日本口腔インプラント学会市民公開講座のお知らせ
歯周病は以前から糖尿病の合併症の一つと言われてきました。
実際、糖尿病の人はそうでない人と比較して歯周病に罹っている人が多いという疫学調査の報告が複数あります。
例えば、アメリカアリゾナ州に住むピマインディアン(40歳以上の3人に2人は2型糖尿病)を対象とした調査では、糖尿病患者の歯周病発症率は2.6倍と報告されています。
さらに最近では、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという逆の関係が明らかになりました。
つまり、歯周病と糖尿病は相互に悪影響を及ぼしあっているのです。
歯周病の治療をすると糖尿病の症状も改善することも分かってきました。
では、どうして糖尿病になると歯周病になりやすいのでしょうか。
そのためにはまず、糖尿病とは何か知る必要があります。
日本の糖尿病患者の90~95%はⅡ型糖尿病で、Ⅱ型糖尿病は膵臓からのインスリン分泌不全とインスリン感受性臓器でのインスリン抵抗性(インスリンの作用が効かない)の両者が関与して高血糖状態になる病気で、高血糖状態が続くと血管の内皮細胞に機能障害が起こり、動脈硬化が進行しますし、白血球中の好中球の機能低下などにより感染し易くなります。また、高血糖自体がインスリンの分泌低下やインスリン抵抗性を悪化させていきます(糖毒性)。さらに身体に感染が起こると血糖コントロールを悪くするという悪循環に陥ります。
ですから、糖尿病の合併症は、末梢血管の場所「目(網膜)、腎臓、心臓、脳血管、神経、口腔(歯ぐき)など」に起こります。
糖尿病が歯周病に影響を与えるメカニズムとしては、
①感染し易いため、歯周病菌の感染に対して細菌を食べる好球中の機能が低下することにより歯周病が悪化する。
②末梢血管障害により組織が低酸素状態になり治癒反応を低下させる。
③高血糖による口渇のため、唾液の量が減り、口腔内の自浄作用が障害され、歯周病菌が繁殖しやすくなる。
が挙げられます。
また逆に、歯周病が糖尿病に与えるメカニズムとしては、
①歯ぐきの炎症細胞(腫れ)から炎症性物質(TNF-αなど)がインスリン活性を低下させる。
②歯周病菌が腫れた歯肉から体内に侵入し、細菌の持つ内毒素が放出され、脂肪細胞や肝臓からのTNF-α産生が促進される。
が挙げられます。
歯周病治療を行うと、血糖値のコントロールが改善(HbA1cが平均0.66低下)されます。
歯周病治療は糖尿病治療にもなるのです。