない特別の事情が認められる場合に該当するのではないでしょうか。 —続—

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専門家

竹下勇夫(弁護士)

弁護士法人ACLOGOS

検察官として10年、弁護士として30年超のキャリアを有し、高い専門性が求められる企業法務を得意とする。沖縄弁護士会会長等の公職を歴任する傍ら、琉球大学大学院法務研究科(現在は学部)講師の顔を持つ。

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