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労働時間と割増賃金のお話(2)

竹下勇夫

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テーマ:労働時間と割増賃金のお話

~労働時間とは?~


 前回、労働時間には上限規制があるということをお話ししました。

 では、そもそも労働時間とは何なのでしょうか。普通に考えれば読んで字のごとく、実際に労働させる時間のことですよね。それで正しいと思うのですが、でも現実にどのような行為が労働時間に該当するのか、つまり賃金を請求することのできる行為なのか、という点になるとなかなか困難な問題が生じます。例えば、作業開始前にロッカールームで作業着に着替える時間は?、作業開始前のラジオ体操は?、等々いろいろな行為が労働時間になるのかどうかの問題が生じます。

 そんなに問題になるのであれば法律に労働時間の定義規定があるのではないですか。確かにそうですよね。労働基準法の32条以下に労働時間についての規定があります。でもこれらの規定は、労働時間がなんであるかを当然の前提として定められている条文であり、これらの労基法の規定から当然に労働時間がなんであるのかということが定まっているものではありません。

 そこで最高裁判所は、労働時間について、「労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう」としています(最判平成12.3.9三菱重工業長崎造船所事件)。この事件では、作業服・保護具などを着用して準備体操場に移動する時間等は労働時間とされましたが、事業所内に入って更衣所等まで移動鶴時間等は労働時間とされませんでした。

 行政解釈も、「『労働』とは、一般的に、労働者が使用者の指揮監督のもとにあることをいい、この使用者の指揮監督のもとにある時間のことを『労働時間』という」としています(厚生労働省労働基準局編令和3年版労働基準法上410頁)。
 そこで、これからは、労働時間のことを、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間である、ということを前提としてお話していきたいと思います。             —続—

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専門家

竹下勇夫(弁護士)

弁護士法人ACLOGOS

検察官として10年、弁護士として30年超のキャリアを有し、高い専門性が求められる企業法務を得意とする。沖縄弁護士会会長等の公職を歴任する傍ら、琉球大学大学院法務研究科(現在は学部)講師の顔を持つ。

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