日銀の金融政策、YCCの柔軟化とは?長期金利、短期金利は今後どうなるのか
デフレ脱却、政府が重視する4指標とは
- 消費者物価指数(CPI):安定的2%超え
- 国内総生産(GDP)デフレーター:物価の変動を表す物価指数、名目GDPを実質GDPで割ったもの
- 単位労働コスト(ULC):名目雇用者報酬を実質国内総生産(GDP)で割って算出したもの
- 需給ギャップ:労働や設備などの経済の潜在的な供給力と、個人消費や設備投資などの支出を積み上げた総需要との差
6月の生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)は前年同月比+3.3%、今後は低下していくとみる予想が多いものの、2023年末までは2%台で推移するとみられています。
また、2023年1-3月期のGDPデフレーターは前年比+2%、4-6月期は同+4%程度まで上昇する予測も。
6月の現金給与総額は、前年同月比2.3%増と、5月の同2.9%増に続き高い伸び率に。上昇率が2か月連続で2%以上になったのは1995年以来のことだそう。
人手不足を背景に、非正規雇用の時給も上昇が続いています。
受給ギャップのマイナス(需要が足りず供給を下回って物価が下がりやすい状態)は14四半期連続となってはいるものの、6月に公表された1-3月期はマイナス0.7%(金額換算で年4兆円程度)と、マイナス幅は縮小してきています。
これらの指標の推移から、日本が長く苦しんできたデフレからの本格的脱却が見えてきそうです。
デフレ脱却で私たちはどんなメリットを受けられるのか
適度なインフレが進み、デフレからの脱却が本格的となると、物の価値がお金の価値よりも低い状態から脱して、貯蓄するよりも消費する方が得という状態になります。このため、消費を先送りするのではなく「来年はもっと物価が上がるから”今”買おう」という心理状態になり、経済活動が活発化、経済が成長します。同時に企業も内部留保よりも設備投資を積極的に行うようになり、こうして民間が活性化することで政府も税収増が見込まれ、適切な公共サービスの提供ができるようになります。
ただ、実質賃金の指数は1.6%減と、15か月連続の減少となり、賃上げがインフレ率に追い付いていない現状もありますが、現在の賃金上昇が続けば2024年以降にはプラスに転じるとの予測もあり、期待していきたいところです。
さらに、適度なインフレ状態においては、企業の資金調達に相応のコスト(金利)がかかり、設備や物の価格は年々上昇していくため、効果的な投資を行うことで競争力が高まります。企業は稼いだ利益を収益性の高い自社ビジネスに再投資することで、日本の企業も高度化、高収益化が期待できるようになります。
今まで、アメリカを主とするインフレ経済では、大型ハイテク株など一部の勝ち組成長企業の株式が買われ、さらに株価が大きく上昇する=株式市場全体の上昇をけん引してきました。1989年末につけた日経平均株価最高値を更新できずにきた日本株も、こうしたデフレ脱却後は勝ち組企業の持続的な成長が期待でき、長期的な日本株の上昇トレンドにもつながっていくかもしれません。