忘れ去られた地震対策(4)
現代の教育環境において、小学校低学年ほど忘れ去られた存在はありません。
例えば、算数の主な内容。小学1年生では、2桁までの数、たし算、ひき算、など。小学2年生では、それが3けた、4けたにまで増えています。そしてかけ算九九の暗記と続きます。
この内容を教えていて感じるのは、昔と何も変わっていないということ。恐らく太平洋戦争後の教育が始まって以来進化していません。内容があまりに基礎的すぎて簡単なため、これ以上進化のしようがないと大人は考えてしまいます。(現在ではAIの利用などが注目されてそれ以前の基礎的なことが忘れ去られています。)だからこれらの基礎を済ました後、本格的な学習は高学年以上でするという考えです。でも、低学年で意味のある学習をすれば、高学年の学習が格段に楽になります。(分かりやすいのが、九九を習得していない大学生の存在です。)それどころか、低学年の算数で挫折してしまい中高学年から落ちこぼれてしまう子供を減らすことができます。
50年前頃少し進化しました。「水道方式」と呼ばれる学習方法が現れたのです。「水道方式」というのは故 遠山啓(とおやま ひらく)東京工業大学名誉教授が考案した学習方法です。遠山啓氏は「数学教育協議会」を結成し活動されたようです。ただし数学教育協議会は文部省(現文部科学省)と対立したようで(詳しくは知りませんが、数学教育協議会が日本教職員組合とつながりが深いのが原因だと私は推測しています。学校教師になったことはありませんので、私にとってはどうでもいいことですが。)この方法は教科書には採用されていません。(奈良市教科書センターに保存されていた教科書を調べてみると、大阪書籍の教科書は水道方式を採用していましたが、この会社は倒産しました。日本文教出版がこの教科書を引き継いだのですが、水道方式は引き継がれていません。恐らく文部省の圧力があったのだと思います。)従って教科書の算数はさらに古い内容だということになります。そのため現場の教師が教科書を使わず、この方法を学校内に広めていきます。私の子供も学校で水道方式の授業を受けていました。(学校のことなので詳しいことは知りませんが、保守的な勢力が強いところでは水道方式を採用していない可能性があります。)
私は大学で教育課程を履修し教育実習も熱心にしました。しかしどうしても学校教師になる気がしなくて、小さな私塾を開きました。(親をはじめ一族が学校教師だらけで、その実態を知りすぎていたために、嫌気がさしたのです。一族の学校教師たちが絶滅したのでこんなことが書けるようになりました。)その頃(1980年代)書店には水道方式の参考書、問題集や指導書が数多く並んでいました。それを見て水道方式の質の高さを感じ取り、関係書籍を読みあさりました。当時は京都に住んでいましたので、京都の数学教育協議会を主宰しておられた洛北高校の上垣渉先生(現三重大学名誉教授)の快諾もいただいて研究会にも何度か参加させていただきました。ただ基本的に学校教師の団体ですので居心地が悪くなってしまい、続きませんでしたが。
京都の数学教育協議会でも討論されるのはもっと上の学年です。はっきり覚えていませんが、中学以上だったと思います。小学校低学年など話題にも上りませんでした。遠山啓氏が提唱した考えをそのまま受け継いで何の疑問も持たなかったのでしょう。あるいは内容が簡単すぎて、課題があるとは思わなかったのだと思います。
時代の最先端を意識するばかりで、気にもされない基礎的なことが忘れ去られています。そのために取り残された子供たちがいます。
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