労働時間と割増賃金のお話(13)
~労働時間の原則~
労働時間の原則については労働基準法32条に規定があります。皆さんご存じのとおり、使用者は、労働者に、1週間について40時間を超えて労働させてはいけませんし(週40時間制)、1週間の各日については1日について8時間を超えて労働させてはならない(1日8時間制)ことになっています。これを法定労働時間と呼んでいます。
もっともこれらの原則に対して、労基法40条は特例を定めていますが、この点については省略させていただきます。また、これらの法定労働時間を超えて労働させる場合について労基法36条が定めていますが、この点については後程説明させていただきます。
いずれにしても、使用者が労働者を法定労働時間を超えて労働させようとする場合には上記の時間外労働の要件を満たす必要がありますし、その場合においても使用者は労働者に対して労基法37条の定める割増賃金を支払う必要があります。また労基法は刑罰法規でもありますから、上記時間外労働の要件を満たさないで法定労働時間を超えて労働させた場合には、使用者には罰則の適用がありますし、当然のことながら割増賃金の支払義務も生じます。最近の労働基準監督署の運用を見ても、悪質な賃金不払い事案については厳格な取扱いをしているように見受けられますので、注意が必要です。
ちなみに労基法102条は、「労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う。」と規定していますから、労基法違反の犯罪に関しては労働基準監督官は警察官と同様の職務権限を有しており、自ら捜査を行い、事件を検察官に送致する権限を有しています。 —続—