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労働時間と割増賃金のお話(1)

竹下勇夫

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テーマ:労働時間と割増賃金のお話

~はじめに・2024年問題~


 最近、新聞報道等で建設業界やトラック業界の2024年問題がよく取り上げられています。例えば、大阪で開催予定の万国博覧会のパビリオンの建設が遅れていることに関して、建設業界の2024年問題を考えると来年は労働者が大幅に不足しパビリオンの建設が予定どおりに行われるのか、とか、トラック業界の2024年問題も考えるとトラック運転手が大幅に不足して今までどおりの配送能力を維持することができなくなるのではないか、そのため業界では今から梱包の容積を小さくして1回の配送能力を高めるように努力している等々。

 これはいったいどういうことなのでしょうか。

 使用者が労働者に対して1日、あるいは1週間に労働させる時間が労働基準法で定まっているということはご存じかと思います。そして、このような法定の労働時間を超えて労働させるためには、労働契約や就業規則にその旨の定めがあり、かつ、労基法36条の労使協定、いわゆる「36協定」を締結する必要があるということもご存じかと思います。

 しかしながら、このような労使協定を締結しても、時間外労働として労働させることの上限が定められており、その上限は原則として1年につき360時間とされています。もっとも例外として、36協定に「特別条項」の定めがある場合には1年につき720時間を上限とすることができます。詳細については、いずれ詳しくご説明します。

 ところで、上記の様な時間外労働の上限規制について、現在、その適用が猶予されている事業・業務があります。すなわち、工作物の建設等の事業、自動車の運転の業務、医事に従事する医師については2024年3月31日まで猶予されていて2024年4月1日から適用されます。もっとも、上記三業種については、その上限についてさらに個別の定めがあります。また、鹿児島県と沖縄県における砂糖を製造する事業については、2024年3月31日までその適用が猶予されています。

 以上のことからお分かりのように、それまで上限規制の適用が猶予されていた事業につき、2024年4月1日から時間外労働の上限規制の適用を受けることになります。その結果、何の対策も取らないままこの上限規制を守ろうとすれば、当然のことながら労働者の数を増加させなければならないという結果になります。

 これが建設業界やトラック業界の2024年問題と言われているものです。       —続—

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専門家

竹下勇夫(弁護士)

弁護士法人ACLOGOS

検察官として10年、弁護士として30年超のキャリアを有し、高い専門性が求められる企業法務を得意とする。沖縄弁護士会会長等の公職を歴任する傍ら、琉球大学大学院法務研究科(現在は学部)講師の顔を持つ。

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